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対決、狂気かるた!

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対決、狂気かるた!

リアクション


霧は濃くなる

 第二試合も終わり、第三試合へ突入する。
 初戦はシャノン対北都。

「フライングハンバーガーモンスターのサインの為にも負けれないのよ!」

 狂喜狂乱な本大会では質素で地味な戦いが続く。
 それが正しい普通のかるたであるのだが、あちこちで発狂したりスキル駆使の戦いが多い為、地味に感じてしまう。
 そんな空間でシャノンが発した『フライングハンバーガーモンスター』なるモノ。

「フライングハンバーガーモンスター? スパゲティならあるけどぉ、そんな神、聞いたこともないなぁ」
「えぇ!? フ、フライングハンバーガーモンスターっていないの!?」

 北都にそう言われ、なぜか発狂してしまうシャノン。
 かるた取りを放り投げて、突如ハンバーガーを作りだす。

「ハンバーガーが一個……ハンバーガーが二個……ハンバーガーが……フフフ」

 救護班に運ばれるまで、永遠とハンバーガーを作り続けていた。

「2回戦、海京かるた会 クマラさん対イルミンスールかるた会 カレンさん。前に出て下さい」

 気合を入れるクマラと、名乗りを上げて鼓舞をするカレン。
 小回りのきくクマラが、カレンの手をかいくぐるようにして、札を取っていく。

「オイラを止める事はできないのですっ」

 勢いよく札を集めていくクマラだが、行動予測でクマラよりも半歩早く札を奪っていくカレン。
 徐々に巻き返していく。

「外なる神よ。このボクを守りたまえ!」

 勢いよくサイコロを振る勝者のカレン。
 しかし、外なる神々の姿をエリザベートの中に見出してしまった。

「ついに大いなる神が降臨された! いあ、いあ、えりざべーと!」

 そのままエリザベートに抱きついて頬ずりするカレン。
 カルキノスに眠らされるまでの間に、クマラは第四試合出場が決まった。

 カルキノスによってカレンから解放されたエリザベートが、セシリアと戦うために会場入りをする。
 それと同時期に、美羽によって落とされた良雄が戻って来た。

「えらい目にあったぜ……」
「戻って来たのなら、わたくしの役目はこれで」
「あぁサンキュな」

 ナコトは良雄に詠み札を手渡し、会場からいなくなる。
 良雄の詠み手でセシリアとエリザベートの試合は始まる。

「あまのはら ふらいんぐぽりぷ」

―――シュパーン!

 武術に瘴気操作技術を加えた、瘴気で相手を弱体化させる積尸気幻葬で札を取るセシリア。
 なぜか手にした札を愛おしげに手にする。

「みつけましたわ……典儀の札」

 その後もいくつかの札を取るごとに札を撫でるシーンが度々起こる。

「典儀の札? あなた、もしかして……」
「ふフ……フフフフフ。アハハハハハ!!」

 エリザベートがなにかに気付く。
 いきなり顔を上げて笑いだすセシリア。
 帽子に隠れて上半分の顔は見えない。
 腕を振り上げる彼女の手にはナニかが握り締められている。

 振り下ろされる手。

「待つのじゃ!」

 どこからか衛の声が聴こえてくるが、降ろされる手は制止されず足元に投げつけられた。


ドガーン!!


 床に当たった衝撃で爆破するそれ―自爆弾―。

「遅かったか……」

 会場に入って来る衛。

「なに会場に入ってるのですぅ? あなたはすでに辞退した身じゃないですかぁ」
「妖蛆に狂気を回避してもらった時に見えたのじゃ。おぬしがあの伊吹 藤乃、だと言う事を」

 自爆したセシリア。もとい伊吹 藤乃(いぶき・ふじの)
 衛は敗者復活を辞退した後、趣味のタロットで藤乃のことを示されたことを話す。

 瀕死の藤乃は一般の救護室とは別の場所で治療されることになった。

「やっぱりそうでしたかぁ。この場合、発狂ではないですから私の勝ちですぅ」

 思いかけない乱入もあったが、4回戦のヤジロ対詩穂の試合が始まる。

「めっけ!」

 野生の勘で詠まれるであろう場所付近を見ていたヤジロは札に手を伸ばす。

「あら、風が?」

 詩穂がそう言うとどこからか風が吹いて札を飛ばしてしまう。
 空をかくヤジロの手。

「ふふ。とつぜん風が吹くなんて運も詩穂に向いてるのかな?」

 風術で手元に呼んだにも関わらず、詩穂はそう嘯く。
 その後も何度か風術でヤジロの陣から札をこちら側に持ってこさせる。

「ふふ、また風が」
「そうなんども風が吹くかよっ」

 飛んでいく札をまるで狩るようにして手にするヤジロ。
 詩穂の『あら、風が』戦法は破られ、ヤジロがこの試合を手にするも邪神の幻覚を見てしまう。
 突如宇宙的かつ冒涜的な寒気に襲われ恐怖のあまりに震え出したヤジロ。

「さ……寒い……ん、あああそこにいるのはセス!!」

 幻覚で視界の隅に見え、縋りつこうと走り寄る……が、足場はそこにはなかった。
 飛び降りる形で世界樹から落下するヤジロ。
 詩穂はルルイエテキストで狂気を回避。第四試合へ進出した。

「5回戦、海京かるた会 フランチェスカさん対イルミンスールかるた会 カレンさん。前に出て下さい」

 マインドシールドと僥倖のフラワシのお陰で発狂なんてしないと自信を持っているフランチェスカ。
 アル・アジフのアボミネーションも、神の気配が……としか思っていない。

「ボクこそー! さいっきょう!」

 パワードアーム改で札を奪いに来るアル・アジフを、行動予測と先制攻撃で避けつつ札を手に入れていくフランチェスカ。
 成功率は五分五分。その為。試合は均衡を保っている。

「こんなおもちゃ持ってても無意味じゃん! さっさと発狂しちゃえよっ」
「聖職者たる私が狂気に陥るなんてありえませんわ」
「(ついに口に出してしまいましたか……フラグを)」

 後ろに控えていたカタリナがいそいそと何やら準備をしだす。

「く、認めない、認めませんわ」

 勝負に負け、さらにサイコロの神にも見放されたフランチェスカが発狂の兆しが現れる。
 ヤバいと思ったカタリアは用意していたモノ―酒とおつまみの鉄火巻き―をフランチェスカに手渡す。

「発狂する前に、お酒で狂ってしまえばいいのです」

 海京名物の酒を飲みつつ、鉄火巻きを食すフランチェスカ。

「ふみゅー……しょう! こりぇは異教の神々。私の神を冒涜しゅる存在、異教、異端、異端審問……」

 狂気が織り交ざった酒乱と化したフランチェスカは、突然異端審問を始めようとする。

「邪悪な悪神を崇めているのはあにゃた方でしゅわね。全員有罪! こりぇより我が神に逆らう異端者たちを断罪致しましゅわ!」

 異端審問を始めたフランチェスカの傍では、アル・アジフがペトリファイを無作為に乱発しだしていた。

「あはは! みんなみーんなボクのコレクションにしてあげる!」

 あちこちが石化していく。
 観客がペトリファイを避けるために、椅子の下に隠れる。

 しばらくして、静かになった頃。
 観客の一人がそっと会場を見ると、今度は天のいかづちの乱発が飛んで来る。

「コナゴナコナゴナ! 砕けろ砕けろ!! ボクが最強なんだよー!!!」