なし

リアクション

★エピローグ★


　土星くんが、何やら考え込みながら住居へ戻った時。はたと動きを止めた。
　まるで昔に戻ったような感覚があった。
『これは……』
　住居は活気にあふれていた。人が大勢いる、だけでなく。一見どこにも傷跡が見当たらなかった。少なくとも、もう住居としての役割は果たせるようになったらしく、建物から寝ぼけた様子で出てくる者たちもいた。
　もちろん、今だ直っていない個所もあるのだが。
　何よりもその活気が、昔の様子とかぶってしまい、土星くんは言葉を失くした。
「あ、おかえりー」
　笑顔で土星くんに声をかけたのは、ルカルカだ。彼女の声に、修理に没頭していたダリルが顔を上げた。
「すまない。内側のことはほとんど分からなくてな。あまり修理が進んでいない」
「でもどう？　外はほとんど完璧だと思うんだけど」
『あ、ああ』
　土星くんのつぶらな瞳が、ぐるりと周囲を見た。１人、２人、３人……。大勢が土星くんを見返し、笑った。
「コーン・スー。修復の指示を貰えないか」
　ダリルの声が頭に響く。

――出来る事は手伝うから、抱え込むな、共にさせてくれ。

　土星くんがニッと笑った。

『ふんっ生意気やな。でもしゃあない。特別に手伝わしたるわ』

　もう１人じゃない……土星くんはようやくそのことに気づけたのだった。


【すちゃらか代王漫遊記】セレスィアーナの涅槃巡り！　完


★報告書★

・遺跡発見！
　盗賊がアジトにしていた地下遺跡に、機晶生命体土星くんと似たものが大量に発見された。
　貴重な部品なども大量にあるとみられ、現在詳細は調査中だが、おそらく工場のようなものではないかと思われる。
　土星くんにも話を聞いたが、生まれた瞬間のことは覚えていないらしい。だがどこかに工場があるとは聞いたことがあり、懐かしさも感じるとのことなので間違いではないだろう。
　盗掘を防ぐため、現在は一般人は立ち入り禁止となっている。

・移動式住居
　土星くんが自分１人ではなく、周囲も頼るようになり効率が良くなる。
　遺跡で部品も見つけたため。これから大幅に作業が進むだろう。

・アガルタ
　盗賊退治に成功し、内側の敵も排除。治安がだいぶ回復。
　出店者も増え、移住希望者の受け入れも進んでいる。
　美しい音楽と食欲がそそる香りがそこかしこに流れ漂い、人々の活気ある声が溢れている。

　どこかで謎の記憶喪失事件が起きたり、また別のところで「ＳＡＮ値がー」という悲鳴が聞こえたり、鍋を食べて麻痺ったりしたそうだが、誰もが口をつぐんでいるため不明である。

　今日もアガルタは平和だ。