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屍の上の正義

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屍の上の正義

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「大群だと聞いてはいたが、この光景は予想していなかったな」
 白銀をベースとした二足型イコンゼアシュラーゲンに乗り込み眼前に広がる光景を目の当たりにした瀬乃 和深(せの・かずみ)が呟く。
「ぼーっとしてないで、威力偵察しにきた意味がなくなるわよ!」
「今のところ小型と中型くらいしかないわ。小型の索敵は任せてね」
「どんな操縦でも制御して対処してみせます。存分に戦ってください」
 ルーシッド・オルフェール(るーしっど・おるふぇーる)瀬乃 月琥(せの・つきこ)ベル・フルューリング(べる・ふりゅーりんぐ)の三人が和深に檄を飛ばす。
「そうだな。これ以上被害が出る前に止めなければな。……攻撃はルーシッド、機体制御はベル、小型機の索敵は月琥が担当してくれ。
 俺は全員のフォローに入る。俺たちの目的は相手が如何なる程の強さを持ってるか推し測り、それを管制機へ通達しつつできるだけ敵戦力を削ることだ。質問は?」
「ないわ!」
「ございません」
「オーケー、早速だけと2時の方向から小型機の群れがこちらに接近中。気づかれたみたいだね」
「ルーシッド」
「言われなくとも!」
 迫り来る群れに向き直り、『風斬剣』で攻撃を行う。空を切り裂く刃は、容易くイレイザー・スポーンたちを次々と斬り裂いていく。
「小型程度なら倒すのは容易か。これなら中型にもそれほどてこずることはないか?」
「……小型の群れが一箇所に集まってる?」
 月琥がこぼした言葉。和深が聞き逃さず、考える。どうしてそんなことをするのか。
「一点に集まるのなら好都合、このまま一気に!」
 ルーシッドが一点に群がる小型のスポーンへと進行する。
「……まさかっ。ルーシッド! 回避行動に移るんだ!」
「……っ!」
 言葉だけに反応してむりやり機体を回避行動に移させる。次の瞬間、自分たちが元いた場所にはイレイザー・スポーンが合体したものが体当たりをしてきた。
 その攻撃ともいえない攻撃は地面を抉り上げ、その威力を誇示しているようにさえ見ていた。
「ベル」
「いきなりでしたが機体制御の方は無事に行えました。まだいけます」
「了解した。損傷も軽微だ。このまま攻撃を続行するぞ、ルーシッド」
「ったく。やってくれるじゃない! お礼をしないとね!」
 ゼアシュラーゲンが『プラズマキャノン』をセット。
 距離を取り大型のイレザイースポーンに照準を合わせる。
「いつも使えない分、存分に味わってもらわないとね!」
 言葉と共に、収束した多量のエネルギーが一気に放出される。
 『プラズマキャノン』による攻撃は小型の悪鬼を巻き込みながら、大型へと着弾。
 絶大的な攻撃。にも関わらず大型のスポーンは倒れない。
「思った以上に厄介だな。これは、中型への認識も改めないとまずいか」
「小型、11時と2時の方向。これはちょっとまずいかも?」
『こちらストライカー、イーリャです。2時方向の敵はこちらで迎撃します』
「助かる。だが大型はどうするか」
『こちら魂剛。いいとこどりかもしらんが、あのでかぶつはまかせてくれんか』
「いや、いいとこどりなんてとんでもない。すまないが任せる。聞いたとおり、他の機体と連携するぞ。俺たちは11時の方向の敵を迎撃する」
「了解、11時の敵にロック」
「機体制御も良好でございます」
「攻撃準備もばっちり! それじゃーいっけー!」
 『バスターライフル』で11時方向から来る敵を蹴散らすゼアシュラーゲン。
「攻撃開始を確認。こっちも援護よ」
「うちの味方に近づくんじゃないわよ!」
 『ビームアイ』で2時方向から来る敵をなぎ倒すフィーニクス・ストライカー/H。
「弱ってるその隙を!」
「叩き斬れ!」
 『鬼刀』と『アンチビームソード』でダメージを追っていた大型スポーンを細斬れにしていく魂剛。
 各機の連携により全方向から接近していた敵を倒すことに成功するのだった。

「少し出遅れたが、ここから巻き返すとするか!」
 大型イコン機バロウズが前線に追いつく。搭乗者は四人。
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)阿部 勇(あべ・いさむ)ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)だ。
「荷電粒子砲は味方を巻き込む可能性があります。今は使わないほうがよいかと」
「これだけ大きいから囮になるのもありかもですねー」
「お、囮ですか? 少し怖いですが、ともかく情報処理は任せてください」
「仕方あるまい。『メタルクロー』をメインに他の機体と前線を維持する! 気合を入れていくぞ!」
 そびえたつだけではなく、その巨体を持ってイレイザー・スポーンの群れに突貫する。
 小型の悪鬼は成すすべなく、ほこりのように舞う。
「各部ダメージは極僅かです。通常戦闘、いけます」
「出力調整は完了済みです。火器管制も任せてください」
「前方180度一帯に小型のスポーンの反応を多数確認しましたよ」
「応!」
 飛び掛ってくるイレイザー・スポーン。しかし巨体が振るう『メタルクロー』に阻まれ触れることも、取り込むことなど到底できず。
 しかしその数は留まるところを知らず、倒せば倒すほどに増えているのかと錯覚するほどに沸いて出てくる。
「まだまだ気合が足りんなぁ!」
 『メタルクロー』だけではなく、足元にいた小型のイレイザー・スポーンを足踏みだけで踏み潰す甚五郎。
 しかし、バロウズに振動が走る。
「ダメージ軽微! ですが明らかに小型からの攻撃値じゃありません! 中型か大型の射撃によるものです!」
「火器に被弾はありません。後退準備のため、スラスターの出力を調整します」
「……いました! 3時方向からこちらに狙いを定める機影あり。中型の群れです」
「射撃専門もいるということか! 一度後退だブリジット!」
「了解」
 蜂の巣にされる前に後退する甚五郎。追いすがってくる小型を撃墜しながら中型射撃のイレイザー・スポーンに注意を払う。
「勇はこのことを管制機へ連絡してくれ。一時的にホリイが索敵を担当しつつ、ダメージコントロールを任せる」
「わかりました」
「了解です!」
「……荷電粒子砲を使うことはないか。ブリジット!」
「『二連磁軌砲』の出力調整、90%……いけます」
「よしっ! 先ほどの分も返してやるっ!」
 膝をつき、安定した態勢から先ほどの中型スポーンの群れへ『二連磁軌砲』をセットし、素早く砲撃。その攻撃は見事に当たり、相手は諸々大破する。
「本当は倍返しとしてやりたいところだが、あまり無駄遣いもしてられないのでな」
「管制機へ連絡完了です」
「総ダメージ量も算出済みです。まだまだ戦えますよー!」
「エネルギー消費はありましたが、問題ないレベルです」
「応。いざという時のため、『ファイナルイコンソード』及び『艦載用大型荷電粒子砲』が使えるだけのエネルギーは温存する。
 そのためあちらで先陣をきって戦い続けているイコン機と共同するぞ」
 そう言って魂剛の下へと向かう甚五郎。たどり着いた先では、数多の残骸を築き上げながら戦い続ける唯斗の姿があった。
『ほー、わらわたちよりでかいとは。これなら背中から斬られる心配が減る』
「こちらはバロウズです。そちらと連携し戦線を維持します」
『魂剛だ。間違って斬ってしまったらすまんな』
「無問題だ! こいつの装甲は並ではないっ!」
「じ、甚五郎!」
『……はっはっは! どいつもこいつも、ここにいるやつらは面白いな! よし、唯斗! あのでかいのと暴れるぞ!』
『ああ、よろしく頼む!』
「さあ行くぞ! ここはわしと魂剛で守り抜く!」
 大型イコン機が二体そろい、示し合わせずとも刀と拳で敵を打ち倒していく様は、圧巻という言葉以外には何もなかった。
「……管制機から通達! 10時、12時、2時方向から大型スポーンを確認したとのこと」
「遂に来たか……味方は?」
「続々とこちらに向かっており、直ぐにでも交戦状態へと移行する見込みだそうです」
「なら他の方向も大丈夫ということだな。わしらは継続してここで戦うぞ!」
 他の仲間たちを信じて、魂剛と協力して前線で一歩も引かず戦う甚五郎だった。