天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

不思議な雨で入れ替わり!?

リアクション公開中!

不思議な雨で入れ替わり!?

リアクション

「捕獲完了!!」

《何をする!!?》

「「えっ」」
 何事だとルカルカとダリルは下方から聞こえる声に耳を傾ける。
 下から草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)がドッペルゴーストを使って地祇の動きを封じていた。
「ふふふふ、かかったな……」
「いいぞ、おぬしやりおるわ!」
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)はぐっと拳を握りしめる。

「羽純ちゃん、ギブギブ! それくらいにしてあげてくださいね」
 ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)が両手をふって解放してあげるように言った。
 土地神とか霊的なものならドッペルゴーストも効くかもしれない、と提案したのはホリイだが、少々いきなりすぎたようだ。
「抵抗しないようなら、いいのですが……。大丈夫でしょうか?」
 ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)はサイドワインダーを放てるように待機している。地祇が急に暴れだしたら、羽純のドッペルゴーストと、サイドワインダーで止める予定だ。

 これだけ囲まれては大の地祇も抵抗できない。何より、先ほど懸命に話しかけていたルカルカとダリルが地上に降りて武装解除していたことが、地祇を感心させた。

「悪い、遅れたか? おー、本当にカミサマだ。浮いてる」
 調査員には、地祇が姿を現したら連絡を伝えるようになっている。
 現場にいた甚五郎の連絡に、朝霧 垂(あさぎり・しづり)が酒瓶を持って駆けつけた。相手は土地神なのだから、盡をかわせばわかってくれるだろう、と思って用意していた。
「いや、ちょうどいい! 無礼をしたな、ちょっと降りてきてくれんか」
 甚五郎はさっきと違う態度で地祇に話しかける。
「一応お供えものってことになるのか? まぁいい、飲め!」
「垂さん、走るのはやすぎですよぉー」
一雫 悲哀(ひとしずく・ひあい)が垂のあとを追って来た。こちらも手には追加の酒瓶を抱えている。
「ほらっ、酒はいっぱいあるぜ。付き合ってくれるならまだまだ持ってくるし」
 種族だなんだと壁があっても、酒さえ交わせば仲良くなれるもんだろ? と垂はニッと笑った。

《ふん……、命令される筋合いなど》
 などと突っぱねてはいたが、
「あのう……。土地神さんとお酒を飲める機会とかないと思うんです。お願いしますっ」
 悲哀がうるっとした瞳を浮かべ、上目遣いでお願いすると、地祇はすーっと目線の高さまで地祇が降りてきた。
真面目に話してくれる気になったようだ。

「あら、ミルキーウェイリボン……の出番がなさそうですね」
 小さい声で垂に言う。捕まらなかったら、悲哀がリボンで捕獲するつもりだったらしい。こそっと垂は返事を返す。
「あー、一応構えるだけ構えててくれるか?」

《お前たちは……ちゃんと聞く耳があるんだな?》
 こくこく、と皆地祇に向かって首を縦に振った。

 甚五郎や垂が盃に酒を注ごうとするが、瓶ごとでいいと言ってきた。
「す、吸い取ってる!? 地祇さん凄いですね……」
瓶の中身はどこへ行ったのか……。地祇が近づくと吸い取るように酒は無くなっていった。
《不味くは……ないな》

 地祇は、自分が身勝手な行動を取ってしまった、とぽつりと吐き出した。
肉親を亡くしてから、心ここにあらずの状態が続き、正直どうしていいかわからなかったと漏らす。
土地神もやっぱり酒には弱いのか! とみなが思った。

《父君が亡くなったのは、つい最近だ。力を使いきってしまった末路だった》
 当分、あと何百年かは父神がツァンダにある祠の一帯近くを守るはずだったけれど、
 力を使いすぎて弱ってしまい、死に別れに、
 『これでお前もツァンダのこの地方を守る地祇の一人だ、任せたぞ。お前なら、近隣の土地神とも上手くやれるよな』と頼まれてしまった。
 いきなり自分の代になり、この地を守る一員になるなどと、荷が重いと感じてしまった。
 そのためか戸惑いと反発ものしかかり、自らを落ち着かせようと慎重になっていたときだった。
ただでさえ不安定な心境なのに、誰かに祠を壊されてしまった。

《お前たちに関係した奴らかどうか知らないけれど、似たようなやつだろう……。守ってやる義理も無いと思った》
 パラミタや地球人でも、よくある話だ。
 わざわざ精神を入れ替わらせるようにしたのは、
困らせてやるには、他人と心と体のバランスが上手くいかなくなればいいという思いつきだった。

「私たちだって、そんな自暴自棄になるときあるよね」
「あんまり変わらないってことだよな」
「きちんと心がある地祇なら、守備お願いしたいですね」
 表情が見えないことが幸いしたのか、地祇は黙りこくった。共感されたことに、少なからず衝撃を受けたらしい。
壊された祠は無事なのかと問われると、小さく《まだだ……》と呟く。

 祠はまだ壊されたままで、地祇の手ではまだ難しいようだ。
こうなれば、祠をきちんと直してあげないと締まりが悪い! と地祇の祠へ向かうことにする。
 重い石がいくつも崩されているため、みんなで力のありそうな人を応援に呼ぶ。

 地祇は今度は恵の雨を降らすと約束してくれた。
 悪天候にしてしまった分だ、と陽が落ちる頃までうっすらと空に虹がかかっていた。

担当マスターより

▼担当マスター

かむろ 焔

▼マスターコメント

マスターを務めさせて頂きました、かむろ焔です。
皆様シナリオに参加くださりありがとうございます!
当シナリオを楽しんで頂けたら幸いです。

地祇は、中高生ぐらいで反抗期をこじらせて
巻き込んでしまった若い土地神という設定です。