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不思議な雨で入れ替わり!?

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不思議な雨で入れ替わり!?

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 友達同士で佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)の家で食事会をすることになっていた。予報では快晴のはずが、突然雨に降られてしまった。
 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は近くまで来てるからまだいいものの、二人ともびしょ濡れだ。

「いらっしゃい、二人ともやっぱり降られちゃったんですねぇ」
 ルーシェリアはにこっとリアトリスとレティシアに笑いかけ、すぐにタオルを持ってきてくれた。
「ありがとう。ごめんね、みっともない格好で来ちゃって」
 リアトリスは雨で崩れた髪型を気にして自分の髪を弄っている。
「旦那様は水も滴るいい男なんだから、あちきはそれも良いって言ってるんですけどねぇ」
 レティシアは濡れている気持ち悪さも気にせずにリアトリスの腕に手を絡ませる。
「そうですよぉ。いいのいいの、せっかくのお食事パーティなんだから、温かいもの作りましょうね。あ、そういえばアルトリアちゃん見なかった?」
 ちょっと前に出て行ってしまい、傘も持っていなかった友達を心配しているようだ。皆が来る頃には戻るとは言っていたけれど、大丈夫だろうか、と。
「そういえば、見なかったと思う。雨から逃げて来て周り見てなかったせいもあるけどね」
「お腹減ったら帰って来ますよぉー。さてお食事会の準備!」

「ネーおねえちゃんがこれを託してくれたのです! カレー作っちゃいますですよ!」
 キッチンで舞衣奈・アリステル(まいな・ありすてる)は固形のカレールーを掲げていた。姉はあとから来るため、立派な料理を作ってあげるんだから、と張り切っている。
「それだけじゃカレーとは言えないぞ。野菜と肉だ」
スプリングロンド・ヨシュア(すぷりんぐろんど・よしゅあ)がどさっと新鮮な玉ねぎ、人参、じゃがいも、肉を舞衣奈の隣りに置いた。
「わわっ、こんなにたくさん材料があるですか?」
「ああ、何人分もあるんだ。手伝ってやるからな」

 別室で着替え、エプロンを付けている最中、リアトリスたちに異変が起こった。
「あちきはエプロン装着完了! あれ、これ旦那様のエプロンじゃないですか」
 リアトリス(レティシア)はエプロンを付け間違えたと思い外そうとする。その手をレティシア(リアトリス)が止めた。
「レティ、あの噂本当だったみたい。ボクはレティの姿でエプロンは似合ってるってことも本当」
「入れ替わっちゃうっていうあれ……? あ、あちきが旦那様の姿にっ?」
 どうしよう、とリアトリス(レティシア)はかぁっと顔を赤らめる。
「薬も術も無いから、仕方ない。やり過ごすしかないかもねぇ」
「そ、そうですよねぇっ。早くキッチンに行きましょう」
 お互いのふりをしよう、と決めた二人はぎゅっと手を握った。

「あら? ローザマリアさんがいないわね?」
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)の体で、エミィーリア・シュトラウス(えみぃーりあ・しゅとらうす)はにこにこと笑いながら、ローザマリアを探す。けれど目の前に自分の姿が……? どうしたのかしらと首をかしげる。
「ローザマリアはあんたよ! イケてるババアになっちゃったみたいね!」
 探している相手は、自分と同じ姿だ。手鏡を差し出され、ローザマリア(エミィーリア)は飛び上がった。
「私、ローザマリアさんになってる!!ふふっ これならどこにいっても疲れないわね」
「エミィーリアさんじゅっさい! 可愛いわー、まだイケるわぁー」
 入れ替わってパニックや気不味いものとは無縁のようだった。

「ユウキちゃん背高―い! この姿でパーティ行くのも新鮮だよね!」
 ユウキ・ブルーウォーター(ゆうき・ぶるーうぉーたー)ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう))はルーシェリアのパーティに到着した。
 お互い入れ替わってしまい、なんとか落ち着いてからルーシェリアの家に来たのだが、体が違いすぎてなんだか落ち着かない。明るい振る舞いをしてなんとかパニックにならないよう保っている。
「自分のことユウキちゃんなんて言っちゃボクじゃないってばれちゃうって」
 心配するネージュ(ユウキ)に、ユウキ(ネージュ)はぐっと親指を立てた。
「なんとかなるって! 一時的? なものなんでしょ?」
 いらっしゃい、とルーシェリアが二人を出迎える。
「ほんと、雨は一時的だから困っちゃいますよねぇ。エミィーリアさんとローザマリアさんがお風呂を使っているので、そのあとにどうぞ」

「な、なんだこの状況……っ」
 スプリングロンドは、耳に入ってくる情報を、頭の中を整理するだけで大変だった。一言で表すなら、カオス。一緒に食事の準備をしているルーシェリアに確認を取る。
 今回のホストがこの事態に気づいていないようなのは問題じゃないか、とスプリングロンドは思うのだが、どう伝えればいいものか。
「ルーシェリアは……、ルーシェリアだよな?」
「そうですよー? 何へんなこと言ってるんですかもう」

 招待客も集まった。
カレーの煮込みができあがると、良いターメリックの匂いが部屋中漂う。
 きっと突然降る雨のせいで濡れ、冷えた人たちがこの家を通りかかったら、さぞ温かいカレーを恋しがるだろう。

「みなさん、たくさん食べてくださいね!」
 ルーシェリアは鍋からとろりとしたカレーをよそいながら、みんなに配っていく。

「……、か、からーーーっ!!」
 ネージュ(ユウキ)は口から火を吐くようにぱくぱくさせると、ごくごくとすぐ傍にあった水を一気飲みする。苦手な辛いものを口にしてしまったのだ。
 入れ替わったネージュとユウキで味の趣向が正反対で、ルーシェリアはそれぞれ好みの味を把握しているのに、それが仇となってしまった。
「ネージュ大丈夫? ほら、牛乳を飲んだほうが緩和される……です」
 レティシア(リアトリス)はネージュ(ユウキ)のコップに牛乳を注いであげた。
 相手の喋り方を真似しようと、リアトリスは舞衣奈のような喋り方になってしまった。
「だ、大丈夫! 平気、うん」
 何かレティシアたちの様子も変だ、とネージュ(ユウキ)は気付く。みんな雨の中来ているし、何組、いや全員入れ替わって誰が誰になっているか、わかりづらい。
 せっかく作ってくれたカレーを残すわけにも、今この状況を切り抜けるしかない。
「あのね、カレー美味しすぎて飲み物も進んじゃうね! ちょっとお手洗い借りますよっと!」
 テンションもおかしくなっている。他のみんなは、ネージュ(ユウキ)が雨で冷えたせいか、牛乳を飲みすぎてお腹でも壊したんじゃないか、と心配した。
「な、なんとかなる……わけなかったね、ごめんユウキちゃん」
 ユウキ(ネージュ)は用意するルーはカレーじゃなくてビーフシチューとかにすればよかったかもしれない、と小声でユウキに詫びた。
「ネーおねえちゃんどうしたですかー?」
「お薬を用意しておきましょうか……?」
ルーシェリア同様、舞衣奈も状況が飲み込めていないようだった。

 夕方まで雨は落ち着かないかもしれないし、しばらく居てくださいねとルーシェリアは皆に紅茶を出す。
 一方、ローザマリアたちが洗い物を片付けていた。
「あ、助かります! 後片付け手伝ってくれて」
「うふふ、楽しませてもらったものね」とローザマリア(エミィーリア)は洗った皿を拭き、
「そうそうピチピチババアは満足したし」と、エミィーリア(ローザマリア)はそれ受け取って重ねる。

「今日はみんな変わってて面白かったですよねぇ。ネージュさんは体長平気ですか?」
「うん、紅茶が美味しいよ!」
 ネージュ(ユウキ)はルーシェリアに笑ってみせる。紅茶は本当に美味しかった。

「また機会があったら、集まりましょうね!」
 本当に、是非みんなの中身がそのままの時に集まりたいねと思ったのは一人だけではなさそうだ。

《仲が悪くなれば面白かったものの……くっ、なんなんだ》
 青い光は舌打ちしてルーシェリアの家の窓にカンっと音を立ててぶつかった。八つ当たりのようだ。

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