校長室
【ですわ!】Sympathy~伝えたい気持ち~
リアクション公開中!
〜劇の後〜 劇が終わった後、ヴィちゃんやクルちゃん関連のグッズ販売は、順調に売り上げを伸ばしていた。 そのすぐ隣のテントでは、清泉 北都(いずみ・ほくと)が休む間もなくヴィちゃんの変装をして写真撮影を行っていた。 必要以上に体に触れる客にこめかみをひくつかせることもあった。でも、純粋に写真撮影を喜ぶ子供の姿を見たら、些細な問題は気にしないでおこうと思えた。 「はーい。笑って……ヴィちゃん、もっと心から楽しんでやってます、くらいの勢いで頼むよ」 カメラマンがよくわからないことをお願いしてきた。北都は笑顔が足りてないのだろうと考え、できるだけ笑って見せた。 「そうそう、いいね。じゃあ、とるぞー」 フラッシュが数回たかれ、写真が撮られた。 客が出て行くと、次の客が入ってくるまでの僅かな時間だけ緊張が解ける。 すると、カメラマンが飲み物を持ってきてくれた。 「ああ、どうも……ってソーマ?」 カメラをとっていたのはパートナーのソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)だった。 「いや、いい写真がとれた。まさに「僕は喜んでこんな格好をしてます」みたいな笑顔だったな。これは奴に見せるしかない」 「ちょ、や、やめてよぉ」 北都は『奴』が誰なのかわかり、慌てふためく。 ソーマを説得しようとするが、次の客が来てしまう。 仕方なく所定の位置に戻る北都。 「ああ、そうだ。胸は無いけど、それはそれで需要がありそうだな」 ソーマは意地悪な笑みを浮かべてカメラの前に戻っていった。 「ポミエラ怪我はない?」 博物館内で、着替えを終えた想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)がポミエラ・ヴェスティン(ぽみえら・う゛ぇすてぃん)の元へ駆けてくる。 心配そうにする夢悠にポミエラは笑顔を向けた。 「夢悠さんこそ、大丈夫ですか? 結構ボロボロだったみたいですけど……」 「ああ、それなら問題ないよ」 劇中で、夢悠は鞭で叩かれ服が破けたりした。けれど、大きな傷になるようなものはなかったことから、ソフィア・フローベール(そふぃあ・ふろーべーる)がなんだかんだ手加減して攻撃していたことがわかる。 あくまで演出のために勢いよく鞭を振って見せ、寸前で攻撃を逸らすなど工夫をしていたようだ。 そこへ、缶ジュースを取りに行っていた想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)が戻ってくる。 ポミエラは冷たいオレンジジュースを受け取ると、ふと思った事を尋ねた。 「瑠兎子さん、わたくしの騎士の演技どうでしたか?」 「う〜ん、そうね……」 瑠兎子は顎に手を当てて悩む仕草を見せると、指を6本にして「60点くらい」と答えた。 ポミエラは不服そうに頬を膨らませる。 「要修行ってとこね〜」 瑠兎子は楽しそうに笑っていた。 「あ、いたいた。お疲れ♪」 声をかけて回っていた遠野 歌菜(とおの・かな)と月崎 羽純(つきざき・はすみ)が挨拶にやってくる。 歌菜は劇を見ていたことを話し、すごく騎士らしかったと褒めた。 「ほ、ほら、わたくしちゃんと騎士に見えていましたわ!?」 プンプンむくれるポミエラを瑠兎子は適当に受け流す。 「そうだな。よく頑張ったな」 すると、羽純はそっと頭を撫で、ポミエラはそれに機嫌を良くしていた。 「ところでミッツを知らないか?」 「ミッツさんなら、あちらの方にいましたわ」 歌菜と羽純はミッツを探しに早々に立ち去ってしまった。 ゆっくりと缶に口をつけ、まったりとした時が流れていた。館内のあちこちで話声はするものの、外のお祭り騒ぎと比べれば些細なもので、物静かだった。 そこに、ドタバタと複数の足音が聞こえると、嫌でも視線を集めてしまう。 例にもれず振り返ったポミエラは、驚きの声をあげた。 「クラスの皆さん!?」 足音はポミエラのクラスメイトのものだった。彼らの後ろからやってきた源 鉄心(みなもと・てっしん)がここまで連れてきてくれたらしい。 クラスメイト達は各々がポミエラを称えた。気持ちはしっかりと伝わっていたようだった。 すると、鉄心はポミエラにプレゼントがあると、懐から四角いケースをとりだした。 「これは……DVD?」 鉄心はDVDには劇の録画がダビングしてあることを話した。 「あれだけ頑張ったんだ。一緒に捕まってた子供達にこれを見せて元気を分けてあげらたらいいなと思ってね」 「良い考えだと思いますわ!!」 ポミエラは鉄心の手を掴み、嬉しいそうに叫んだ。 本当は直接見せてあげたかったと話す鉄心。その中には子供達以外の相手もいるんだと話す。 「その人達にはポミエラが渡すといい。……お父さんやお母さんにも見せてあげたいんじゃないか?」 ポミエラはケースを受け取ると、暫し黙ってそれを見つめていた。 喜んでくれるだろうか……。 一瞬、脳裏によぎった不安をポミエラは首を振って振り切る。自分は迷わない。観てもらいたいと思うから渡そうと決めた。 ポミエラは鉄心に感謝を述べると、手を引くクラスメイトに連れられ街へと繰り出していく。 博物館の裏手。主に搬入口として使われるその場所で、ミッツは冷たいコンクリートの床に腰を下ろして空を見上げていた。 「こんな所で何をしてんだ?」 ようやくミッツを見つけた羽純が、挨拶代わりに尋ねてきた。 ミッツは目もくれず空を見つめたまま、ぼんやりと答える。 「別に……当分星を見れないのかと思ってな」 「星ならどこにいても見れるだろう」 羽純が傍に腰を下ろすと、その反対側にミッツを挟むように歌菜も床に座り込んだ。 歌菜は服の裏に隠していた袋を取り出す。 「はい。これ私と羽純くんで選んだの」 シールで閉じてあった袋をあけると、二人からの贈り物が入っていた。 「……手帳とはがき?」 「レターセットって言ってよ」 ミッツは取り出したそれらを、珍しそうに眺める。 「お前は色々危なっかしいからな。時々でいいから、元気で居る事を連絡しろよ」 羽純の思わぬ言葉に、ミッツは目を丸くした。そして、贈り物をじっくりと見つめ、恥ずかしそうに頭をかき、腕を組んで唸ってみては、長いため息を吐いて一連の動作をしめくくった。 「気が向いたらな……」 その一言で区切ると、ミッツはまた星を眺めはじめた。 後日、お祭り騒ぎの熱が冷めないうちに、ミッツは街を出た。 その手に握られた手帳の最後のページには、仲間達と撮った集合写真が密かに挟んであった。 (END)
▼担当マスター
虎@雪
▼マスターコメント
この度は『【ですわ!】Sympathy〜伝えたい気持ち〜』にご参加いただきありがとうございました。 リアクション製作を担当させていただきました、虎@雪(とらっとゆき)です。 ほぼ2か月ぶりのリアクションで色々テンパりながらやらせていただきました……。 楽しんでいただけたらなと思います。 いつものことながら素直な感想が聞ければ、嬉しいと思います。 機会がありましたら、またどうぞよろしくお願いいたします。 ありがとございました。