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理不尽世界のキリングタイム ―トラブルシューティング―

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理不尽世界のキリングタイム ―トラブルシューティング―

リアクション

――続いて、通路3にて。

「これはまた……」
「見事なまでの清掃ロボ、っすねぇ……」
 昌毅(3/3)と明志(2/3)が通路を見て呟く。
 通路は塵1つない綺麗な物で、そんな通路を巡回するように歩く1体のロボットが居た。
「……清掃用っていう割には殺る気満々なのが露骨だなおい」
 恭也(2/2)が呟く。
 ロボットは人の形をしていた。モヒカンヘアーで片手に火炎放射器、片手に何やら大型のレーザー銃の様な物を携え、道を歩く。その姿は獲物を捜し歩くハンターの様であった。
「ふむ、清掃用ロボというからリリはてっきり某ル●バの様な物だと思っていたのだよ」
 当てが外れ、どうしたものかと困ったようにリリ(2/3)が顎に手を当てる。
「おおおおおおちおちおちつつつつつけ……まままだまだだまだまだあわあわわわてるぶぉッ!?」
「黙れ」
 完全に動揺しきってるシン(2/2)を九条(2/2)の鉄拳が襲う。
「な、なんばするんですかあんたは!?」
「何を動揺している。ガタガタ抜かすくらいなら足を動かせ」
 鬼教官ばりに奮い立たせようとする九条に、シンは首をブンブンと横に振る。
「いやあれは無理だろ!? 完全に殺る気満々じゃねぇか! 出たら消毒される! 間違いなく言える! 炭酸飲んだらゲップを出ずぶぇッ!?」
「ガタガタ抜かすなと言ったろうが! 死ぬと決まったわけでないだろうが! 股についているそれは飾りか!?」
 シンをぶん殴り、その胸ぐらを掴む九条。何とも漢らしい姿である。
「そ、そうだよね? 見かけ倒しって事もあるかもしれないし、案外通っても大丈夫かもよ?」
「いや、嫌な予感しかしないんだが」
「同じく。今までの事を踏まえると碌でもない事になる確率は100%に近い」
 美羽(3/3)が明るく振る舞うが、その隣で甚五郎(3/5)と小暮(2/4)がげんなりした表情で言う。
「まあ見た目的にはこのまま通ったら那由他達がゴミと判断されてしまいそうなのだよ。というわけで、ちょっと試してみるのだよ。ちょっと来るのだよ、カスケード」
 那由他(3/3)がカスケード(3/3)を呼び寄せる。
「ん? なんじゃいぃッ!?」
 そして「えいっ」と突き飛ばす。突然の事に、体勢を崩したカスケードは廊下に足を踏み入れ、
『汚物は消毒だぁぁぁぁぁッ!』
直後、ロボットの火炎放射器とレーザーを交互に浴び、塵1つ残らず消滅した。
「あー、こりゃ駄目なやつだわ」
 ラブ(1/2)が言うと、他の容疑者達も頷く。
「ふむ、これは歩くと埃が立つから、というからなのだろうか。ならば足を着かなければいいのだな? 仕方ない、【フレイムブースター】!」
 そう言うと、コア(0/2)の背中に装着されたブースターが火を噴き、身体が浮き出す。
「お、ハーティオンナイスアイディア! あたしも背中に乗っていくから乗せなさい! いざとなったら盾になるのよ!」
 ラブがそう言ってコアの背中に飛び乗る。最後酷い事言ってる気がするけど、気のせいじゃないんだろうなぁ。けどコアは「承知した!」とサムズアップしているから、多分いいのだろう、本人的には。
「では、行くぞッ!」
 そう言うと、コアが浮いた状態で廊下へと侵入した――瞬間、大きなベルの音が鳴り響く。非常ベルの様であった。
 そして直後、天井のスプリンクラーから大量の水がコアに浴びせられる。
「な――ぬぉぉぉぉぉッ!?」
 錆びつき一気に失速し、コアの身体は地面に落下する。
「な、なにやってんのこのポンコツぅぅぅぅぅ!?」
『汚物は消毒だぁぁぁぁぁッ!』
 そして哀れコアとラブはロボットの火炎放射とレーザーの餌食になる。錆すら残らず、2人は消滅した。
 ちなみにコアはこれで残機を使い果たした。最後は錆びる、というお約束で締めてくれた。来世にも期待したいものである。
「んー、ロボットだからショートするかと思ったけど、全く問題ないみたいっすね」
 スプリンクラーの放水が収まり、尚ピンピンしているロボットを見て明志が【煙草的なモノ】を吸い、煙を吐く。
「何あれおまえがやったのか?」
 恭也に問われると、「そうっす」と明志が頷く。
「ロボットって言うからには水に弱いと思いましてね。こいつで火災報知機にちょっと働いてもらったんですが、無駄でしたねー」
「そうかそうか。所でおまえは今から入り口と同じ理由で処刑されるわけだが、何か遺言はあるか?」
 そう言って恭也が銃口を突きつける。煙を燻らせ、明志は言った。
「吸いたい欲求が我慢できなかった。反省はしてない」
 それだけ言うと、明志は蜂の巣となった。次の彼はうまくやってくれるんじゃないかと思う、多分。
「も、もう駄目だぁ……おしまいだぁ……」
 次々と葬られる仲間達に、シンが蹲り泣き言を漏らしだす。1名ばかし仲間に処刑されたのだが、そんなことはどうでもいい。重要な事じゃない。
「いい加減にしないかぁッ!」
「おぶッ!?」
 女々しく泣き言ばかり呟くシンの胸ぐらを掴むと、九条はボディに一発膝を叩き込む。
「まだ蹲って女々しく泣き言ばかり言うつもりか!?」
「いや……こ、この場合膝は無いだろ……」
「言い訳は聞きたくない! メソメソいじけている暇があるなら立て! 立って戦え! そして私の礎となれ! いいかこれから貴様に任務を与える! あの廊下に立って私がロボの死角に入るまで囮となれ! あのロボはこの先重要な盾となるだろう! 失うわけにはいかんのだ! なに、死ぬ前に治療はしてやる! 失敗したところで死ぬだけだ! 何を恐れる事がある!? 文句は無いな!?」
 普通ならば「文句しかないわ!」というようなセリフであったが、この異常な状況に完全に呑まれたらしきシンは「いや、でも……」と強く否定もできない、煮え切らない態度しか見せなかった。
 それに九条はイラっとしたようであった。
「えぇいとっとと逝ってこぉい!」
「のぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 シンの胸ぐらを掴むと、放り投げる様に廊下へ投げ飛ばす。見事、ロボットの前へとシンは着地する。
「よし! そのまま時間を稼――」
『汚物は消毒だぁぁぁぁぁッ!』
 時間を稼ぐ暇も無く、シンが散った。
「くっ! この役立たずがぁッ!」
 思わず九条が吼える。その声に反応し、今度はロボットが吼えた。
『汚物は消毒だぁぁぁぁぁッ!』
 あっという間に九条も散ったのであった。

「さて、流石にまずいのだよこの状況は」
 次々と残機が減っていく状況に、リリが額に皺を寄せる。
「何か策はあるのか?」
 ララ(3/3)の言葉に、難しい表情のままリリは頷く。
「無くはないのだよ。アレは見た所、発見した者を襲っているようなのだ」
「だが死角を突くのは簡単ではないぞ?」
「死角は背後だけではないのだよ、ララ?」
「ほう……どうやら那由他と同じ考えを持つ者が居るのだよ」
 リリの言葉に、那由他が反応する。2人の視線はロボットの頭上にあった。
「成程、上か」
「その通りなのだ」
「その通りなのだよ」
 リリと那由他が頷く。ロボットは人型。人と同様の姿形をしている。例えば目。目も同じく、顔の前についていた。
「試す価値はありそうだな」
 ララが呟いた。丁度、ロボットは背を向けていた。
 リリとララ、那由他が顔を見合わせて頷く。そして、
「「「はぁッ!」」」
一斉に跳んだ。
 
――そして届かず、地面に着地した。

『汚物は消毒だぁぁぁぁぁッ!』

 そして当然の如く、同時に返り討ちに遭った。
 人の上に立つことは、相当難しい事である。次回の彼女達は学んでいる事でしょう。

「流石にまずいねーこれは。小暮バリアーでも通れるかどうか」
 美羽が腕を組んで唸る。
「あの、人を盾にすること前提なの止めてくれないか?」
 小暮が半泣きで言う。
「しかし不味い事には変わりはない……よし、次はわしらが行こう」
 甚五郎がオリバー(3/5)と一歩前に踏み出す。
「甚五郎よ、何か策はあるのか?」
 オリバーが問うが、甚五郎は首を横に振る。
「最初はゴミでも目の前に捨てて、その隙に通ろうかとも思ったが……今までの様子じゃ無理だろうな。だが、犬死するつもりはない」
 そう言って甚五郎はちらりと、武器庫で手に入れたグレネードを見せるとオリバーがにやりと笑った。
「ああ、そういう事か」
「わかったようだな……では行くぞ!」
 そう言うと、甚五郎とオリバーが廊下に足を踏み入れる。
『汚物は消毒だぁぁぁぁぁッ!』
 即座にロボットが2人に反応し、火炎放射とレーザーが放たれる。
 2人は避けられず、あっという間に消滅する。
 そして、ロボットの足元にはグレネードが転がっていた。既にピンは抜いてあった。
 直後、グレネードは爆発。爆風がロボットを包み込む。
「やったか!?」
 小暮が死亡フラグを立てる。
「いや、まだだよ! でも効いてる!」
 美羽の言う通り、爆風に巻き込まれたロボットは、所々ダメージを受けているように損傷が見られた。
「なら、これを食らえぇ!」
 美羽がアサルトライフルの銃口を向けると、引き金を絞る。
 放たれる弾丸は、ロボットに穴を穿つ。着弾する度新しく穴を増やし、やがて弾倉1つ分の穴が開いた頃、ロボットは機能を停止した。
「やったよ! あいつ倒れた!」
「よし、今の内だ!」
 小暮の合図と共に、皆が走り出す。
 こうして犠牲を出しながらも、通路を渡り切ったのであった。

・残機変動リスト
リリ・スノーウォーカー(1/3)
ララ・サーズデイ(2/3)

九条 ジェライザ・ローズ(1/2)
シン・クーリッジ(1/2)

カスケード・チェルノボグ(2/3)
阿頼耶 那由他(2/3)

コア・ハーティオン GAMEOVER
ラブ・リトル(0/2)

夜刀神 甚五郎(2/5)
オリバー・ホフマン(2/5)

遠部 明志(1/3)