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ニルミナスの拠点作り

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ニルミナスの拠点作り

リアクション


プロローグ

「さてと……んじゃ、あたしらはちょっと鍾乳洞の方に行ってくるよ」
 朝。ニルミナスの村。泊まる所がなく村の集会場にお世話になっていた熾月 瑛菜(しづき・えいな)は村長であるミナホにそう言う。
「拠点作りの話し合いは昼からだったよね?」
 瑛菜のパートナーであるアテナ・リネア(あてな・りねあ)がそう確認する。
「はい。ですのでそれまでに帰ってきてもらえば。……でも、どうしてまた鍾乳洞に?」
「だってアテナだけ鍾乳洞見てきてるのにあたしは見てないってなんか悔しいじゃん。結構綺麗な所なんだろ?」
 ミナホの質問に瑛菜はアテナの頭をぽんぽん鳴らしながらそう返す。
「んー綺麗は綺麗だけどモンスター多いし基本的に暗いし、観光って気分は難しいけどねー」
 頭を守りながらアテナはそう言う。
「ま、それはそれで」
 冒険気分を味わうのも悪くないと瑛菜は思う。
「……っと、そうだ。行く前に聞いておこうと思ってた事があったんだ」
「聞くって……私にですか?」
 ミナホは何だろうと首を傾げる。
「村興しの方向性……あんたはどう考えてるんだ?」
 まだ決まっていないというこれからの村の方向性。話し合いはまだでも村長としてミナホが考えを持っているはずだと瑛菜は思う。仮に持っていなかったら村長失格だとも。
「詳しくはまだですが、観光地として発展させていければと思っています。村と森との関係が村興しに活かせるんじゃないかと」
 漠然とではあるがそう考えているとミナホは言う。
「ふーん、観光地……ね」
「?……ダメ、でしょうか?」
 芳しくない瑛菜の反応にミナホはそう聞く。
「いや、悪くないと思うよ。何もないこの村が早く発展するには一番なんじゃないか」
 でも……と瑛菜は置いて言う。
「少し、もったいないと思ってね。何もないって事は何にでもなれることだから」
「何にでもなれる……ですか」
「ま、あたしはこの村が音楽に特化した村にならないかちょっと考えてただけだし、深く受け止める必要ないよ」
 流石にそれは自分の願望が入りすぎていると瑛菜は思う。
「……アテナさんはどう思いますか?」
「うーん……ミナホちゃんの早く村を大きくしたいって気持ちも分かるし、瑛菜おねーちゃんのもったいないって言うのも分かるから難しいよ」
 ただ、と置きアテナは続ける。
「ミナホちゃんはこの村が好きなんだよね? 観光地になった村じゃなくて、今のこの村が」
「それは……はい。たとえ何もないこの村でも好きです」
「それさえ忘れなければ、どんな方針に決めても大丈夫なんじゃないかなぁ」
 そう言ってふぅと息をつくアテナの頭を瑛菜はゆっくりと撫でる。
「ま、そのあたりは他の契約者や村人とゆっくり話し合うんだね。あたしらはもう言いたい事は言ったよ」
「……はい」
 考え込むようにしてミナホはそう返事をする。
「ま、考えすぎないことだね。……んじゃ行ってくる」
 そう笑みをこぼして瑛菜は、そしてアテナも集会場を出ていく。
「……私は本当はどうしたいんでしょうか」
 ミナホのつぶやきに答えるものはいなかった。