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リアクション
「結局、なんだったの?」
桐生が遠部へ問いかけると「お家騒動?」という答えが返ってきて、あながち間違ってないなとツェツィは苦笑いしてフェイをそっと抱き上げた。
「フェイ、もういなくならないでよ?」
「みぃ」
「ちょっと! 何いい話でしたね、みたいな感じで終わらせようとしてんのよ!」
息を切らしながらブリジットがかつかつとイングリットへと詰め寄る。
「もう一つの幽霊事件の犯人、見つかりましたよ」
ひょこりと後ろからマリカが顔を出して皆に説明する。
「ほら、キビキビ歩く!」
マイトによって連行されているのは、紛れもない人間。
彼らは一年ほど前にこの街で仕事をしていた窃盗団だ。
ここ最近の幽霊騒ぎと、雨の時季特有の霧を利用して盗みを働いていたというわけだ。
しかも物だけでなく、猫までも盗んだという。
彼らがアジトにしていた街の外の森の中にひっそりと立てた小屋の一室には、何十種類もの猫がおり、そのどれもが血統書付だったり、たずね猫として出回っているものの特長と一致しているものだった。
血統書付の猫も盗んでしまえば元手がかからず高く売れる。
そんな安易な考えで猫を大量に誘拐(?)したせいで、大量のエサ代もかかったというわけだ。
テレサたちが「もしも猫も盗まれたのだとしたら」という発想に辿り着かなければこのまま盗品と一緒に猫たちも売りさばかれていたかもしれない。
「何はともあれ、事件は解決したわけですし、ハッピーエンドでいいじゃない?」
「よくないわよ! 私の華麗な名推理をすっ飛ばすなんていい度胸してますわ!」
ツェツィの屋敷に戻ってきてもまだまだ熱が冷めないブリジットを舞は何とか落ち着かせようとしている。
「それでさぁ、びっくりしたわよ。もういっぱいいるんですもの!」
「猫……いっぱいだった……」
「もー、猫祭りだよ! フェスティバルだよ! もっふもふだったもん。ね、セレアナ!」
「ん、そうね……もふもふ、してたわね」
猫たちの独自の情報網なのか、猫たちは窃盗団によって連れて行かれているという情報を察知したらしく、自分たちで集まり、隠れていたのだった。しかも驚くことにツェツィの屋敷からそう離れておらず、街へと向かう途中にある空き家の中に隠れていたのだった。
ルカたちが見つけたときはかなりの数の猫が隠れており、スノゥたちに訳してもらったところ、フェイが持っていた鈴のおかげで人間から隠れることができたという。その鈴を確かめようにももうなくなってしまったので確かめようがないが、大事なものを奪おうとするものから守ろうとするような力が働いたのではないかと霧島は考察する。
寄り集まったもふもふたちに何人も心が射抜かれてしまったようだが、それはまた別のお話。
「結局リア充の手伝いだったか……」
「まぁいいじゃないか。無事に解決したんだし」
「やっぱリア充は言うことに余裕があるなぁー。俺もリア充になりたいっすわ」
幽霊の騒動を解決して、どっと疲れを感じながら遠部と七尾、アキラはグラスを傾けている。
「花の色が変わったのは何でだったのかな?」
「結局それだけは誰も分からなかったんだよね」
「うわー、すっごく気になる!」
「そういえば、本の謎は何だったの?」
「確か、『姫物語』『わたしとあなた』『楽しい料理』『騎士の約束』だったよね」
「絵本に、詩集、料理と小説だっけ」
本の話題が耳に入り、ブリジットは得意気に口を開く。
「ヒントは頭文字ですわよ。姫、私、料理、騎士。これらを英語にして頭文字を取ると――」
「P・I・C・K。つまり、PickUp。迎えにいくって意味、だったかしら?」
私が教えてあげたんじゃないの! と再び始まるブリジット。しかし、イングリットとのやり取りは今までよりもどこか楽しそうに見える。
「本当にそれだけの意味なのかな」
メシエがぼそりと呟いた言葉に、ハンナは驚いた様子でメシエを見つめたが、すぐに笑ってこっそりと教えてくれたのだ。
その四冊はペンネームこそ違うが、二人の名前を模して作ったマークがこっそりと本の裏側に描かれていることから作者は全て同じ人物だということがわかる。それらの内容はは全て誰かのために行うものであり、そして今は亡き妹との思い出を綴ったものだと分かった。
「つまり、このメッセージを残したのは――」
メシエは何かに気付いたように顔を上げると、ハンナはシーっと唇に指を当てて「秘密ですよ」と呟いたのだ。
「やれやれ、粋なことをするおばあさまをお持ちなようだ……」
事件解決パーティは夜遅くまで続き、屋敷には楽しそうな声が響いていたという。
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