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リアクション
場所:ブライダルイベント、主に控室
ほんの少しだけ時間は遡って、ブライダルイベント会場。
「美しい会場ですね……マスター、ぶらいだるいべんととはどのような物だか存じませんが、連れて来ていただいてありがとうございました」
「いやいやいや、グラキエス達も行ってるみたいだし、俺達もどんどん体験してみよう、な」
フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)とベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は連れだってイベントに参加していた。
会場を見て回り、可愛らしい小物に目を輝かせ、料理とドリンクを試食し、ドレスを試着……したところで。
「あの、マスター」
「んん?」
「その、この衣装はもしかするとウェディングドレスというものでは……」
「んんー?」
さすがのフレンディスも、真実に気付く。
そして気づいた時には既に半分以上ドレス姿。
「わ、私には早すぎます!」
「いやこれはあくまでも模擬イベントだから」
「それにこのドレス、肌の露出が……」
「ヴェールがある! ヴェールで隠せば問題ないから! 俺は、フレイのドレス姿が見たいんだ!」
「ま、マスター…… そ、それでしたら……」
ベルクの言葉に、ぼぼっと頬染めて抵抗を止めるフレンディス。
震える手で、再びドレスの試着をはじめる。
(おや?)
いつもならもう少し抵抗があるはずだが、今日は妙に素直だ。
そんな彼女の様子にベルクは少しだけ違和感を感じたが、フレンディスのドレス姿にそんな疑惑も霧散する。
「き、綺麗だ……フレイ」
「マスター……」
白いドレス姿のフレンディスが、ベルクに手を伸ばす。
しかしその手を取ったのは、ベルクではなかった。
「え?」
「え、あ、きゃああっ!」
緑色の触手。
それが、フレンディスに巻き付いた。
「や、やあっ、何ですかこれはぁっ!」
ハデスの迷惑な発明品だとは知る由もない。
「ふ、フレイ……」
真っ白な花嫁姿のフレンディス。
それを凌辱していく緑色の触手。
絡みつく緑と白のコントラストにベルクは一瞬我を忘れて見入ってしまう。
しかしそれも一瞬。
「ふ、フレイを離せこの変態触手めぇえ!」
「マスターぁ……ぁあっ、やっ、やめ、マスターの、前でっ……」
「うぉおおおお!」
フレンディスがベルクに助けられ、彼の腕の中に納まるのにそう時間はかからなかった。
◇◇◇
「見て見て、あれはウェディングボードだって! 小さな薔薇がついてたり、くまさんが飾られてたり……小物もすごく凝ってるんだね!」
「ああ……そういう物なんだな」
仁科 姫月(にしな・ひめき)が成田 樹彦(なりた・たつひこ)の腕を組む様にして引っ張り、イベント会場を見て回っていた。
いつもの姫月なら、恥ずかしくてなかなかこんなに積極的になれない。
ブライダルイベントという特殊な場所。
周囲の幸せそうなカップル。
間近で行われている結婚式。
そんな状況が、ついつい彼女を浮かれさせ少しだけ大胆にさせるのだった。
(なんかいい雰囲気。今日こそは、樹彦さんと……うふふ! あ、でもその前に、最近樹彦さんが私を避けてるみたいだからその理由を聞いてみなくちゃ!)
幸せな妄想と疑念が入り混じる。
(もしも、誰か他に好きな人がいるんだったら、その時は……くす。くすくすくすくすくすくすくす……)
「……き、姫月、どうかしたか?」
「え、えぇ、何でもないよ」
一瞬別の世界に入り込みそうになった姫月だが、樹彦の言葉で慌てて踏みとどまる。
(ああ、こんなにはしゃいで……やっぱり、こんなイベントに来たのは間違いだったんだろうか)
喜んだり暗くなったりかと思うと突如笑い出す姫月を、ただただ心配そうに見守る樹彦だった。
「ね、樹彦さん。話があるんだけど」
「何だ?」
改まって話を始める姫月に、樹彦は内心どきりとしながらも平静を装って返事をする。
「ええと、最近……私に隠している事とか、ない?」
「別に、ないけど」
「その……私を避けたりしてない?」
「いや、そんな事は……」
姫月が深刻な話に一歩足を踏み込んだ時。
にょろり。
彼女の足を、何かがくすぐった。
「ちょっと、今大切な話をしてるんだから……あれ?」
にょろり、うにょうにょー!
「え、え、きゃぁあああ!」
あっとゆう間に姫月に体を緑色の触手が絡みつく。
絡みつくだけでは飽き足らず、その触手は彼女の服の中へ、その肌へ……
「や、いやっ、ぁああんっ」
「ひ、姫月っ!」
即座に動いたのは樹彦だった。
びくびくと震える姫月を抱き締めると、絡み付く触手をかき分け、火術で燃やして姫月を救い出す。
「大丈夫か!」
「だ、大丈夫……ありがとう、樹彦さん。やっぱり、いつも私を助けてくれる……」
姫月は樹彦の胸に顔を埋め、そのまま動こうとしなかった。
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