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紅き閃光の断末魔 ―前編―

リアクション公開中!

紅き閃光の断末魔 ―前編―

リアクション

終章 捜査終了

「……遂に教導団にまで手を出しやがったのか」

 闇夜に紛れて、事件現場の研究所を遠目に観察する者がいた。
 彼を表現するのなら、黒衣の男とでも呼ぶのが相応しいだろう。
 全身が黒のロングコートで覆われていて、唯一うかがえるのが、
 現在その黒衣の男は、携帯電話を手にしている……どうやら誰かと通話中のようだ。

「あぁ。研究所のセキュリティ面は万全だった。それは間違いねえよ」
「…………」
「そうだな、そのために内部犯を即興で作ったんだろ。あいつらなら、それくらい平気でやってのける」
「…………」
「簡単に言うけどよ。そんな楽にシッポ掴める事なんて無いと思うぜ? あんたと会う以前、俺は3年間も追ってたんだぞ」
「…………」
「うるせえ、ほっとけ! ……ただまぁ、本当に契約者の連中が内部犯を暴く事ができたなら、俺も協力しに行くつもりだ。そこから外部犯の方を教導団も追うだろうし、あいつらをブッ潰したいって点で、目的は一致するからな」
「…………」
「軍事裁判でも開くんじゃねーか。研究は教導団の傘下で進んでたから、内部犯の方は軍規違反って扱いになるだろ」
「…………」
「わかってるって。まだ無茶な動きはしねーよ。まずは契約者の連中がどこまで掴めるのか───お手並み拝見といくか」

 通話終了。
 身を翻して闇夜に去っていく黒衣の男は、ひどく不敵な笑みを浮かべていた。





■□■獲得情報一覧■□■

◆捜査前の情報

<研究所について> 記録者:所長
事件現場の研究所はヒラニプラ市街の外れにあるが、もともとは資材保管用の倉庫だった。
巨大なライザーワームの機構を解析するにあたって格納スペースが必要になったため、
大部屋があるこの倉庫を改造して、研究棟として使っていた。

<爆音について> 記録者:所長
爆音があがったのは、22時10分で間違いないという。

<機構の残骸> 記録者:所長
解析中だったライザーワームの機構だが、完全に破壊されていた。
一応これまでの解析で、この機構は人工物である事が明らかになっている。
今回の事件は、何らかの理由でこれを狙った犯行である可能性が高い。

<大部屋の死体> 記録者:捜査隊員
大部屋から、合計8名の研究員の死体が発見された。
ほぼ全員に激しく抵抗した痕跡があるが、例外なく一撃で即死している。
教導団の鑑識によると、死因は全員が鋭利な刃物による斬殺か刺殺だった。

<副所長の死体> 記録者:捜査隊員
死体が発見されたのは管制室。
後頭部から『ハンドガン』の銃弾が検出された。
教導団の鑑識によるとこれが死因で、ほぼ即死だった模様。
着衣の乱れなど、死亡直前に抵抗したような痕跡は見当たらない。

<衛兵Cの死体> 記録者:捜査隊員
死体が発見されたのは屋外で、正門から見て研究棟を挟んだ反対側にあたる位置。
正面から首元を鋭利な刃物で一閃されている。
教導団の鑑識によると、死因は出血性のショック死。
彼の物である『紅蓮の槍』が壊れた状態で落ちているなど、死亡直前に抵抗した痕跡がある。

<割れた窓ガラス> 記録者:捜査隊員
大部屋の北側にある大きな窓ガラスが、1枚だけ完全に割れていた。
落ちた破片を見たところ、外側から大きな衝撃が加わって割れたようだ。
この窓はとても高い所にあり、本来開くようには作られていない。
研究所内に存在する窓は、全てこれと同じ形状である。

<セキュリティスイッチ> 記録者:シャンバラ教導団
この研究所に勤める職員は、出勤時に正門でセキュリティスイッチを受け取る事になっている。
セキュリティスイッチは常に携帯するよう義務付けられている小型機器で、不測の事態が起きた場合、
誤発防止用のカバーを外してボタンを押し込むことで、教導団に緊急信号が送られるようになっている。
この信号は特殊な回線を使用しており、発された場合は絶対に妨害できない。

<赤外線センサー> 記録者:シャンバラ教導団
研究所を囲む外壁には、上空まで届く防犯用の赤外線センサーが設置されているという。
何かが外壁を乗り越えると反応し、教導団に緊急信号が送られるようになっている。
この信号は特殊な回線を使用しており、発された場合は絶対に妨害できない。
これにより、外部からの侵入は正門を通らなければ難しいと思われる。

<防犯カメラについて> 記録者:シャンバラ教導団
研究所内の全ての部屋には、防犯カメラが1台ずつ設置されていた。
ただし、広すぎて全体が映らないため、大部屋にだけは2台設置されていたという。
性能は標準的で、細部まで明確に映し出すことはできない。
また、各部屋以外(廊下や研究棟の外側など)に、防犯カメラは存在しない。

<破壊された防犯カメラ> 記録者:捜査隊員
研究所内に設置されていた防犯カメラ9台のうち、4台が壊されていた。

『大部屋北の防犯カメラ』……鋭利な刃物の一突きによる破損。
『大部屋南の防犯カメラ』……鋭利な刃物の一突きによる破損。
『管制室の防犯カメラ』……数発の銃撃による破損。
『武器庫の防犯カメラ』……強い爆発による破損。

<防犯カメラの映像> 記録者:捜査隊員
壊れていない5台の防犯カメラは、今も各部屋に残っている。
本体にモニターが搭載されているので、現地でも録画された映像を確認することができる。

<ゲートの緊急遮断> 記録者:シャンバラ教導団
族に衛兵が倒されるなど、正門を突破された場合に使用する機能。
研究所内に存在する全てのゲートの中から、任意の場所を選んで緊急遮断することができる。
解除方法は管制室で操作する以外には存在しない。

<管制室の機能> 記録者:捜査隊員
研究所の全てのセキュリティは、管制室で管理されている。
セキュリティスイッチ・外壁の赤外線センサー・防犯カメラ・ゲートの緊急遮断。
これらの機能は、この部屋の機器を操作することで、ON/OFFの切り替えができる。
捜査隊が最初に踏み込んだ時、機器の状態はOFF・OFF・OFF・大部屋のみONとなっていた。
また、この部屋のロック自体はかかっていなかった。

<通報後の動向> 記録者:捜査隊員
所長からの通報を受けた教導団は、すぐに捜査隊を送り込んで現場を保全した。
また、通報を行った直後から、生き残りの5名はずっと一緒に衛兵テントにいたらしい。
よって、現場が保全されるまでのタイムラグで、犯人が何らかの証拠を隠滅したりする事はできなかったと思われる。
もっとも、5名全員が共犯で、口裏を合わせているのなら話は別だが……。

<既得情報の総括> 記録者:捜査隊長
これまでの情報から、ガラスを破って侵入してきた外部の実行犯の存在は、確定的である。
ただし、外部の実行犯だけでは、張り巡らされた強固なセキュリティを破れない事も、確定的である。
つまり、この外部の実行犯を研究所内へ招き入れたと思われる、内部の共犯者がいるハズだ。
今回、契約者達に期待するのは、その共犯者を突き止める事になるだろう。
おそらく生き残った5名のうちの誰か……いや、1名だけとは限らないかもしれない。


◆衛兵テントの情報

<トマスのアリバイ> 記録者:夏侯 淵(かこう・えん)
所長のトマス氏は、事件発生時は廊下にいたそうだ。
その10分ほど前までは偉い人ルームの中で事務をしていたようだが、
訪ねてきたアメリーに、ある資料を確認させてほしいと頼まれて仮眠室へ向かったらしい。
仮眠室にある鍵付きロッカーから目的の資料を取り出し、
偉い人ルームに戻る途中で爆音を聞いたそうだ。
また、トマスはその時、武器庫から爆発の余波を感じたと言っている。
武器庫内の状況から見ても、あの爆発があったのは武器庫で間違いないだろう。

<アメリーのアリバイ> 記録者:夏侯 淵(かこう・えん)
研究員のアメリー氏は、事件発生時は偉い人ルームにいたそうだ。
その15分ほど前までは大部屋で機構の解析に勤めていたようだが、
進行に当たってある資料を確認する必要が出たのだという。
その資料は、現在は所長が持っているものだったので、
研究員達を代表してアメリーが、偉い人ルームまで取りに行ったんだと。
その後は、トマス氏が仮眠室に向かってから爆音を聞くまで、
ずっと偉い人ルームで1人で待っていたそうだ。

<レベッカのアリバイ> 記録者:夏侯 淵(かこう・えん)
研究員のレベッカ氏は、事件発生時は屋外の簡易トイレにいたそうだ。
その30分以上前から、大部屋での機構の解析を抜けていたという。
大部屋を抜けた後、まず冷蔵庫に行ってペットボトル飲料を持ち出し、
続けて仮眠室の鍵付きロッカーから、予め買っておいた夜食を持ち出した。
そして、休憩室に行って持ってきた夜食を食べ終えた後、
外に出てトイレに入っていたところで、爆音を聞いたそうだ。

<透のアリバイ> 記録者:夏侯 淵(かこう・えん)
衛兵の透氏は、事件発生時のずっと前から屋外の正門にいたそうだ。
正門で見張りをしているのが彼らの役目だと聞いたが、
この時犠牲になった衛兵C氏だけは、敷地内のパトロールに出ていたみたいだな。
爆音は建物の中から聞こえたため、すぐに様子を見るために入り口へ向かったらしい。
この時、トイレから出てきたレベッカ氏とちょうど合流したと言っていたな。
その事はレベッカ氏も間違いないと証言していたから、信用できるだろう。

<デュオのアリバイ> 記録者:夏侯 淵(かこう・えん)
衛兵のデュオ氏も、事件発生時のずっと前から屋外の正門にいたそうだ。
やはり正門で見張りをしていたようで、透氏とは爆音があがるまで常に一緒だったらしい。
ただ、爆音があがった後も正門の守りがゼロになるのはまずいと考え、
デュオ氏だけは正門に残り、透氏が建物内の様子を見に向かったという。
つまり、彼は唯一まったく動いておらず、正門の見張りだけに徹していたということだな。

<その後の動向> 記録者:夏侯 淵(かこう・えん)
廊下で爆発の余波を感じ、トマス氏はしばらく立ち尽くしていたようだ。
そこで、偉い人ルームから恐る恐る出てきたアメリー氏と合流したらしいな。
レベッカ氏と透氏は入り口横の簡易トイレ前で合流すると、共に建物の中へ入った。
2人はすぐ大部屋へ入ろうとしたのだが、南側ゲートは緊急遮断されていて開かなかったのだ。
なぜ遮断されているのかと戸惑っていると、大部屋の中でガラスの割れる音と、悲鳴のような声があがったらしい。
慌てて2人は北側に回りこんだが、同じく緊急遮断されている北側ゲート前で、
立ち往生していたトマス氏とアメリー氏に合流したようだぞ。
4人は合流した後、ただならぬ様子を感じてセキュリティスイッチを押しこんだ。
だが、セキュリティスイッチは何の反応も示さなかったようで、
皆が混乱する中、アメリー氏が屋外からシャッターを開けて入る方法を示したそうだ。
それに則り4人は屋外へと出て、予定通りシャッターを開閉装置で開こうとする。
この時、正門で見張っていたデュオがこちらに気づいて合流し、5人になった。
そしてようやく開いたシャッターの向こうには、
既に研究員8人分の死体と、壊されたライザーワームの機構があった……。
ここでトマス氏が携帯電話を取り出し、教導団に通報したそうだ。


◆管制室の情報

<映像記録について> 記録者:セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
まず、映像記録の状態について説明しないといけません。
壊されていた防犯カメラの映像なんですが……残念ながら、管制室に集積されたデータからも消されていました。
このデータを消去するためには、管制室で機器を操作する必要があります。
ですから、犯人の誰かが管制室を一度訪れてこれを消去した事は、間違いないと思います。
でも、壊されていない防犯カメラの映像は、全て確認できましたよ。
こちらは可能な範囲で、ルカルカさん達が調べてくれたアリバイと照らし合わせてみました。
……えーと、記録ってこんな感じでいいんですよね?

<偉い人ルームの映像記録> 記録者:セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
事件発生時の3時間以上前から、トマスさんが事務作業をしているようでした。
最初の変化が、アメリーさんが部屋を訪ねてきた事でした。22時00分ちょうどぐらいですね。
すると、すぐにトマスさんが席を立って、アメリーさんを残して部屋から出て行きました。
アリバイと照らし合わせるなら、アメリーさんに渡す資料を取りにいったのでしょうね。
ここからが妙で……22時05分から、何故か映像が途絶えているんです。
壊れていないカメラなのに変ですよね。
途絶えた瞬間までアメリーさんは部屋に残っていましたが、トマスさんが戻ってきた様子はありませんでした。

<休憩室の映像記録> 記録者:セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
21時50分に、レベッカさんがやってきて夜食をとっているようでした。
多分、カップラーメンとオニギリ2個に、ペットボトルの飲み物だと思います。
その後、22時00分に、レベッカさんが出て行く様子が残っていました。
これもアリバイと照らし合わせるなら、トイレに向かったのでしょうね。
その後は誰も部屋に来た様子はないまま、やっぱり22時05分で映像が途絶えていました。

<仮眠室の映像記録> 記録者:セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
21時45分に、レベッカさんがやってきてロッカーから白いビニール袋を取って出て行きました。
アリバイと照らし合わせると、中身は休憩室で食べるための夜食なんだと思います。
しばらくすると、今度はトマスさんがやってきてロッカーの中を漁り始めました。
アメリーさんに渡す資料を取り出すのかな……と思ったのですが、
トマスさんは何も手にしないままロッカーを閉じて、南側の扉から出て行ったんですよ。
これって、アリバイと矛盾してますよね……?
あ、この映像も22時05分で途絶えていたのですが、
トマスさんが出て行ったほんの数秒後の事でしたので、ギリギリ矛盾を発見できたんですよ。

<その他の映像記録> 記録者:セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
全部、22時05分で映像が途絶えていました……。
ここまで条件が揃うと、作為的なものを感じますよね?
えっと、それ以前の映像では21時40分頃の冷蔵庫にレベッカさんが現れて、
ペットボトルを持ち出して行った事くらいしか、変わった点はありませんでした。

<カードホルダーの違和感> 記録者:セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
アリスさんが見つけた情報ですね。
副所長さんが首に提げている透明のカードホルダーの内側に、血で擦ったような汚れがついていたらしいです。
だからどうしたって言われると辛いのですが……状況から考えると不自然ですよね?
ちなみに副所長さんのIDカード自体は、ちゃんとカードホルダーに収められていましたよ。

<セキュリティカードの位置> 記録者:セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
これもアリスさんが見つけた情報ですね。
副所長さんが首に提げているはずのセキュリティスイッチが、見当たらなかったので探してみたらしいです。
そうしたら、壁際の制御機材の下なんていう、見つけにくい場所から発見されたとか……。
常に携帯が義務付けられているはずなんですけど、なんでこんな場所にあったんでしょう?

<ルシェイメアの証言> 記録者:セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
こっちはルーシェさんが指摘した事です。
サイコメトリが妨害されている件についてですが、
この一帯に何らかの不可思議な力が、犯人によってかけられたのだといいます。
ただ、魔術に詳しいルーシェさんなら、一般的な方法はすぐに見破れるはずです。
それなのに見当がつかないことから、犯人は解明していない未知の力を習得している可能性が高いとか……。
それほどの力を持っているとしたら、きっと内部犯ではなく実行犯の方をやると思います。
実行犯を追って市街地に向かった方々は、どうかお気をつけて……。


◆屋外の情報

<割れた窓と衛兵Cの位置関係> 記録者:クナイ・アヤシ(くない・あやし)
私達が最初に調べた事でございます。
割れた窓から衛兵C様の死体までの距離は、10m程度しかありませんでした。
窓ガラスを割った音を聞かれ、口封じのため殺害したのなら、もっと距離は離れているはずです。
ですから衛兵C様が殺害された理由は、窓へ近づく際に障害となったからだと思われます。

<ガラス片の落ち方> 記録者:クナイ・アヤシ(くない・あやし)
割れた窓の下にあたる場所に、ガラス片はほとんど落ちておりませんでした。
この情報は屋外側を調査したものですから、きっと大部屋側には、その分大量のガラス片が落ちているはずです。
大部屋を担当なさっている方々は、この事を踏まえて調べて頂けるようお願い致します。

<シャッターについて> 記録者:クナイ・アヤシ(くない・あやし)
モーターが備えられた、いわゆる電動式のシャッターですね。
扉は分厚い鋼鉄製で、とても大きかったです。
本来の倉庫として使われていた時は、トラックなどが荷を降ろす搬入口だったのでしょう。
ハンドルを捻れば自動的に開閉が行われるのですが、ハンドルは鍵を挿しながらでないと回す事ができません。
その鍵はいつもトマスさんが持っているらしいです。

<シャッターの開閉音> 記録者:クナイ・アヤシ(くない・あやし)
こんなに大きなシャッターなのに、開閉時に全く音がしませんでした。
調べてみたところ、どうやら最新式の技術で作られた騒音対策シャッターのようです。
ですから、例え犯行時にこのシャッターが開閉されていたとしても、その音で気づく事は不可能だった思われます。


◆大部屋の情報

<室内の状況> 記録者:ディオネア・マスキプラ(でぃおねあ・ますきぷら)
えっとねー。
ぐるぐる回って見てみたんだけど、室内は意外と綺麗だったよー。
刃物で斬られても、少ししか血は飛ばなかったみたい。
なんでかなって思ったら、春美が教えてくれたよー。

<研究員達の致命傷> 記録者:ディオネア・マスキプラ(でぃおねあ・ますきぷら)
殺害された研究員8人は、みんな刃物による攻撃で致命傷を受けてたんだー。
でも、その致命傷は全部塞がってた。
春美が、高熱を帯びた武器で斬ると、そうなるって教えてくれた。
だからきっと、実行犯は『レーザーブレード』に似た物を凶器にしたんだと思うー。
理由は多分、返り血を浴びるのを防ぐためだって言ってたー。

<研究員達のセキュリティスイッチ> 記録者:ディオネア・マスキプラ(でぃおねあ・ますきぷら)
割れた窓ガラスから一番近い、2人の研究員は違うんだけどー。
他の6人の研究員は、死ぬ直前にみんなセキュリティスイッチを押してたみたいだよー。
だって、誤発防止用のカバーが、全部取り外されてたんだ。
これを取り外す時って、セキュリティスイッチを押す時だけでしょー?
でも、教導団に送られるはずの緊急信号は、届いてなかったんだよねー。
不思議だなー。なんでだろ?

<大部屋の防犯カメラ> 記録者:超 娘子(うるとら・にゃんこ)
もともとあった情報通り、鋭利な刃物で一突きされて破損していたわ。
ただ、それで空いた穴の側面が、研究員達の致命傷と同じく溶接されたみたいになってたのよ。
つまり、研究員の殺害に使ったのと同じ凶器によって破壊されたと見て間違いないニャ!

<研究員達の死体の位置> 記録者:超 娘子(うるとら・にゃんこ)
殺害された研究員8人の死体は、全て大部屋の北側に密集していた。
春美が言うには、爆音が北側から聞こえたから、北側ゲートのほうに集まったんじゃないかって事らしいわ。
爆発を起こしたのは内部犯だと思うけれど、まさかこのためにやったのかニャ……?

<実行犯についての推論> 記録者:超 娘子(うるとら・にゃんこ)
研究員達自体には激しい抵抗の痕跡があるけど、室内はそんなに荒れていないわ。
だから、実行犯が大勢いたとは考えにくい……。
ニャけど、単独犯だとしたら、相当の腕利きだったんだと思うのよね。
北側に集まっていたとはいえ、そこから1人も逃さずに殺害して回るのはすごく難しいはずだニャ。


◆武器庫の情報

<武器庫の備品リスト> 記録者:阿部 勇(あべ・いさむ)
『機関銃』4丁、『スナイパーライフル』1丁、『銃剣銃』8丁、『ロングスピア』5本、『ノクトビジョン』20個。
そして、後から手書きで追記されている、指向性の『機晶爆弾』5個。
載っていたのは、それで全部でした。

<外部犯の存在感> 記録者:阿部 勇(あべ・いさむ)
大部屋であがった情報から、熱を発する刃物を探してみたんですが……
備品リストには見ての通り無かったし、実際に漁ってみても、それらしき物は見当たりませんでした。
やっぱり外部犯はいたんだと、改めて思いますよ。
それなら凶器の熱を発する刃物とやらも、持ったまま逃げられますし。

<内部犯の凶器の出所> 記録者:阿部 勇(あべ・いさむ)
研究所の職員は出勤時に、正門で衛兵による持ち物検査を受けるようですね。
ただ、ある程度隙のある検査だったようで、誤魔化して凶器を持ち込む事は可能だったようです。
例えば、スキル【物質化・非物質化】を使用すれば、絶対バレませんよね。
他にも、別の物に偽装して持ち込んだり、衣類の中に隠して持ち込む方法も考えられますね。
それに透さんとデュオさんに至っては、そもそも自分達が持ち物検査を行う側ですし、
衛兵という仕事上、『ハンドガン』を持っていても何も不自然ではありませんよね?
つまり、生き残りの誰であっても、工夫次第で凶器の『ハンドガン』を用意することはできたんじゃないでしょうか。

<武器庫の機晶爆弾> 記録者:阿部 勇(あべ・いさむ)
備品リストに手書きで追記されていた品です。
時限式で、タイマーをセットすれば任意のタイミングで爆発させられるんだとか。
どうやらこれは、研究の過程で使ったものの余りだったらしいですね。
保管場所に困って、一時的に武器庫にしまっておいたそうです。
後日、教導団本部に回収される予定だったみたいですよ。

<凶器の隠滅方法> 記録者:阿部 勇(あべ・いさむ)
その時限式の『機晶爆弾』を、犯人は利用しようと考えたんでしょう。
全てのタイマーを22:10にセットし、凶器の『ハンドガン』を爆破して消し炭にする……
おそらく、それが犯人の狙いだったんだと思います。
ずっと持っていたら、捜査隊がやってきた時にすぐ見つかってしまいますからね。
ちなみに武器庫の防犯カメラは、この爆発地点に近かったので、巻き込まれて壊れたようです。
もしかしたら、それも犯人の狙いだったのかもしれません。

<ハンドガンの残骸> 記録者:阿部 勇(あべ・いさむ)
本体は見つからなかったんですが、マガジン部分だけが部屋の隅に転がってました。
甚五郎さんは、犯人が凶器を爆破して証拠隠滅を図った際に、残ってしまったんじゃないかと言っていました。
僕もその推理がしっくりくると思いますね……。
とにかく、武器庫に『ハンドガン』の残骸は存在したんですよ。

<内部犯の動向> 記録者:阿部 勇(あべ・いさむ)
犯人は管制室で副所長を射殺した。
その後、凶器である『ハンドガン』を処分するため、武器庫に一度やってきたはずです。
『機晶爆弾』のタイマーをセットするだけの作業ですから、そう時間は取られなかったと思いますが……
この情報、何かの役に立ちそうじゃないですか?


◆ヒラニプラ市街地の情報

<LH社・ヒラニプラ支部部長の証言> 記録者:シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
朱鷺が聞き込みで掴んだ情報も、オレが一緒に記録する事になった。よろしくな。
まずオレとサビクは、衛兵達を派遣してたっていうLH社に向かったんだ。
そこで、今日の研究所の警備は、本当は早川透・衛兵C・衛兵Dのはずだったって情報を得たぜ。
衛兵Dが高熱を出して休んだんで、デュオに代わりに出てもらったんだってさ。

<ヒラニプラ酒場店主の証言> 記録者:シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
次にオレ達は酒場に向かった。情報といえば酒場だもんな。
そこで聞いた話じゃ、デュオはここでよく1人で飲んでいたらしいぜ。
店主に、昔の経験をよく語ってくれてたんだとか。
最初は半信半疑だったらしいが、話のネタのあまりの多さに、あいつが本物の歴戦の覇者だと確信するに至ったらしい。
……サビク、同期するに越した事はないって言うけどよ。こんな情報役に立つのか?

<ヒラニプラ技術士長の証言> 記録者:シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
この情報は朱鷺が聞き込みで得たもんだ。
アメリーとレベッカの共通の上司に当たる人みたいで、彼女達のこれまでの経歴を教えてくれたんだと。
数年以上前からの経歴だったから、全部聞くのには大分苦労しただろうな……。
でも、特怪しい部分はなくて、ヒラニプラの産業に携わってる者なら、誰でも当てはまるような情報ばかりだったぜ。
後ついでに聞いた話らしいんだけど、アメリーは事件があった研究所に配属されたいって、熱心に頼んできてたらしいぞ。
いったい何でそんな事を頼んでたんだろうな?

<ヒラニプラ鉄道駅員の証言> 記録者:シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
この情報も朱鷺が聞き込みで得たもんだ。
朱鷺は外部犯が遠くに逃げる際に乗り物を利用すると踏んで、空京に繋がるヒラニプラ鉄道の駅を当たってたらしい。
でも、挙動が怪しい客や、血の臭いがする客だとかの情報は、無かったって言ってたな。
深夜帯は物資輸送のための列車が増えて待ち時間が長くなるらしいし、
もしそんなやつが列車を待ってたんなら、駅員が見落としたって事もなさそうだぜ。

<別の事件について> 記録者:シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
研究所の事件とは別に、もう一つの事件が市街地で発生してたんだ。
その内容が、人通りの多い場所で女性が突然倒れちまったってものだったんだけど、
どうやらこの女性、研究所で殺害されてた副所長のパートナーらしいんだ。
しばらくして死亡が確認されたって聞いたけど、いきなり倒れた理由ってやっぱアレだよな……。

<副所長の死亡時刻> 記録者:シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
副所長のパートナーの女性は、さっきも言った通り、人通りが多い場所で突然倒れた。
だから当然、その現場を目撃していた人が数多く存在したんだ。
オレ達は彼らの証言を元に、女性が倒れた時刻を割り出したぞ。22時05分だ。
そして、この女性が突然亡くなってしまった原因を考えると……
必然的に、副所長が殺された時刻は、22時05分になるはずだぜ!


担当マスターより

▼担当マスター

水無月へる

▼マスターコメント

▼ マスターより

 水無月へるです。
 ここまでお読み頂いた方、およびご参加頂いたプレイヤーの皆様、ありがとうございました!

 まずはリアクション公開が遅れてしまった事をお詫び申し上げます。
 今後はそんな事がなくなるように、精進致します……。

 紅き閃光の断末魔は、アトラスの古傷から続く続編の物語となります。
 前編は捜査編ということになるのですが、人が犠牲になっている関係上、終始シリアス調で書き進めました。
 目指したのはミステリアスな雰囲気と、契約者達VS犯人達の知的バトルなのですが、いかがでしたか?
 きっと犯人は、張り巡らせた策謀を誰も抜けられるはずがないと、タカをくくっている事でしょう。
 ですが、契約者達は、協力して推理のパーツを集めることができました。
 このパーツを組み合わせ、1つの鍵を創れるか否かもまた、契約者達にかかっているのです。
 後編の解決編では、内部犯を暴くための軍事裁判が開かれる事になります。
 それまでに是非とも、内部犯は誰だったのか? ミステリーの醍醐味である推理をお楽しみ下さい!
 突き止める事ができたなら……この物語はもう、貴方のものといっても過言ではありません。

PS.
 本当は否定型PCが肯定型PCの挙げた情報をバッサリ斬るシーンとかやりたかったのですが、様々な都合で内部処理になってしまいました。
 スタンスの判定に関しては……
 【肯定型】のいる所では全ての情報が見つかる。
 【否定型】のいる所ではダミー情報(事件に関係してそうで関係ない情報)が混ざらない。
 ものとしてお考えください。

※お願い
 前編にご参加頂いたPLの皆様には、ぜひぜひ後編にもご参加頂ければと思っております。
 実際に捜査して情報を集め、現場を知っているPC達は、真相解明の大きな手助けになるはずです。
 こちらから招待参加の処置を取らせて頂きましたので、ご都合がよろしければ是非ぜひお願い致します!