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【第五話】森の中の防衛戦

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【第五話】森の中の防衛戦

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 同時刻 迅竜 格納庫

 戦闘を終えたパイロット達。
 彼等の中には愛機の整備を格納庫で見守っている者もいる。
 彼等三人――ハーティオン、北都、シリウスもそうしたパイロット達だ。
 
 リラックスした様子で雑談に花を咲かせる彼等三人。
 そんな中、ハーティオンが声を上げた。
「よし! あのフォーメーションに名前をつけるぞ!」
 意気揚々と提案し、ハーティオンはしばらく考え込む。
 先程の戦いの中で編み出されたフォーメーション。
“フェルゼン”という強敵を見事に倒したあのフォーメーションに名前をつけようとしたのはいいものの。
 実際、ハーティオンは案に窮していた。
「ううむ……」

 ハーティオンが考え込んでいると、北都がふいに言う。
「確か、今回から投入された鎧竜の装甲の名前って『リブラリウム』だよね〜」
「うむ。確かにそうだが」
 考え込むのを止めて答えるハーティオン。
 答えながら頷いているせいで、しゃべりながら首を小刻みに動かしている。
 
「で、合図を出したりして要になってた人の名前がシリウス――」
「それも確かにそうだ」
 再び頷くハーティオン。
「へ? オレ?」
 一方のシリウスは突然自分が話題の渦中になって困惑顔だ。
 
「なら、それをきっかけに着想して……星に関する名前から考えてみるっていうのはどうかな?」
「それは名案かもしれん。他にこれといって案もないしな……言い出しておきながらすまない」
 申し訳なさそうに顔を伏せるハーティオン。
 そんな彼に向け、北都は微笑みながら言う。
「いいっていって。じゃ、それで考えてみる?」
「うむ。頼もう! そうだな――やはり私達は迅竜という旗の下に集った戦士達だ。ならば、『竜』という言葉を入れたいと思う!」
 熱く語るハーティオン。
 そこで彼ははたと気付く。
「そういえば……『星』と『竜』、その両方に関連する名前はあっただろうか……?」
 問いかけるハーティオンに頷く北都。
 
「あるよ――『りゅう座』っていう星座が。なら、『ドラコ』だね。フォーメーション:ドラコ。いいんじゃない?」
 少し考えて提案する北都。
 そこでシリウスも言った。
「おいおい、オレも混ぜろよ。それにな、『竜』だけだったら禽竜とかだってそうだろ。やっぱし、速そうな言葉を――」
「なら、ファストドラコ。フォーメーション:ファストドラコ。それでどう?」
 北都が言うと、シリウスとハーティオンが同時に頷く。
「いいじゃねえか」
「なるほど。まさに『迅竜』だな。実に素晴らしいネーミングセンスだ!」
 
 三人が話していると、そこに真一郎が通りかかる。
「随分と楽しそうだな」
 真一郎からかけられた声に振り返る三人。
 三人から話を聞き、真一郎も小さく笑みを浮かべる。
「ふむ。確かに良い名前だな」
 頷いてみせる真一郎。
 その時、ふとシリウスが何かに気付いたように言う。
「そういや、迅竜のイコン部隊ってまだ隊長を正式に決めてなかったよな?」
 前置きし、シリウスは北都にハーティオン、そして真一郎を順繰りに見回していく。
「オレ達って迅竜のイコン部隊として動いてるけど、やっぱり特定の隊長とかっていた方がいいよな?」
 シリウスがそう問いかけると、真っ先に頷いたのは真一郎だ。
「シリウス達の学園の流儀ではどうとは言い切れないが……少なくとも、俺達教導団の流儀――軍事としてははっきりした指揮系統があることは重要だ。とはいえ、迅竜という戦艦の特性上、その流儀をシリウス達に押し付けるわけにもいかない。隊長の件に関してどうするかは、近いうちに艦長に確認を取ってみることにしよう」
「おう。頼むぜ。ってか、さ――」
 真一郎に頷き返しながら、シリウスはまたも何かに気付いた様子だ。
「――もし、特定の隊長が決まるとしたら、その隊長のコールサインってどうなるんだろうな?」
 しばらく四人の間に沈黙が訪れる。
 ややあってその沈黙を破ったのはハーティオンだった。
「ならばあのフォーメーションと同じく、迅竜――即ち、『ドラコ』の名がつくのだろう」
 続いて北都も言う。
「ってことは、隊長――リーダーは『ドラコ1』になるんだね。まあ、誰がそれになるかはまだわからないけどね」
 
 言葉を交わすパイロット達。
 束の間に訪れた安息の時間は静かに、そして、穏やかに過ぎていく。