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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

リアクション

 襲撃を受けつつも、メンバーの尽力により被害を最小限に抑えたトーナメント。夕方、せつな達は『西枝レイがいないため閉会式が進められない』という教師の話と、レイが『C』の能力を使ったのを見たというナナシの話を受け、レイの行方を捜していた。
「本当にレイがその『C』の持つ力を使ったの?」
「あぁ、間違いない……」
 そのせつな達に同行しているのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)日向 茜(ひなた・あかね)の三人。
「後は見つかれば良いけれどね……」
「そうだな」
「あ、そうだ。ねぇナナシ」
 ルカルカが前を歩くナナシに声をかける。
「なんだ?」
「今度時間が出来たらさ、空京やヒラニプラを案内したいなって思うんだけど、どうかな?」
「ルカ……、お前はまた……」
「別にいいでしょ? せっかくだもん、仲良くなりたいし。美味しい料理の店に行ったり、綺麗な景色を見たりして、夜は温泉でお泊り! どうかな?」
「……俺が居ても楽しいことなどないぞ?」
「良いの♪ 友達と一緒に行くってことに意味があるんだから」
「……考えておく。少なくとも使命を終えるまでは行く気はない」
「うん♪ なら、サクッと終わらせちゃおうか♪」
「だが、何処に出現するかも分からない相手を探せると思うか?」
「『C』はせつな達を狙っている。せつな達が居ればきっと出てくると思うよ」
「茜の言うとおりだ。あいつは俺達を狙ってきている。それも人気のない場所でな」
「なら、こうして巡回していれば……?」
「あぁ、出てくるはずだ……必ず」
 ナナシが言うや否やせつな達の前に、一人の生徒が立ちはだかる。
「レイが俺の追っていた『C』という事は、もう一人の『C』……生徒にまぎれて参加し、姿を変えながら襲撃してきたのはお前だな……ケビン・サザーランド」
「あはは、ついにばれちゃったか」
 ゆっくりと歩み寄ってくる生徒はケビン・サザーランド――コード:S^2と名乗る少年だった。
「あなたがコード:S^2?」
「うん、そうだよ。まぁ、今はケビン・サザーランドっていう人物だけどね」
「じゃあ、本物のケビンは?」
「さて、どうなっただろうね」
 嫌な笑みを浮かべるケビン。
「僕――コード:S^2は全身を自在に変化させる事が出来る。もちろん、このように人間になる事もね。でも、人間になる場合は一度、その相手に触れなければなる事は出来ないんだよ。遺伝子情報や記憶を読み取らなければいけないから」
「……つまり殺したんだな?」
 ダリルが睨む。
「そんな睨まないでほしいね」
「じゃあ、他の人に変われたということは……」
「その辺りはご想像にお任せするよ。まぁ、みんなが思っている通りだろうけどね」
「許せない……!」
「必要な犠牲。仕方ないことさ。そこにいるナナシだってやろうとしている事は僕と大して変わりないだろう? 自分達のために必要な者を始末する。そのための手段なら問わず、未来からやってきて起こる前に始末する。だから僕も手段は選ばない」
「詭弁ね……。なら、誰彼構わず殺すと、あなたはそういうわけ?」
「あぁ、目的が達成されるならね。誰が死のうと関係ない」
「……これ以上話をするのは無駄ね」
「そうだね。僕もそう思うよ」
 全員が武器を構える。そこに高速で飛来する物体が現れ、ケビンの後ろに落下する。
「……っ! なんだ?」
 飛来してきたのはエッツェル。それを見てケビンが舌打ちする。
「チッ……毎度毎度、邪魔をしてくれる奴か……。良いよ、今日は僕も本気で相手をしてあげる」
「皆さん無事ですか!?」
 それと同時にせつな達の元にテレサ、緋王 輝夜(ひおう・かぐや)樹月 刀真(きづき・とうま)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)玉藻 前(たまもの・まえ)が合流する。
「あぁ、今まさに戦闘が始まりそうなところだ」
「やっぱり……」
 輝夜がエッツェルを見て呟く。
「輝夜さん……?」
 その様子を見てテレサが首を傾げる。
「あれは、あたしのお父さん……エッツェル・アザトース」
「えぇ!? あれが、ですか……?」
「驚くのも無理はないけどね……あたしはお父さんを止めるためにここまで足取りを追ってきた……!」
「止めれば良いんだな?」
 刀真の言葉に頷く輝夜。
「なら、俺らがやることは変わらないな」
「そうだねっ!」
 全員が武器を構える。
「だが、どうなるか分からないぞ?」
「うん。これ以上、何か問題を起こす前に……絶対に止める!」
「ごちゃごちゃとうるさいなぁ……。とめるとめないは関係ないよ。どうせ……全員僕が殺すんだからさぁ!!」
 ケビンが吼えると巨大化し、化け物の姿へと変化する。
「ここで終わらせるよ!」
 ルカルカがポイントシフトでケビンの元へと瞬間移動。ゴッドスピードを使った近接戦闘を繰り出す。
「そんなんじゃ効かないよ!」
 だが、皮膚まで硬質化しているケビンに対しあまりダメージが通らない。
「邪魔だよ!」
 鋭い爪がルカルカむけて振り下ろされる。
「当たらないんだから!」
 すぐにポイントシフトで回避。そこにエッツェルの触手が迫る。
「させない!」
 茜が後方からスナイパーライフルで触手を精確に狙い撃ち、援護。触手はケビンにも放たれているが、硬質化した皮膚にはダメージが入らない。
「行くぞ!」
「はい!」
「えぇ!」
 刀真、テレサ、輝夜の三人がエッツェルへと走る。エッツェルの触手が三人へと迫る。
「行くぞ」
「援護するよ!」
 ダリルの魔銃ケルベロスによる銃撃とせつなの氷の刃が触手を貫く。エッツェルの元にたどり着いた三人、刀真が白の剣と光条兵器『黒の剣』による二刀流による剣技、テレサの杖術、輝夜のツェアライセンがエッツェルを襲う。
 エッツェルはすぐさま、絡みつく魔障気を噴射。それを確認した、三人がすぐに距離を置く。その間に自己回復を始めるエッツェル。
「……させない!」
「援護よ!」
 月夜のルミナスアーチェリーによる神威の矢と茜のシャープシューターがエッツェルを狙う。だが、水晶翼で身を庇い、完全防御。
「そらそら!」
 その間、ルカルカはケビンの攻撃を避けながら少しずつ打撃を加えていく。
「俺も手伝おう」
 ナナシも攻撃に加わる。
「あははっ、その程度じゃ通らないよ!」
「それはどうかな?」
 ルカルカとナナシが殴っているのは同じ場所。
「何度も同じ場所を殴れば……!」
 ナナシとルカルカが同時に、同じ場所へ向けて強力なストレートを放つ。
「ぐっ!?」
「その部位が脆くなりダメージが通る……だな?」
「正解だよ♪」
「貴様等……!」
 怒りをあらわにするケビン。
「ちょっとごめんね」
 瞬時にルカルカがナナシを抱える。
「しねぇぇ!!」
 二人向けて振り下ろされる爪。だが、ルカルカがポイントシフトでナナシごと移動。攻撃を回避する。
「すまない、助かった」
「このぐらいどうってことないよ♪ それ、もう一度!」
 今度は近くに移動、再び二人で強力なストレートを浴びせる。
「ぐあぁぁ!!?」
「…………」
 その間、エッツェルが不穏な動きを見せる。
「む……」
 それにいち早く気づいたのは玉藻。
「みな、気をつけろ! 何かしようとしておるぞ!」
「あれは……!」
 輝夜が焦る。
「あれをさせてはいけない!」
「それほど、まずいものか?」
「広範囲に向けての呪殺攻撃……! 最悪の場合みんな死んじゃうわ!」
「なんだと!?」
「全員死……良いね! それは! 悪いけど、邪魔はさせないよ!」
「みんな! そっちは任せたからね!」
 ルカルカとナナシが邪魔をしようとするケビンの前に割ってはいる。
「悪いけど邪魔させるわけにはいかないの!」
「俺たちと戦っていてもらおうか」

「どうやってとめれば良い?」
 刻一刻と広範囲呪殺攻撃――虚空の門の発動準備をするエッツェル。
「呪殺攻撃発動の間、弱点が現れるはず。そこを一気に突けば……」
「一か八かだな……」
「だが、止めねば全員死ぬ。やるしかないだろう」
「ここで、沢山の命を失うわけにはいきません……!」
 全員がその瞬間に備えて構える。
「……来るよ!」
 虚空の門が発動する。
「……あそこだ! 露出している器官があるであろう! そこを狙え!」
 玉藻がイヴィルアイで弱点を見つける。
「行くぞ!」
「はい!」
「止まれ!!」
「お願い……止まって!」
「我が一尾より煉獄がいずる!」
 まず、ダリル、茜の射撃、せつなの氷の刃、月夜の神威の矢、玉藻のヒロイックアサルトで強化したファイアストームが弱点の器官へと突き刺さる。
「…………!」
 弱まったものの、まだ止まる気配のないエッツェル。
「皆さん、十秒だけ時間を下さい」
「どうする気だ?」
 刀真がテレサを見やる。
「相手の力が『呪い』なら……浄化の力をもって相殺します」
 彼女の杖に、炎が灯った。杖術と並ぶ彼女の力――断罪の聖火だ。

――Pater noster, qui es in caelis: ――天にましますわれらの父よ
   sanctificetur nomen tuum; 願わくは御名の尊まれんことを


 テレサが祈りの言葉を紡ぎ始める。
「絶対に止めるから……!」
 輝夜が突撃した。
「えいっ!」
 輝夜のツェアライセン:爪形態が突き刺さる。そこからすぐに距離を取る。
 エッツェルの足元に、テレサの杖から放たれた炎が着弾し、そこから螺旋状に上がっていき異形を包み込む。その直後、刀真が彼に肉薄した。
「これで終わりだ……! 顕現せよ『黒の剣』!」
 トドメとばかりに刀真が神代三剣で斬りさく。だが、彼の一撃だけではなく聖なる力に蝕まれているにも関わらず、まだ動きが止まらない。
「そんな……!」
「あれだけ攻撃してまだ止まらないのか!?」
「離れよ!」
 玉藻の叫びに三人が距離を取る。
「開け地獄の門……」
 玉藻が地獄の門を発動。
「我が九尾を以って、終焉を招く!」
 そして、撃ち出されたのは大魔弾『コキュートス』。エッツェルの器官を貫いた。
「…………」
 そして、ついに虚空の門の発動を停止。
「よしっ!」
 エッツェルは止められた理解すると水晶翼を広げる。
「……! 待って!!」
 輝夜が止めようとするも、凄まじい速度で姿を消した。
「逃げた……?」
「みたいだな……」
「そんな……お父さん」
「輝夜さん……」
 俯く輝夜だが、すぐに顔を上げる。
「……大丈夫、また探せば良いだけ。それよりももう一人のアレをどうにかするんでしょ? 手伝うわよ」
「そうだったな」

「さっきからちょこまかと……!」
 ケビンをポイントシフトやゴッドスピードでうまくいなしているルカルカ。
「甘い甘い♪ そんなんじゃ絶対に当たらないんだから!」
「助けに来たぞ」
「あ、ダリル。そっちは終わった?」
「あぁ、ご覧の通りだ」
 全員が、ケビンと対峙する。
「くそっ……!」
「さぁ、ボコボコにしてやる!」
 全員が一斉にケビンへと攻撃を開始する。
「それっ!」
 せつなの氷の刃。
「そんなもの!」
「本命はこっち」
 氷の刃を避けたさきには茜のシャープシューター。
「ぐっ!」
「どうした? その程度か?」
「断罪させていただきます!」
 刀真とテレサによるコンビネーションアタック。
「……はっ!」
「行くぞ」
 月夜とダリルのダブルショット。 
「煉獄を受けよ!」
「絶対零度の氷だよ!」
 玉藻とせつなの焔と氷刃。
「トドメだよ!」
「合わせろ!」
 そして、最後にルカルカとナナシによるコンビネーションアタック。さすがのケビンもすでにボロボロ状態ですでに人型の姿に戻ってしまっている。
「く、くそ……この程度で……」
「しぶといなぁ……」
「悪いが消えてもらうぞ」
「……そうは行かない」
 ケビンはありったけの閃光弾と手榴弾を置いていく。
「何を!?」
「……さよなら」
 そう言い残してケビン――コード:S^2はメンバーの前から姿を消した。