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【若社長奮闘記】動物とゆる族とギフトと好敵手、の巻

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【若社長奮闘記】動物とゆる族とギフトと好敵手、の巻

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★ぷろろ〜ぐっぽいもの★



 その話を聞いて彼らがすぐに思ったのは、絶対何か起きるだろ、という一言に尽きた。
「ジヴォートの若社長就任ですか。イキモさんも無茶をする……ある意味、プロパガンダ戦の基本ですね」
「ああ。しかし、こういってはなんだが、絶対に危機管理を理解していない」
「まったく、イキモのおっさんも結構大胆に動くよなぁ」
 呆れた口調の乃木坂 みと(のぎさか・みと)に続き、相沢 洋(あいざわ・ひろし)相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)もそう言った。のんびりと構えることは悪いことではないが、あの親子の場合はのんびり過ぎる。
「ジヴォート様が社長……それは大変そうですね。以上」
 淡々とエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)も言う。みとはそんなエリスをちらと見てから、何も言わずに洋へと顔を戻す。

「で、どうすんの?」
「洋孝、技術力の全てをつぎ込んでパワードスーツ運用型きぐるみを作ってもらう」
「了解。……えーっと調達すべきなのは着ぐるみだよね?それをベースにパワードスーツを内蔵させるわけだね? アーマード? うーわー……子供たちの正義を護る使者だね。名前は――イキモん君でいいか。となると」
 ブツブツ呟きながらどこかへと消えていく洋孝。着ぐるみを調達しに行くのだろう。さて、どんなものができあがるのだろうか。
 洋は頷いて、エリスに声をかける。
「エリスはそれで番組のマスコットキャラとしてジヴォートと共に行動。番組収録中のジヴォートを護衛」
「はい」
「私とみとは番組の観客として護衛する」
「分かりました」
 念のための護衛計画を練っていく。何もなければそのまま番組を楽しめばいいのだ。
 話合いをしながら、エリスの表情がいつもより少し和らいでいるようにも見え、

(色々と言いたいことはありますが、エリスもジヴォートのことを気になるみたいですしね。たまには恋の1つも応援しないと……本人には、そんなつもりはないかもしれないけど)



「社長就任おめでとう。スーツ姿もいけてるわよ。あ、それと……私こういう事もやっておりまして」
 ジヴォート・ノスキーダ(じぼーと・のすきーだ)のスーツ姿を褒めながら名刺を差し出しているのは、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。名刺にはシャンバラ・セキュリティー・システム(SSS)とある。
 実はルカルカ、社長という一面も持っているのだ。
「警備会社をなされてるのですか。それは心強いですね。私はそういうのに疎い、といつも周りから怒られてばかりですので」
 のほほんと笑いながら名刺を交換したイキモ・ノスキーダは、ボケっとしているジヴォートに名刺交換するように促した。
「あっ悪い。えっと名刺、名刺」
 しかし名刺交換などし慣れていないジヴォートはあちこちのポケットを探った後、秘書のプレジ・クオーレが指摘してようやく名刺入れを探しだした。差し出す手つきもぎこちない。
 じっとその様子を見ていたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が、呆れたように言う。
「もっと社長として様々なことを学んでいかなければいけないみたいだな」
「おー。ダリルがやる気だ」
「何、俺がするのか!? いつそうなった」
「そもそも、ダリルがイキモさんに『会社を買収してジヴォートに任せろ』なんて言ったせいでイキモさんがその気になったのが原因なんだから、責任持って面倒みないとね」
 こそこそ、と2人で話す。ダリルはいろいろと反論したいようだった。口を開き
「そうだな。じゃあ私がいろいろと教えてやろう。どうせ暇だからな」
 イキモの声に、口を閉じた。

 イキモはこう見えても、大企業(生活用品や食料品を扱う会社)の社長だ。暇なはずはないのだが。
「いえ実は部下たちから『あなたは何もしないでくれ。余計に仕事が増える』と言われてましてね。私の仕事は交渉の場に出席することと、皆にお茶を配ることぐらいでして……こう見えて私、お茶を入れるのは結構得意なんですよ」
 駄目だこいつ。はやくなんとか……ああ、もう手遅れか。

 とにかく、そんなイキモがジヴォートに社長教育……不安しかない。ルカルカがにやっと笑いながらダリルを見た。
「あー分かった分かった。俺で分かる部分は教えるから」
 ということで、ダリルは教育係に就任することになったのだった。

 話がひと段落したところで、プレジがスタジオの見取り図と関係者一覧(顔写真付き)の資料をルカルカや玖純 飛都(くすみ・ひさと)に渡す。
「こちらが見取り図で、こちらの束が関係者一覧になります。他にも業者が出入りする可能性もありますが」
「ああ」
 飛都が真剣に資料を眺める。というのも、飛都は以前起きた事件の後が気になり、ジヴォート周辺を調べていた。その際、今回の番組を妨害しようとしている者がいる、という噂を聞いたのだ。
 あくまで噂であり、確証はないが……この親子の今までを考えると、あながちただの噂とも思えず。そしてもしも何かがあったとしたら目覚めが悪いので、協力者の1人として名乗りを上げたのだった。
(さて。ドブーツとやらをとにかく抑えなくてはな)
 ざっと資料を眺めた後、かすかに目を細めてからジヴォートに提案する。
「番組の企画についてだけど」
「ん? 何か問題あるか?」
「ああ。動物の良さや現状をアピールするのはいいけど、これだけだと類似の番組の中に埋もれてしまわないか? それに、視聴者層が限られてきそうだな」
「む、そう、か?」
「ああ。そこで、意見の違う人と動物の現状や共存について討論して貰うコーナーを加えたらどうだろう? ゲストには話題性の点から、ジヴォートと関わりがあって、年や立場が似通っているが感性や意見が違うという人間がいいと思う」
「なら、ドブーツ様にお声をおかけするのはどうでしょうか」
「え? でもあいつ、動物苦手だし」
「苦手だからこそ、違った意見が聞けると思う」
 ジヴォートは悩んでいたが、飛都とプレジの言葉を受けて、頷いた。
「とりあえず誘ってはみる。あいつが良いって言ったらな」
 早速、ということでジヴォートは電話を手に取った。



 その頃、スタジオのあるビルに、笠置 生駒(かさぎ・いこま)ジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)シーニー・ポータートル(しーにー・ぽーたーとる)が到着した。
「早めに、とは思ったけどちょっと早すぎたみたいだね。どうしようかな」
「そうじゃなぁ」
 時間までどうするかと首をかしげた時、食欲をそそる香りが鼻を刺激した。
「そういえば食堂利用しても良いって言ってたっけ」
 お昼には少し早いが、先に済ませることにした。

 と言うところまでは良かったのだが、
「おしゃけ〜、むにゃむにゃ」
 例のごとく、シーニーが酔い潰れて眠ってしまった。
 生駒とジョージは呆れる顔すら見せずに椅子から立ち上がり、近くを通りかかった人に声をかけた。
「すみません。スタジオってどこに?」
「ああ、もしかして見学の……それなら」
 自然とシーニーを放置して、スタジオへと向かった。……いいのだろうか? いや、うん。きっとこれは彼らなりの絆で……ト無理やり納得させよう。

「あ、修理は得意だから任せてくださいね」
「ありがとうございます」
「わしにできることがあったら」
「喋った! 凄い賢いお猿さんですね。あ、出演してもらっても?」
「む、いいじゃろう」
 つぶらな瞳と美しい毛並みでお茶の間に癒しを提供してやろう。
 と、やる気満々のジョージを横目に、生駒は設備を見学していた。が、体調不良で来れなくなったスタッフの代わりに、修理や点検をすることになった。
「すいません。このカメラ、調子がおかしくて」
「えーっと……ちょっと待ってくださいねー」



「ふむ。動物番組か……面白そうだな。もしあちらでも放映される事になれば、ニルヴァーナで働く人々もその番組を見て癒されそうなものが出来上がれば良いのだが」
 広い屋敷を歩きながらブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)がそう言うと、隣を歩いていた黒崎 天音(くろさき・あまね)も頷きを返しつつ
「それにしても……どうやら彼は動物があまり得意じゃないみたいだねぇ。なんで動物番組なんてやる事になったんだろう。それにどうして苦手になったのかな? どう思う、みんな?」
 そう問いかける。すると、ポケットから顔を出していたゆるスターたちが、まるで『なんででちょう?』とでも言わんばかりに一斉に首をかしげた。なんとも愛らしい光景だ。
 が、先ほどゆるスターを見たドブーツ・ライキのひきつった顔は、心底動物が苦手だ、嫌いだと告げていて、天音もブルーズも首をかしげた。

 ここはドブーツの屋敷だ。
 今回、ドブーツも対抗して動物番組を作ると言うことで、ビーストテイマーとして雇われたのだった。その際ジヴォートの番組を妨害すると言う話を聞いて、密かにその情報を噂として流していた。

「ジヴォート君とのことも気になるし……ん、スピカ? どうかし」
 ゆるスターのスピカが何かに気づいたように顔を上げた。天音の問いかけが追われる前にポケットから飛び出て、どこかへと向かっていく。目を見張りつつも、その後を追いかける。
 スピカはある部屋の前で立ち止まった。そして天音を見上げる。この部屋に何かあるのか。

 静かに両開きの戸を開け、中へと入る。
「変わった様子はないが」
 来客用なのか。ベッドやクローゼットなどが置かれた普通の部屋。その中で天音は窓に置かれた写真立てに気づいた。倒れていたソレには埃一つなく、悪いなと思いつつも写真を見た。
 2人の子供が笑顔で仲良く肩を組んでいる。なんとなく面影があるので、ジヴォートとドブーツなのだろう。ドブーツは今よりももっと気弱そうな顔をしているが。
 何より気になるのは、2人の間に犬がいること。今のドブーツは動物が嫌いと聞いているが、そんな様子はなく、むしろ仲がよさそうだ。

「これは……」
「何かありそうだね」



 少し前の話。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!」
 そんな笑い声が静かな屋敷に響いた。さしものドブーツも、どうしたらいいんだ、という顔でハデスを見た。

「ドブーツ・ライキよ、お前の依頼は、我ら秘密結社オリュンポスが請け負った!
 大船に乗ったつもりで見ているがいい!
 ジヴォートとやらの番組は、我らが妨害してくれよう!」
 ちなみにその船、素材はなんですか? DOROとかじゃないですよね?

「ククク、そのかわり、ジヴォートの番組を潰した暁には、ドブーツの番組制作会社で、我ら秘密結社オリュンポスの特番をやってもらえないかね?!」
 あれ、秘密ってどういう意味でしたっけ。ちょっと辞書ひいてきます。

 一方的に告げたハデスは、満足げに笑い声をあげながら去っていった。……不安だ。

 その後、ジヴォートからの連絡が入り、ドブーツも番組に出演することになったのだが……番組撮影、無事に終わることができるのだろうか。