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ガラクタ屋敷攻略大作戦!

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ガラクタ屋敷攻略大作戦!

リアクション

 Gによる騒動も一段落したところで、ようやく片付けが再会された。
 そして佐那具と依那子に対する整理術の講義も続く。
「俺も色々と改造とかしたりしてるんで分からなくも無いですけど……これはやりすぎですよ」
 そう言って鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)は家中に積もったガラクタを差した。
「とりあえず材料は一定の量までしかストックしない、必要になってからまた集めて使うという風にすれば多少はマシになるのではないでしょうか?」
「うーん」
 佐那具は悩む。
 彼がシャンバラ各地に行くのは冒険とは別に「材料集め」という目的もある。そうなると自然、各地への冒険の回数も減らさなければならない。
 そもそもニルヴァーナの開拓もこれからという時期である。そんな時に「材料を拾ってこない」ということができるのであろうか。
 そんな風に悩んでいると、
「この場合はイナコさんが鍵ですね」
「私……ですか?」
 急に名前を呼ばれ依那子はきょとん、とした表情で答える。
「はい。サナグさんみたいな人種は本当にモノを手放せない感じだと思うので、溜まってきたらイナコさんも積極的に捨てに行った方がいいですよ。本人の意思だとなかなか捨てられないですし、『その内使う』っていうのは絶対使わないですから……ですよね?」
「う……」
 佐那具は痛いところを突かれて言葉を失ってしまう。
 依那子も最初は「でも……」とパートナーの私物を勝手に処分することに戸惑いを覚えているようだったが、佐那具の蒐集癖を直す「鍵」と言われ覚悟を決めたのか「わかりました」と力強く答えるのであった。
「あー、すみません」
 と、唐突に佐那具は手を上げた。
「やっぱり、なんとか材料や部品を捨てずにすみませんかね?巨大機晶ロボットも作りたいので部品が……」
「おいおい、この期に及んでまだそんなこと言ってるのか新堂?」
 片づけが大分進んだので様子を見にきていた広明は、後ろから佐那具を小突いた。
「もとはといえば、ちゃんと整理してこなかったお前の責任だろうが。本来ならお前一人に片付けさせるところだったんだぞ」
「そ、そんなぁ……」
 情けない声をあげて新堂は頭を抱える。
「はぁ……せめて収納場所を大きくできればなぁ」
 そう呟いたところで、
「フハハハ!」
 唐突に盛大な笑い声があがったかと思うと庭に繋がる窓がすぱーん、と開かれた。
「新堂佐那具よ!お前の悩み、俺が解決してやろう!」
 そう自慢げに宣言するのはドクター・ハデス(どくたー・はです)
 彼もまた新堂のように色々と物を集めては研究の資材に使っているという、いわば「似た者同士」であった。
「発明品を作るためには、その部品が必要不可欠!何故、一般人にはそれが分からんのだ!」
「いやそれはいいんですが、置く場所がないからこうして片付けてるんじゃないですか?」
 貴仁の言葉にハデスは「フハハハ!」とまた大きく笑い声をあげる。
「甘いな!家に集めた部品を置く場所がないなら、家そのものを拡張すれば良いのだよ!」
「……どうやって?」
 依那子は首を傾げた。
 家を広げようにも、近所には他の人の住む家がたくさん並んでいるのだ。
 勝手に拡張などしようものなら、多大な迷惑になるうえに費用も掛かる。
 それについてもハデスは「フハハハ!」と笑い声で一蹴すると、
「なに、『横』がダメなら『縦』に広げればいいのだよ!そう、この家の地下に倉庫を作り、そこに部品を保管できるようにな!」
「はぁ?」
 それにはさすがに新堂も驚きを隠せなかった。
 地下を作ると言ってもそんな簡単にできるものではない。第一、地質調査や掘削費用などを考えれば到底……。
「心配御無用!掘削作業は私とパートナー達ですべて引き受ける!この通りな!」
 そう言ってハデスは庭を指し示した。
 そこには親衛隊員『エリート戦闘員』や『施工管理技師』、そして複数のアンデット達と共に並ぶスーツ姿の天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)と、『ティータイム』よろしく優雅に紅茶を楽しんでいるミネルヴァ・プロセルピナ(みねるう゛ぁ・ぷろせるぴな)の姿があった。
 すでに庭には大きな穴が開けられていた。
「い、いつの間に……」
「まぁ……」
 佐那具も依那子も、突然の事態に呆然とただ庭を見つめることしかできなかった。
「天樹十六凪。作業はどこまで済んだかね?」
「地下5m程度までは掘り起こしましたよ、ハデス君。しかし、そこから先は固い岩盤がありまして……」
「なるほど。ならミネルヴァ・プロセルピナの出番だな!」
 ハデスは優雅にくつろいでいるミネルヴァに目線を向ける。
 当のミネルヴァは「当然ですわ」とでも言うかのように悠然とした態度であった。
「すでに機晶爆弾の設置は完了しています。あとは、このスイッチを押すだけですわ」
 そう言ってミネルヴァはコードで繋がれたスイッチをハデスに渡す。
 ハデスは大仰に「おお!」と頷くと、
「ではさっそく爆破といこうではないか!フハハハハ!」
 受け取ったスイッチのボタンを押した。
 その瞬間、
「……そういえば、ちょっと火薬の量が多かったかもしれませんわね」
 轟音。大音響。
 巨大な爆発が穴の中から起こった。
 その爆風はハデスのみならず周囲のガラクタや家そのものも巻き込み、巨大なきのこ雲をつくる。
 こうしてヒラニプラの一角で大惨事が起き、ハデスは「フハハハハ!また会おうではないか!」と捨て台詞を残してオリュンポスの本部まで吹っ飛ばされたのであった。
「フハハ、はれ?」
 ……なんて事はなかった。
 轟音もなければ、火の気の欠片も感じられない。
 周囲では小鳥達が平和に鳴く声だけが響いていた。
「あら、不発かしら?」
「ミネルヴァ君が『破壊工作』を失敗するとは思えませんが……」
「ふむ……珍しいこともあるものだ……」
 そうしてハデス、十六凪、ミネルヴァの3人が庭に集まって話し合っていると、
「お前達か!こんな所で発破かけようとしているのは!」
 複数の切れたコードを手に、長曽禰広明は怒った様子でハデスたちに怒鳴りかけた。
「人が住む地域のど真ん中で、こんな大量に爆発物を仕掛けるんじゃねえ!説教してやるからこっちにこい!」
「ちょ耳は、耳は引っ張られたら痛いのであるー!!」
 こうしてハデス達は広明にお説教を受け、爆破オチは回避されたのであった。