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リアクション
第4章 紋章についてのネット上の展開
『【ゆる募】貴族が好みそうなアンティーク系の小物を売ってる店。
場所はシャンバラ国内限定。値段不問なんでオークションとかでも可。』
ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)のネット上の呟きに、まず反応したのはリースだった。
『どなたかへのプレゼントですか?』
『いや、ティル・ナ・ノーグに住んでるお袋がシャンバラの工芸品を探しててな。プレゼントできりゃいいんだが、費用はあっち持ちだ(汗)』
「ふぅん……でしたらこれを……っと、いえいえ」
リースはふと見つけたサイトを紹介しようとして、慌てて止めた。
オークションのサイトに出ている薔薇と月と雲を模した紋章が入った商品。
とても素敵な品だけど、人に勧めるには不明な点が多すぎる。
「まずは、出品者の方にお話を聞きに行きましょう」
と、彼女が思い立ったのが数日前。
『オークションに出品されていたウェザーが出品した商品。あれは、貴族みたいな格好の人が売りに来たんですって』
『マジか。もしかしたら本当にどっかの没落貴族ゆかりの品かもな』
『薔薇と月と雲の紋章……どなたか、詳しい方はいないでしょうか』
「薔薇と月と雲の紋章?」
リースたちの呟きに反応したのはアガレス・アンドレアルフス(あがれす・あんどれあるふす)だった。
「どこぞで見たことがあるような気がするのぅ。調査なら、図書館じゃな」
フットワークも軽く、アガレスは図書館で紋章の辞典をめくる。
「おお、そうそう、これじゃった」
紋章とそれを持つ家の名前を見て、アガレスが深く頷いたのも数日前。
『薔薇と月と雲の紋章を持つとある名家。かの紋章は代々……』
アガレスは、図書館で得た知識と自分の記憶をたどり、紋章についての知識をネット上に書き連ねていた。
「ふむ。これだけ書けばナディムらにもよく分かるじゃろう」
しかし、反応したのはナディム達だけではなかった。
「あったー! ありました見つけましたですよご主人様マリナさんあとついでにエロ吸血鬼!」
ノートパソコンを見ていたポチの助の大声に、フレンディス達だけでなくウェザー中の人物がポチの助を注目する。
ウェザーが出品する商品の紋章の調査は、壁に突き当たっていた。
端末での調査では紋章は見つからず、焦るポチに助言したのはマリナーゼだった。
「紋章にこだわらず、もっと手広くネット上の噂でも集めてみたらどうさね?」
助言に従い、ネットの噂や呟きサービスまで目を通していたポチの助が見つけたのは、ナディム、リース、アガレスらの一連の呟きだった。
「これこれ、これです! 紋章についてや、その家についての詳細まで書いてありますよ!」
「やったねえ、ポチちゃん」
「すごいです、偉いです!」
「ふーん、やるじゃねえか」
「ふふん、それほどでもありません」
マリナーゼやフレンディス(と、プラス1)から褒められポチの助のしっぽは上機嫌だった。
「えーと、かつて知らぬ者はいなかった名家、ジャウ家……ほらっ、私の言った通りじゃない。没落した名家の品よ!」
サニーがポチの助に負けず劣らずの上機嫌で胸を張る。
「うわあ、奇跡の一致……」
「また姉さんが調子づく……」
「何よ」
「何でもありません」×2
「さすがサニーさんですネー」
「ねー」
弟たちのいまいちの反応をサニーはスルーし、サリーと「ねー」と言い合っている。
「しかもこれ、なんだか妙に盛り上がってるさね」
マリナーゼはパソコンを指差す。
ネット上では、アガレスの書き込みを契機にどんどんとオークションの出品商品の評判が高まっていた。
埋もれていたジャウ家の名品の登場だ。
機会があれば、見るだけでも参加する価値はある。
本当の価値はどうであれ、これだけの評判になった商品が安い値段で終わるはずはない。
「来てる……風は、私達に来てる!」
「ま、油断は禁物さね。念の為あたしも別所に情報を流しておくとするさね」
息巻くサニーに、マリナーゼは落ち着いた様子で声をかける。
「さあ、あたし達の手でオークションを盛り上げるとするさね。この紋章、良い値で売るさね!」
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