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紅き閃光の断末魔 ─後編─

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紅き閃光の断末魔 ─後編─

リアクション

第五章 空白の5分間


セレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)
「えへへ……いつもの事ですから、みなさんは気にしないでくださいね」

 ルシェイメアにお仕置きされたアキラは、
 やがて見るに堪えないボロボロの姿で再登場した。
 セレスティアがとても慣れた動きで、すかさず治療に入る。

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
「ま、待ってくれ……一応、ちゃんとした根拠もある……。
 <アメリーのアリバイ>および<偉い人ルームの映像記録>を思い出してくれ。
 これらを参照するに、アメリーさんが事件当時偉い人ルームに籠もりっきりだったのは、
 疑いようがない事実だと思う……のであります……」

ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)
「ふん、最初からそれだけ言っておればよかったのじゃ」

 アメリーが偉い人ルームに籠もりっきりだったという事実……
 それは彼女自身の証言に加え、残されていた映像記録に裏付けされている。
 以上の点から考えて、アメリーが犯人という線は無さそうである。

東 朱鷺(あずま・とき)
「確かにそのようね……私の占いも完璧ではないわ。
 だいたい成功率は50%ってところかしら……」

早川 透
「ってことは、アメリー・フラットも犯人じゃない事が確定したのか。
 でもよぉ……50%の失敗分がアメリー・フラットだったっていうなら、
 残り50%の成功分はレベッカ・チッコリーニってことになるよなぁ!」

 暴論に次ぐ暴論!
 あれ、これこんな議論だったっけ? とツッコまずにはいられないような状況だ。
 当然そんなもので断定されては堪らないと、レベッカは反論する。

レベッカ・チッコリーニ
「いい加減にしなさいよ……占いなんかどうであっても全く関係ないわ!
 アンタ最初は所長のことを犯人に仕立てる計画だったようだけど、
 失敗したから私達研究員に狙いを変えたんでしょう?」

早川 透
「なっ……んなわけねーだろ! そもそも俺は犯人じゃねえ!」

デュオ
「ククッ……これまでの早川の立ち回りを見ていれば、そうとるのも無理はないな……」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)
「しかしですね、実は私もレベッカ様のアリバイには違和感を覚えていたのです。
 もちろん、これは占いで出たからではありませんよ」

レベッカ・チッコリーニ
「な、なによ? 変な暴論じゃなければ答えてあげるわ」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)
「レベッカ様は<レベッカのアリバイ>によると、
 夜食を食べ終えた後トイレに向かわれたそうですね。
 ですが<その後の動向>によれば、トイレから貴女が出てきたのは爆発の直後になります」

レベッカ・チッコリーニ
「……それで?」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)
<休憩室の映像記録>から、レベッカ様が夜食を食べ終えたのは22時00分。
 <爆音について>から、爆発があったのは22時10分。
 移動時間を加えたとしても、トイレに10分もかかるのは変ではないですか?」

 言われてみれば、長すぎるように感じられるかもしれない。
 しかも、トイレには防犯カメラも存在しない(あったらむしろ犯罪カメラになる)ので、
 証言を裏付けるものが無いのだ。

ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)
「……ついでに言わせてもらおうかの。
 <副所長の死亡時刻>により、副所長が殺された時間は22時05分で間違いない。
 また、同じく22時05分に全ての防犯カメラの映像が途絶えたわけじゃが……
 その瞬間、防犯カメラで居場所が確認できていないのは貴様だけなのじゃ」

レベッカ・チッコリーニ
「そんなの、早川とデュオだって確認できないはずじゃない!
 外にいたから除外だっていうの? あたしだって外のトイレにいたわよ。
 トイレに時間がかかった理由なんて……い、言わせる気なの?」

アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)
「おお!? レベッカ殿も案外かわいいところgh」

 アキラの掲げる正義の理論は、またしてもルシェイメアによって挫かれたようだ。
 ともかく、トイレに入っていた時間が長いからといって、
 それで犯行に及んでいた事を裏付けるのは難しそうだ。

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「……状況証拠しか残っていないのは仕方ないことだけど、
 そこから上手く裏付けを得ようとすると、難しいねぇ」

 再び議論がストップする。
 各々が考えを巡らせ、推理を重ねる時間である。

夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)
「むう。セキュリティ操作の件が無ければ、筋が通るのだが……」

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「何か気がかりがあるなら、みんなで考えればわかるかもしれないわ。
 遠慮せずに発言してみて?」

金元 ななな(かねもと・ななな)
「はい! 忘れられてるかもしれないけど、ちゃんと議論の記録もとってるよ。
 振り返りたくなったら遠慮なく言ってよね」

夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)
「レベッカ氏が夜食を食べ終えてから爆発までの、10分間の話に戻るんだが……
 やはりこの時間帯に動けたのはレベッカ氏、早川氏、デュオ氏の3人に絞られるよな。
 だが、先ほど俺がトマス氏に質問した事を思い出してみてくれ」

東 朱鷺(あずま・とき)
「……ごめんなさい。
 その時占いに夢中だったので、質問の内容を聞いていませんでした」

金元 ななな(かねもと・ななな)
「記録によると、セキュリティの操作は誰にでもできるのか?
 というゴローさんの質問に対して、所長さんが不可能だとの回答をしていましたね」

夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)
「……ゴローさん?」

ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)
「そうでしたね。
 確か、普段から管制室に出入りしている所長か副所長にしか、
 正確なセキュリティ操作は出来なかったって言ってたはずです〜」

東 朱鷺(あずま・とき)
「なるほど……となると妙ですね。
 犯行時刻に動く事ができた人物は、揃いもそろって管制室内には疎く、
 誰にもセキュリティを操作出来かった事になりませんか?」

早川 透
「チッ、そういやそうだった。危うく忘れるところだったぜ……。
 所長! やっぱりアンタが犯人だったんだな!!」

トマス・クラーク
「ち、違いますよ。どうしてそうなるんですか!?」

早川 透
「話を聞いてなかったようだな!
 正確にセキュリティを操作できんのは、所長と副所長だけなんだよ!
 だが、副所長は殺されてる……操作したのは所長しかありえねえってワケだ!!」

トマス・クラーク
「そ、そんな!」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「いや、待てよ……? セキュリティを操作する時間か……。
 それをあの空白に当てはめるとすれば……」

サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)
「シリウス、キミも気づいたかい?
 市街地で捜査していたボク達には、あの空白の5分間は印象深いものだったよね」

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「空白の5分間?
 それってもしかして、管制室のメンテナンス時刻22時00分から、
 <副所長の死亡時刻>22時05分までの差異のこと?」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「あぁ、そうだ。
 オレは少し前から、ずっとその時間に何があったのか考えてたんだけどよ……
 ようやくわかったぜ。ズバリ、その5分間でセキュリティの操作を済ませたんだ!」

クナイ・アヤシ(くない・あやし)
「お待ちください。先ほども論題になった通り、
 セキュリティの操作が可能なのは所長と副所長のみ……あっ!」

サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)
「どうやら気がついたようだね。
 副所長が殺害された時間は、22時05分で確定してる。
 逆に言えば、それ以前の時間帯ならば副所長にもセキュリティの操作が可能だったわけさ」

早川 透
「ま、待て、話が見えねぇ! どういうことだ!? 説明しろ誰か!」

デュオ
「フッ、なるほどな。
 要は副所長が、元は共犯者であった可能性を指摘しているのだろう?」

早川 透
「きょう……はん……? あっ、デュオさん! 説明ありがとうございます!」

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
「そっか! もともと内部犯は、副所長と誰かで、合わせて2人いたのね?」

アメリー・フラット
「えっとぉ……副所長も内部犯の1人だったんですか……?
 だとしたら、どうして殺されてしまったんでしょうか……」

シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)
「死人まで追求するのは心苦しいが……。
 例えば、副所長を信用しきれなかったもう1人の内部犯に、
 口封じのために殺害されちまった……みてーな可能性はあるな」

阿部 勇(あべ・いさむ)
「あるいは、セキュリティを切った後に自責の念に駆られたとかですかね。
 それで後の犯行の障害になると思われて、切り捨てられたって事もありえます」

セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
「信じたくないけれど、そう考えるのがしっくりくるわね……」

ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)
「要はセキュリティを解いて用済みと見られた副所長は、
 何らかの思惑で、もう1人の内部犯に裏切られ殺害されてしまった。
 ってゆーことですか?」

トマス・クラーク
「……辻褄は合いますが、副所長……」

セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
「でも考えてみれば、副所長がセキュリティを解いたっていうのは必然よね。
 レベッカ、早川、デュオの3人は知識が無くて、トマスは位置的に無理だった。
 となると正確なセキュリティ操作ができたのは、消去法で副所長だけになるもの」

レベッカ・チッコリーニ
「ちょっと待って。
 それなら副所長がセキュリティを解除した後、自殺したって可能性もあるんじゃない?」

早川 透
「……確かにそうだな。ミステリー物ではありがちな展開だぜ」

清泉 北都(いずみ・ほくと)
「自殺じゃあ、その後に『ハンドガン』が武器庫へ運ばれていた事が説明できない。
 そこは間違いなく、誰かが副所長を殺したはずだよぉ」

草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)
「そうであろうな。
 その時、内部犯は武器庫を開けるために副所長のIDを持ち出し、
 戻そうとした際に誤って血痕を付着させてしまったのだという話だったであろう」

金元 ななな(かねもと・ななな)
「うん。その会話は結構前に出てるよ」

 内部犯の動きが、少しずつ浮き彫りになってきた。
 この調子で考えをまとめていけば、辿り着くことも不可能じゃないかもしれない―――