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リアクション
「ったく……停電かよ」
ぼやきながら恭也は一階へとつながる階段を下りていた。手には先端を【火術】で燃やし急ごしらえの松明としたモップがある。
「……こりゃ合流は絶望的かもな」
先程の爆発音を恭也は思い出す。もしかしたら、最悪の展開になる可能性も考えなくてはならない。
一段一段、ゆっくりと階段を下りていく。映像で見た何かに遭遇しないように確認しながら。
「……ん?」
ふと、おかしな事に気付いた。足音が一つ多い気がする。
試しに一歩、階段を下りる。僅かだがズレて足音が聞こえた。
だが恭也は気付かないふりをしたまま階段を下りる。やがて、最後の段を下りきり、一階フロアに降り立つ。
「……そこか!?」
突然恭也は振り向き、火を背後に向ける。
「って何だよコイツ……!」
そこに立っていたのは、四角い長方体頭に、巨大な体躯。映像で見た怪人であった。
炎に照らされた怪人は、そのまま動きを止めていた。何処か苦しんでいるようにも見える。
「ちぃッ!」
炎を頭に当てる様に、恭也はモップを振るった。狙い通り、モップは怪人の頭に当たる。
だがその衝撃でモップが折れてしまった。炎が点いた先端部分がそのまま飛んで行ってしまう。
「どんだけ固いんだよコイツはッ!」
だが恭也は手を休めず、折れたモップで槍のように突いた。だが、その場に居るはずの怪人を貫いたような手ごたえは無かった。あったのは空を切る様な感触。
「いない――がッ!?」
ごきり、と鈍い音が響く。首の骨を折られ、恭也の身体は地面へと崩れ落ちた。
「……さっきの爆発音はこれかよ」
武尊が立ち上る炎を見て呟く。
そこは地下へと繋がる階段であった。先程ここで爆発が起きた様で、今尚炎が立ち上っている。
更にその衝撃で天井や壁などが崩壊してしまっている。ここはもう通る事が出来ない。
「くそ……別のルートを探す必要があるな」
地下を通り、外へ出ようと考えていた武尊であったが、その案は白紙になってしまった。
元の計画は地下から外へ出て、夜間・救急門を目指すという物であった。似たようなルートとなると、売店前の扉から通る事になる。
「……仕方ない」
懐中電灯のスイッチを入れる。先程の爆発の影響か、明かりが消えてしまったのだ。【光術】も試してみたが、光源として使うには不便である。
廊下を歩きながら進んでいくと、階段前に何かが落ちている事に武尊は気づいた。
「ん……っておい……!」
懐中電灯の明かりを照らすと、それは倒れている恭也であった。
動いた、と思ったが恭也自体はピクリとも動かない。何者かが階段へと引きずり込んだのである。
武尊は懐中電灯を向け、モップを握りしめて歩み寄る。ゆっくりと近づき、近くなると一気に距離を詰め、階段に懐中電灯を向ける。
「――いない!?」
そこには何もなかった。恭也の身体すらも。
「ッ!? そこか!」
武尊が振り返る。そこには四角い長方体頭の怪人が立っていた。
だが突如向けられた懐中電灯の明かりに、苦しそうに顔に当たる部分を押さえていた。
「よし!」
武尊は怪人の横をすり抜ける様に出口へと向かう。だがそこには先程見た警備員が居た。
「邪魔だ!」
警備員にモップを振い、よろけている隙にハデスが壊した扉から外へと武尊は飛びだした。
――そこからは無我夢中で武尊は走った。
本来なら【ポイントシフト】による高速移動を行うはずだったが、ここでもスキルの本来の効果は発揮できず、精々が速く走る程度。
それでも外灯の間を縫いつつ、厨房、駐車場、そして夜間・救急門へと辿りついた。
「はぁ……ッ! つ、着いたか……」
息を整えながら武尊は門を見る。閉ざされているが、施錠はされていないようである。
「……っしょっとぉ!」
力を込めて門を開ける。重い門は、音を立てて徐々に開かれる。
やがて、門は開かれた。
「……は、はは……ははは……」
武尊の口から笑いが漏れる。
門の先には、闇が広がっていた。
――そして、その闇の中に怪人が立っていた。
「あーこりゃ詰んだわ。完全詰んだ」
そう言って武尊は門の横にある外灯を見上げた。
外灯は点滅しており、何とか明かりを保とうとしていたが、やがて消えてしまう。
――ごきり、という鈍い音が響いたのはその直後であった。
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