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紅き閃光の断末魔 ─後編─

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紅き閃光の断末魔 ─後編─

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第四章 凶器と占いと揺るぎなき正義


早川 透
「あん……?」

 早川は心外そうな面持ちを浮かべたものの、
 これまでずっと所長が犯人だと叫び続けていた彼の言動は、確かに怪しかった。
 それは他の契約者達や生き残りメンバーにとっても、同じように感じられていたようで。

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「うん。なんだかトマスが犯人だってことで、決着させたいように見えたわ。
 それだけで疑うのはどうかと思うけど……ちょっと怪しいというか」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「なぁ、この際だから正直に言っちまうけどよ。
 オレは最初っから衛兵の2人が怪しいと踏んでたんだ」

早川 透
「なっ、そんなわけねェだろ! 何を根拠に言ってやがる!?」

デュオ
「狼狽えるな……我々は無実なのだ。
 怪しまれたとて、すぐに切り返せばよいだけのこと」

早川 透
「デュ、デュオさん……。そうですね、慌てる必要はないですよね!」

デュオ
「フッ、だが歴戦の覇者である俺様にそこまで言い切ったのだ。
 当然……それだけの根拠があるんだろうな……?」

 なんだかものすごい貫禄を発しているデュオという男だが、
 自分が犯人ではないとアピールするためのブラフともとれる。
 シリウスは臆せずに自分の考えをぶつける。

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「確認してーことがあるだけで、犯人と決めてかかるわけじゃない。
 ただ、外部犯が大部屋で振るった凶器について、何となく察しがついてんだよ」

デュオ
「……どういうことだ?」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「室内を荒らさず、狙った相手だけを殺害可能な溶断武器……。
 これってどう考えても『光条兵器』だろ? 他に心当たりがない」

デュオ
「ククッ……確かにそうだな。
 仮に『レーザーブレード』などで代用するとしても、
 あんな多人数を殺して回れば、どこかしらに傷をつけてしまうものだ」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「あぁ……そして『光条兵器』を使えるのは剣の花嫁と契約した者だけだ。
 デュオ、あんたのパートナーに剣の花嫁がいるんじゃないか?」

デュオ
「それを肯定すれば、晴れて俺様が外部犯となり、
 協力者として早川が内部犯になるという寸法か?
 フッ、まぁ事件当時の立ち位置を加味するなら、悪くない推理だな」

 だが、と人差し指を立て、デュオは反撃に転じる。

デュオ
「俺様が否定すればどうなる? その真偽を確かめたいと思うだろう。
 しかし、生憎だが当事者以外が契約状態であるかを見破る術は、基本的に存在しない。
 貴様の推理が当たっていたとしても、確認する術がないわけだ……」

セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「わざとやってるのかしら。怪しんでくれとばかりの物言いね」

 副所長の死亡時刻を割り出した時のように特殊なケースならともかく、
 基本的に他者から確認ができないというのは、デュオの言う通りだ。
 ……確認できない要素で犯人を特定するのは難しい。

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「くそっ、『光条兵器』が凶器だったってのは間違いないと思うんだけどなぁ」

ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)
「致命傷と室内の状態、どちらも成立させる武器はそれしかないじゃろうな。
 当時わしは【フールパペット】などの魔法を使った連鎖殺人も疑っていたが……
 その可能性は無くなったのう。『光条兵器』を使えるのは契約者自身のみじゃ」

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「……凶器といえば、内部犯のほうの凶器は『ハンドガン』だったよねぇ。
 僕も今の話を聞いて、外部犯の使った凶器は『光条兵器』で間違いないと思ったし、
 これで事件に使われた凶器は全部割り出せたかなぁ?」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)
「間違いないと思われます。
 <ハンドガンの残骸>にあるように、本来無いはずの『ハンドガン』の残骸が、
 武器庫に残っていたのは事実ですからね」

トマス・クラーク
「『ハンドガン』の残骸ですって?
 爆発で武器庫の備品が駄目になってしまったのはわかりますが、
 もともと『ハンドガン』なんて武器は保管されていなかったはずですよ!」

デュオ
「フッ、歴戦の覇者である俺様からも証言してやろう。
 『ハンドガン』は間違いなく本来の武器庫には無かったはずだぞ。
 LH社にも研究所の備品の一覧ならば与えられているからな……」

草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)
<武器庫の備品リスト>ならば、わらわ達も確認させてもらったのだよ。
 もともと無かった物なら、犯人が持ち込んだと考えるのが妥当であろうな」

早川 透
「そうかわかったぞ! 逆に言えば、それを持ち込んだ奴が犯人ってことだな!」

レベッカ・チッコリーニ
「そう言ってるじゃない……アンタもしかして頭弱いの?」

早川 透
「なぁっぅ!?」

セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
「でもさ……凶器を持ち込めた人物が怪しいって話なら、
 衛兵の2人が一番怪しいってことになるわよね?
 彼らは仕事上、どんな武器をどれだけ持ち込んでも、誰にも不審に思われないわ」

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「そうね。2人は互いのアリバイを偽装する事も可能だし、
 デュオは技能的に外部犯側の犯行も可能だわ。
 となれば、副所長と所員達を分担して殺害する事もできるはずよ」

デュオ
「ほぉう、それはもっともな意見だ。
 歴戦の覇者である俺様であっても、付け入る隙がないな……」

早川 透
「デュ、デュオさん!? そんな事言ったら俺達が犯人に……!」

デュオ
「しかし、だ。貴様達にもわかっているだろう?
 俺様達が持ち込みやすい立場にいるのは事実だが、
 他の所員であっても、凶器を持ち込む事は可能だったはずだ」

アメリー・フラット
「わ、私達にもですかぁ……?
 出勤時に持ち物検査を受けてますし、難しいと思うんですけどぉ……」

草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)
「いや、その持ち物検査じゃが、あまりアテにできるものではなかったのだよ。
 <内部犯の凶器の出所>にあるように、バレないよう誤魔化して持ち込む事は、
 誰にでも可能だったようなのだ」

早川 透
「なるほどな。ようやく真相がわかったぜ……。
 映像が途絶えた時間帯やら何やらで、所長が犯人って線は無くなったんだよな?
 そして俺とデュオさんは犯人じゃない……つまり!
 犯人はアメリー・フラット、レベッカ・チッコリーニ、お前達だあぁ!!」

アメリー・フラット
「ええぇぇぇ〜〜!?」

 と、早川が暴論を吐いたかと思われたところで、
 今まで占いの儀式に勤しんでいた朱鷺が、再び口を開く。

東 朱鷺(あずま・とき)
「……!! たった今、占いの結果でも、そのように出ました!
 犯人はアメリーさんとレベッカさんで間違いないでしょう!
 それに、デュオさんは無実だとも出ています!」

早川 透
「決まりだな!」

アメリー・フラット
「ええぇぇぇ〜〜!?」

デュオ
「ククッ……今日の俺様は運が良いようだ」

東 朱鷺(あずま・とき)
「そもそも、研究員のお二人は怪しまれる運命にあったはずです。
 他の研究員は全員殺害されてしまったのに、何故あなた達だけが生き残れたのか。
 その理由は、あなた達が犯人だからと考えるのが自然ではありませんか?」

レベッカ・チッコリーニ
「はぁ……!? 占いに引き続き早川みたいな理論展開してんじゃないわよ!
 これは流石に怒ってもいいところよね……?」

アメリー・フラット
「レ、レベッカちゃん落ち着いて。
 私達だけが逃れたのは、偶然なんですよぅ……たまたま大部屋を離れていたから……」

東 朱鷺(あずま・とき)
「私の占いでは、それが必然であると出ました。
 あなた達は……事件発生のタイミングで、狙って大部屋を離れたのです!」

アメリー・フラット
「ええぇぇぇ〜〜!?」

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
「それは違うぞ!
 我が祖国日本には昔からこんな言葉があります……すなわち。
 『可愛いは正義!!』そしてアメリーさんは可愛い=正義=無実となるのであります!」

東 朱鷺(あずま・とき)
「なっ……私の占いに、そんな対抗手段で挑んでくるなんて!?」

 と、そこで突然アキラの首根っこを掴み、
 隅っこの方にズルズルと引きずっていく人物が現れた。ルシェイメアだ。
 そして2人が死角となる階段の向こう側へ消えた直後、

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
「ぎゃああああああぁ!!!」

 紅くないとはいえ迫真の断末魔が聞こえてきた。