天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【祓魔師】災厄をもたらす魂の開放・序章

リアクション公開中!

【祓魔師】災厄をもたらす魂の開放・序章

リアクション


第2章 無策で特攻は危ないのですよぉ!作戦会議 Story2

 アニスはリオンに任せておけばよいかと、和輝は会議のエリザベートへ視線を移した。
「魔法学校側が用意できる物品、人材、人脈についての情報をもらえるか?」
「今回のようにゴールグなどであれば用意はできますぅ。そうですねぇ現在パラミタで依頼を受けて動けるのは、皆さんと私たち2人だけですねぇ〜。クオリアさんたちも協力してくれる方ですけどぉ、任務に参加したりはしないですからねぇ」
「以前はユフィールさんたちに手伝ってもらうことはありまけどぉ〜。今はお願いしてませんからぁ〜」
 和輝たちに経験を積んでもらおうと考えてか、声をかけていないらしい。
「(人間は2人だけってことになるな…)」
 魔性の力を借りていたとはいえ、2人でよく活動できたものだと心の中で呟く。
「中にはただの自然現象だったりしますからねぇ。遭遇する確立は低かったですよぉ」
「こういったケースがあるほうが珍しかったんだな?」
「それに皆さんにあげた魔道具は、何年も前からあるわけじゃないですからぁ」
「確かに、そうらしいな」
「和輝、会議を進めてはどうだ?」
「あぁ…リオン」
 2人だけで話していないで進めろと言われ小さく頷く。
「今思いついたことでもいい、遠慮なく話してくれ」
「シンプルに上から回り込むってのが無理なら。力技で穴掘って、下から回れないかしら?」
「ま、真宵。穴が崩れたら生き埋めになってしまいますよ」
「あー、天井とか固めるの時間かかりそうだわ」
「もっとよい作戦はないのですか!」
「んん〜っ。…あっ、校長!テレポートで入れませんか?」
 何やら閃いた様子で日堂 真宵(にちどう・まよい)はエリザベートに聞く。
「えぇ!?入れるか分かりませんし、入れたとしても私1人だけ突入しちゃうことになりますぅ〜」
「進入できても、わたくしたちも一緒にっていうのは無理なんですね…」
「真宵、プリン作戦です!」
「はぁ〜っ、何それ!?もっとマジメに考えなさいよっ」
 またわけの分からないことを…と、真宵がベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)を睨んだ。
「失礼な、私はいつだってマジメですよ!」
「プリン作戦と言っている時点で、どうだか…」
「テスタメントに妙案があります!プリンです。プリンを公費で毎日買占め続ければ、いずれ買いに来たディアボロスはプリンに飢えて困るはずです。そこでプリン祭りを開けば誘き出せます!ついでに村興しも出来て毎日プリン食べ放題で一石四鳥です」
「あ〜もう。テスタメントのことはいいから、誰かよい案があったら言って!」
 寝ずに考えた作戦を告げるのをスルーして、話を続けるように言う。
「はい!えっとね、ディアボロスもプリンが好きみたいだから。プリンを食べるために、砂嵐から出てくるのを待つっていうのはどうかな?」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は片手をピンと伸ばして言い、待ち伏せはどうだろうかと提案する。
「それではいつ、出てくるか分からないぞ。ずっと待ち構えるのは難しい気がするのだが?」
 日の高い時間帯と夜では寒暖差が激しい気候だ。
 いつプリンを買いに外へ出るか分からない者を、待ち伏せするのは困難だと仲瀬 磁楠(なかせ・じなん)が言う。
「接近者がいれば、向こうも気づくかもしれないからな」
「んー、そしたら出てこないよね」
「あまり、目立つ行動を避けたいのは分かるが…」
「それは俺も同感だ。派手に活動するものではなく、速やかに対処するものだろ」
 目立つ行動を避けるのは当然だと和輝が頷く。
「かといって、外で待つのも難しい。他に、案はあるか?」
「うーん…どうかなぁ」
 策を求められた美羽は腕組をして考えてみる。
「ぁ、そういえば…。ねぇ、先生。ディアボロスやボコールが砂嵐を出入りする時は、どうしているのかな?」
 どうやって出入りしているのだろうと、ふと疑問に思いラスコットに質問した。
「砂嵐が術によるものと考えれば、僅かな通り道を作らせているんじゃないかな」
「別の魔性が絡んでいるかもしれないってこと?属性からすると風…かしら」
「まぁそうだろうね」
「だとしたらどんな相手なの?」
「ちょっといたずら好きなやつがいたかな」
「でも、私のアークソウルには反応がなかったわ」
 エリドゥの調査を担当していたフレデリカが、魔性の気配は感じられなかったと言う。
「もしかしたら、探知にかからないほど離れていたのかもね。こっちからアクションを起せば、何らかの反応はあると思うよ」
「ビフロンスたちの時みたいに、取り込まれている可能性はあるのかしら…」
「たぶんね。性格的には、相手を驚かせて面白がるやつだけど。致命傷になるほど故意に、傷つけたいってことはなかったよ」
「そうね。レスリーへの傷は、侵入させない警告だったでしょうし」
 また魔性を取り込んだ者の仕業なら、それも納得がいくものだった。
「うん。なんとなくだけど、敵意があるような感じがしたからね」
「あっちは祓魔師のこと知ってるみたいだったし。前回の接近で、隠れている位置はばれてしまったこともね」
「てことは、もう…そこにはいないってことかしら」
「いいえ、美羽さん。目的を達成していないのなら、まだ離れられないと思うわ。でも、相手もずっと待つようなお人よしじゃないでしょうから。一刻も早く、砂嵐の対策を考えなきゃだわ」
「むー…」
 早く現地へ行きたいが、まだ対策を立てないし…と、また考え込んでしまう。
「ややっ。テスタメントと同じようなことを考えていた人がいたとは!」
「はいはい…いいから少し黙ってなさいよ。現れるまでどこで待つ気なの…。あっついーい空の下でじっとしてるなんてかんべんだわ」
「なら、例のお店はどうでしょう?プリンを買いに、姿を見せるかもしれませんよっ。そこなら涼しいですし、ついでにスイーツも食べられて、快適な環境で待機できるのでは!」
「却下っ!」
「そ、それでも店で毎日張り込みすることは提案するのです!プリン買占めつつ!急がば回れ待てば海路の日和ありです!……むぅ」
 しかし、両腕をクロスさせた真宵にバツッ!と却下されてしまった。
「その間に、目的達成されている可能性があるし、論外よ」
「もっとよい作戦もあるというのですか?」
「例えば、エレメンタルリングで引き出した風の力利用して、風向き変える何てことできるのかしら?」
 遠野 歌菜(とおの・かな)の指のリングを指差し、風の魔力で風の流れを可能なのだろうかと首を傾げた。
「流れる力は消したり押し戻すではなく、向きを変えればいいのです。治水の基本です。無理でしょうか?」
「攻撃術だし。そんな都合のいい話、無理よねやっぱ」
「アイデア術ならどうか分かりませんけど。これだけじゃ、風向きを変えることはできないですね」
「それだと精神力を使い過ぎて、後々大変になりそうね。そうじゃなくたって術を使う人と分担しなきゃ、後が困りそうだわ」
 やはり無理か…と頷き、砂嵐のこともあるが様々な担当の分担のことも、考えなければならなそうだ。
「えぇ、できれば発動までの支援もほしいですから」
「何にしても砂嵐を突破しなきゃってことね。術によるものなら、止めさせればよいのだけど…。位置を把握するために、何人かはわざと近づかせるとか?」
「それ、いいかもセレアナ。ただ、回復してくれる人は少し下がってたほうがよさそうね」
「だけど魔性を引き離すまで、待機……ってわけにはね。…って、セレン。ちゃんと話聞いてるの?」
 序盤まで驚くほどまじめに参加していた恋人の目が泳いでいた。
 それならまだマシだったかもしれない。
 瞼のシャッターがゆっくりと閉店しかかっていた。
 ふぅ…とため息をついたセレアナは、ペンで彼女の肩をつっつく。
「んぇっ、あー…えっと何だっけ?」
「ほら、もう。ちゃんと聞いてなさいよ。これ、読んでおいて」
 会議の頭からの内容をメモしたノートを、セレンフィリティのほうへ寄せた。



「―…空からの突入は、やっぱり厳しいのかな?箒から落ちたら危ないなら、飛行系魔法とか」
「いや。スキルを強制解除されて、墜落させられる危険があるな」
 むぅー…と考え込むルカルカ・ルー(るかるか・るー)の頭を、ぽむぽむとダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が軽く叩いた。
「洞窟みたいな突破できる通路はなかった?」
「ありませんでしたわ。辺りは砂ばかりでしたから」
 綾瀬はかぶりを振り、砂だけだったと教えた。
「一定間隔で突破できるくらい、弱くなったりは…」
「さぁ、風を肌で感じた程度ではなんとも。エリシア様は、どう思われました?」
「そのような隙はなさそうでしたわ。容易く突破できるような、砂嵐の防壁でもないかと」
 薄茶色の色鉛筆を手にとったエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は、白紙の大きな紙に砂嵐のポイントと周りの様子を描いてみせた。
「魔性の力によるものだとすれば、止める仕掛けとかもない…ってことよね」
「えぇ。輩が強制憑依させている可能性があるということですわ。それを、開放する必要もあるようですの」
「でもセレアナが言っていた通り、待っているわけにもね。弱まる間隔がないなら、こっちから仕掛けて弱めてやればよいと思うの」
「それじゃあ、仕掛ける人が先発ってことで決まりね。先発を支援する人は、少し後ろにいればいいわね」
 真宵は先発のマークを緑の色ペン、それを支援する位置を水色のペンで紙に描き加える。
「何人かに別れて行動するんだね。仮に突入できそうになった場合だけど、合図はどうするかな?」
 描き込まれていく用紙を眺めていたリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)が首を傾げる。
「祓魔銃の明りはどうかな?これなら昼間でも目立つからね」
 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は持ってきた魔道具を見せて提案する。
「あ、でも…支援する人や突入する人が使って目立つのはまずいよね」
 うーん…と腕組みをして唸り、敵の目についてターゲットを変更されるのでは?と言う。
「そこなんだよね、どうしようか」
「シィシャも使えるから、彼女に合図を出させるわ。よいかしら?」
「うん、そうしてもらうと助かるかな♪」
「ただし、狙いがシィシャへ向く可能性がある。相手は必ず、不可視化してくるはずよ。だから、探知できたらアタシたちにポイントを教えて」
 特に興味を惹きそうなものがあるわけでない場所で、無意味に明りの信号を打ち上げる者などほぼいないだろう。
 彼らは祓魔師の仕業だと判断してくるに違いない。
 何らかの術も使ってくるはずだが、グラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)としても、パートナーを倒させる囮に使うつもりもない。
 まずは、それを回避する必要があるのだ。
「かといって…砂嵐を発生させているやつが、全員探知にかかる近距離まで来るとは考えにくいわ」
「ありえますね。火山で取り逃がした者が、情報を持ち帰っているでしょうから」
 魔道具による探知能力のことも当然知られているだろうと、シィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)が頷く。
「これまでと違うのは、砂嵐の先が完全にアウェーだってこと。それと、初めてこちらから手を打つ作戦だってこと。例えば、1人を叩くなら何人かでやる必要があるわ」
「―…汚いですね、グラルダ」
「汚い?それがどうしたっていうの。いっせいに向かってこないほうが、むしろ好都合でもあるわ」
「確かに。戦場ではそれが普通と…いうよりも、相手が相手だからな。当たり前だ」
 緒方 樹(おがた・いつき)は堂々と一対一などというわけにはいかないから当然だろうと同意する。
「悪いことしたら。めっ!しなきゃなんだよ。でも、取り込まれちゃったのはどうするの?羽純おねーちゃん…」
「うむ。無理やり取り込まれて利用されているなら、やたらと傷つけるわけにはのぅ。その辺りは、どう考えているのじゃ?」
 不安そうな顔をするルルゥ・メルクリウス(るるぅ・めるくりうす)の頭を撫で、魔性の対処はどうするべきかと聞く。
「無論、なるべくならあまり傷つけず開放したほうがよいだろうな」
「今までのお話を聞いた中でちょっと思ったんですけどぉ〜。ボコールは魔性を強制憑依させるために、狂気に走らせているのかもですぅ〜」
「それも…黒魔術を扱う者の能力だということか」
「えぇ、おそらく…」
「“言葉”も、そうさせるものだったのかなぁ。陣くんはどう思う?」
 離れたはずの魔性が再憑依しようとしたことをリーズが思い出す。
「んや、正気に戻りきれてないようやったし。引き戻すためのきっかけにすぎないんやないか?」
 狂気から完全に開放されたわけじゃなかったんだろうと説明してやる。
「言葉ばかり気をとられると、“元”を見落としちゃうってことだね」
「聞こえたり目に映ることばかりが、それとは限らんってことや」
「うぅ、判断がしにくそうだよ…」
「頭から湯気でちゃった時は、おやつだよね♪…はわわーーーっ!?」
 クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)がリュックを開けると、ぎゅうぎゅうに詰めたお菓子が飛び出てしまった。
「あぁ〜まったく、いつのまにこんな…。多過ぎだろ、クマラ」
 少年のほっぺたをつまんで叱りつつも、散らばった菓子袋をエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)も拾い集めてやる。
「そう思って、スィーツ作ってきたんだけど。こっちはいらなかったかな?」
「いる、すごーくいるぅうう!!」
 無邪気に目を輝かせ、弥十郎が作ったパンナコッタにかぶりつく。
「オイラ、甘いのだいすきー」
「パンナコッタ…残念な味も用意しようかなぁ」
 美味しそうに食べる様子を見て、“実は苦いコーヒー系の粉を、たっぷり使ってるんだよねぇ♪”などと考え、にやりと笑みを浮かべる。
「無駄ないたずら考えるくらいなら、別のこと考えたら?」
「―…斉民に言われたくないなぁ。ワタシだって、いろいろそれなりにね」
 エリドゥで加速のいたずらされたことを思い出し、ムッ…とした顔をする。
「砂塵・砂漠・アラビアっぽい・アラビアといえば、ランプの精・ジンってのがいなかったけ。ジンって確か風をあやつったような。まさかねぇ」
「風系の魔性の能力かもって話しになっているわね」
 その可能性はあるだろうとグラルダが言う。
「まぁ、それは置いといて、砂塵を操るものがいると考えるのが妥当かなぁ。いるとしたら、砂塵の中ではなく外かな。砂塵の中に出入りすることがあるだろうし。砂塵を見渡せる丘とかに隠れていないかね」
「(まー珍しいこと…。こんな日は槍が降るんじゃないかしら)」
 真剣に意見を言う弥十郎の姿を目にし、空からおかしなものでも降ってきそうだと、賈思キョウ著 『斉民要術』は農業専門書は心の中で呟く。
「いえ、外だと万が一アタシたちが来た時、術に集中できなくなる。容易く突破されないためなら、中と考えるべきよ」
 グラルダはかぶりを振って“おそらく外にはいない”告げた。
「フレデリカ、砂嵐の周りにもそんな気配はなかったのよね」
「一応…気配を探してみたけど。それらしいのはなかったわ」
「私たちの存在を知っているなら当然ね。…って、セレンッ!」
 傍で自分に寄りかかって瞼を閉じきっている恋人の頭をゴツンと殴る。
「いたた…優しく起してよ」
「ねぇ。私に恥をかかせる気?」
 顔は優しい笑顔だったが、次眠ったらこんなものではすまさないと、言葉の中には恐ろしい鬼が潜んでいた。
「ご、ごめん」
 これ以上何かふざけたこと言えば、また殴られると思い素直に謝った。
「セレンも策があるなら言いなさい?」
「もちろんあるわよ。…で、場合によっては、エリドゥの町をどうするのかしら?そこのところは重要だと思うけど……」
 セレンフィリティは手元に寄せれたメモを読み、いざという状況になってしまったらエリドゥをどうするのかと気になり、町の存亡について言う。
「砂嵐の発生で、エリドゥにも相応の被害が出るんじゃないのかしら」
「“中”を守るためだけなら、それはないわ。だけど目的が達成されれば当然、そこも無事ではすまないわ」
「場合によっては、町を見捨てる…ってことになりそうな気がするわ」
「その選択はありませんわ、セレンフィリティさん。わたくしたちの行うことは、祓って終わりではないしょう?」
 ミリィ・フォレスト(みりぃ・ふぉれすと)は平穏な生活を取り戻したのに、犠牲には出来ないと言う。
「おっけー分かったわ。仮に砂嵐を突破できたとして、救助と祓魔を並行するの?それとも、どっちを優先する?」
「何人か、町で待機したほうがよい気がしますけど…。待機する方も、祓魔の状況も把握したほうがよさそうですわ」
「それはそうね」
「俺がテレパシーで伝えれば問題ないだろ。町のほうまで害が行かなさそうだと判断したら、応援として向かうように伝える」
「和輝はどこを担当するの?それにもよりそうな気がするわ」
「どちらにでも支援へ向かえるように、外がいいか。情報の伝達のこともあるからな」
 伝達するならターゲットにされるわけにもいかず、目立たずに後方から手助けしつつ、必要があればどちらかへ支援すると告げた。
「中の担当はさらに、外や町への情報伝達が困難そうだ。他の皆が集中できるように、俺のほうで引き受けようと思う」
「あぁ、そちらは任せた天城」
「分かった。…コレットは、術に集中してくれ」
「うん、オヤブン!なるべく離れないようにしようね」
 グラルダの言葉通り完全にアウェイなのだから、今回は互いに近くにいたほうがよいと感じた。