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理不尽世界のキリングタイム ―トラブルシューティング―

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理不尽世界のキリングタイム ―トラブルシューティング―

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第三章 ――こちら容疑者。只今より潜入を始める。

――何度か死にながら、容疑者達は唯一の出入り口を通過した。その犠牲は決して軽くはない。
 しかし今更もう引き返す事も出来ない。ここからはもう進むしかない。
 だが、出入り口はその名の通り始まりの場所。ここからが本番、始まりなのだ。
 容疑者達は各々、なななに教わった施設構造を頼りに目当ての場所へと移動するのであった。

――休憩室にて。

 研究所内の憩いの場として用意されている休憩室。今、この場では研究所内にいる兵士達がその疲れを癒している……はずだった。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ! マンホールに入るんじゃなぁぁぁぁぁい!」
「おっおい! 一体何があったんだ!?」
「わからん! いきなりこいつが――」
「ああ! バスタブが! バスタブが! それは絵の具じゃねぇぇぇぇ!」
「コイツもかよ!?」


 何やら、何人かが中で暴れているようであった。
「おお! 成功してる様だぞラブ!」
 休憩室の外から、中を覗き込んでいたコア(1/2)が言うと、ラブ(2/2)が大いに胸を張る。
「ふふふーん! このラブ様の『ドアの隙間から【人魚の唄】を歌って混乱させちゃえ、作戦』が失敗するわけがないわよ!」
 ネーミングセンスが最悪というか、まんまであった。
「しかし、何故【人魚の唄】でマンホールとかバスタブとか絵の具とか言っているのだろうか?」
「さあ、その辺はあたしにもわからないわ」
 コアとラブが首を傾げる。これでわかる人、そんないないと思う。
「ん? なに?」
 何やらラブの目に、パールビート(3/4)が訴える身ぶりを見せているのに気付いた。よく見るとメモを差し出している。それには『ここ、腹ごしらえできるものある?』と書いてあった。
「んー、あるんじゃない?」
 ラブがそう言うと、パールビートは嬉しそうに身を捩り、休憩室に入ろうとする。
「よーし! それじゃハーティオンも行ってこーい!」
「了解した! とうッ!」
 コアが、扉をぶち破らん勢いで休憩室に乱入した。その横で、パールビートも這って入ってくる。
「そこまでだテロリスト共よ! この『契約者』であることを隠した我々が来たからにはもう逃げられんぞ! 大人しく投降するのだ!」
 コア、それ隠してない。
「ちょ、また何か変なのが来たぞ!」
「ってか今コイツ自分を『契約者』って……ん? 何か変な音が……」
「な、何だ……何で、震えが止まらないんだ……!?」
 突如乱入したコアに驚いた兵士達であったが、何処からか聞こえてくる音を耳にすると、顔面を蒼白させガクガクと身体を震わせる。それは恐怖を感じた者の姿であった。
「ふっふっふ、効果テキメンみたいね」
 コアの後ろで、ラブがドヤ顔を決める。
「ラブ、一体何をしたのだ?」
「ふっ、駄目押しに【恐れの歌】を歌ったまでよ。このラブちゃん、容赦はしないのよ。こんな場所で死んでたまるかっての……さぁいけぇーいポンコツ! まずはここを制圧してしまいなさい!」
「承知!」
 そう言ってコアが兵士に向き直った。が、

「「「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ! 人の形した奴らだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」

兵士達の一斉掃射を浴び、あっというまにコアとラブは蜂の巣にされた。
 恐怖に染まった者は時として思いもよらない行動を取る。次のコアとラブは学んでいるでしょう。

――ちなみにその後、恐怖から半狂乱となった兵士達はお互いを撃ち合い、あっという間に全滅する事態にまで陥っていた。
 その際、パールビートもしっかりと巻き添えになったのであった。その内その空腹は満たせるでしょう。

・残機変動リスト
パールビート・ライノセラス(2/4)

コア・ハーティオン(0/2)
ラブ・リトル(1/2)



     * * *


――研究室にて。

「フハハハ! 我がラボにようこそ、容疑者諸君!」
 ハデス(3/4)がヘスティア(3/4)を従え、我が物顔で訪れた容疑者達を出迎えた。彼らは自分達も容疑者だという事を忘れているのではないか、少し不安になる。
「しかし我々は諸君をラボへと招待した覚えはない!」
 そう言うと、研究室にいた数多くの他の研究員たちが『おめーもだよ』と胡散臭い物を見る目でチラリとハデスを見るが、当の本人は気付いちゃいない。
「悪しき契約者達よ! 貴様らの命もここまでだ! 我がラボで死ぬことを誇りに思うがいい! ゆけぇいヘスティア!」
「は、はいっ! ご主人様じゃなくてハデス博士! このヘスティア! 完璧に悪しき契約者達を排除して見せましょう!」
 そう言うとヘスティアが【機晶魔銃マレフィクス】を構え、発射の意志を見せる。
「さあ契約者の皆様、お覚「ZapZapZap」ごぉッ!?」
が、いつの間にか後ろを取っていた吹雪(2/2)に後頭部を偶々置いてあった鉄パイプで一撃。その拍子に銃口はハデスに向けられ、
「え――あふっ!?」
哀れ餌食となった。ちなみにヘスティアは鉄パイプで滅多打ちにされていた。
 血染めの鉄パイプと返り血を浴びながら満足げな吹雪の足元で、ヘスティアだった物が消える。きっと次の彼らもこんな感じだろう。
「……一体なんだったのかしら、アレ」
「解るわけがないだろ」
 一連の茶番を見て、エリス(2/3)とセリス(2/3)がげんなりとした表情で呟く。
「まあいいわ。邪魔は消えたし、目的は果たせそうね」
「目的? 何をするつもりだ?」
「見てなさい。悪いようにはしないわ……はいはい、みんなちゅーもーく!」
 エリスがそう言うと、研究員達が『また何か始まるのか』とうんざりしたような視線を向ける。それにしてもこの研究者達、死者が出ているというのに全く動じる気配がない。
「こほん、さて……こういう考え方、知ってる?」
 視線を確認すると、エリスは一度咳払いをし、口を開いた。

「立ち上がれ労働者よ! 我々は共産主義の名の下に平等である! 富を! 権利を! 愛を! 平和を! 全てを! 民は皆平等に与えられなくてはならない! 労働者諸君は虐げられている! 何故か!? 抑圧されし労働者諸君、今こそ団結せよ! 不当な拘束労働により搾取される現状を打倒せよ! 我々は、革命的人民解放戦線である! おおプロレタリアート! 団結せよ! 団結せよ! 愛と正義と平等の名の下に! 人民の敵は粛清せよ! 今こそ革命の時であるッ! 共産主義的政治宣伝(プロパガンダ)発動ッ!」

 エリスが高らかに宣言した。
 一応プロパガンダは正式には『ある特定の思想や意識などへ誘導する意図を持った宣伝行為』という意味で、必ずしも共産主義が絡んでいるわけではない。
 だが、このプロパガンダは研究員達の心に何か響く物があったらしい。
「……嘘だろおい」
 セリスが目の前の光景に驚愕する。
 研究員達の口々から『団結せよ!』『平等を勝ち取れ!』といったシュプレヒコールの嵐が巻き起こる。
「ふっ、革命的魔法少女レッドスター☆えりりんの手に掛かればこんなもんよ!」
「どんだけチートなんだよそれ……」
 セリスが溢したくなるのも無理はない。実際結構なチートらしいが。
「行くぞ野郎共! たった今完成した新兵器を以て勝利を勝ち取るんだ!」
 研究員の一人が叫ぶと、全員が呼応したように吼える。
「「……新兵器?」」
 エリスとセリスが首を傾げた。
「その辺りは我らが説明しよう!」
 すると、今までどこにいたのやらマネキ(2/3)とマイキー(2/3)がホワイトボードを持ってくる。
「お前ら何処居たんだよ」
「ふっ、我らは今まで敵を欺く為に研究員達と研究をしていたのだよ。主にアワビを使ってな。で、だ。あーだこーだ色々やってアワビを融合したりとか何かあって、その結果新兵器が完成したわけなのだよ」
「色々端折ったけど新兵器の完成だね! 名前は今日から【愛・散惨】と名付けるよっ! 愛に満ち溢れた素晴らしい平気だよ! ポウッ!」
「碌な事はしてないのはよくわかった……お前ら、残機とか全く考えてないな?」
 セリスがげんなりした表情で言う。
「……なあ、聞きたいんだが、あれの威力はどのくらいだ?」
「ふっふっふ、聞いて驚け! 計算ではこの研究所を爆破できるレベルだ!
「塵1つ残さないで吹き飛ばすんだよ! 愛の威力は絶大さ! アウッ!」
「「んな危険物作ってるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」
 エリスとセリスが叫んだ瞬間だった。
「あ」
 マネキとマイキーによって作られた新兵器を、うっかりと研究員が落としてしまった。

――結果、研究室は爆発に包まれた。

 その爆発に包まれ、エリス、セリス、マネキ、マイキー、吹雪、そして何名かの研究員は一瞬にして蒸発した。
 ちなみに想像以上に頑丈に作られていた研究室内で爆発は収められ、研究員の被害は微少で済み、更に研究所に影響は一切なかった。次はその辺りうまく計算してくれるでしょう。

・残機変動リスト
藤林 エリス(1/3)

セリス・ファーランド(1/3)
マネキ・ング(1/3)
マイキー・ウォーリー(1/3)

ドクター・ハデス(2/4)
ヘスティア・ウルカヌス(2/4)

葛城 吹雪(1/2)