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タケノコノキノコノ

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タケノコノキノコノ

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3.襲撃開始!

「タケノコ狩りって初めてですが、皆さんの説明を聞いてなんとなく分かりました!」
 タケノコ狩り会場。
 スコップを持って微笑む杜守 柚(ともり・ゆず)は、サニー・スカイ(さにー・すかい)に声をかける。
「サニーさん、勝負しましょう!」
「え、え?」
 同じくスコップを持ち、どこかぼーっとした様子のサニーは慌てて頷く。
「どちらが先にタケノコを見つけるか、勝負です! 負けませんよー」
「あ、ええ。私も負けないわ……」
「柚もサニーさんも、頑張れー」
「っ!?」
 柚の言葉にスコップを握り直すサニーだったが、後ろからかけられた声に飛び上がる。
「どうしたの、サニーさん?」
 心配そうに顔を覗き込んでくる杜守 三月(ともり・みつき)に、サニーは慌てて答える。
「なんでもない、なんでもないのよ! ただちょっと……その、緊張しちゃって」
 緊張? と首を傾げる三月に、サニーはやや唇を尖らせ告げる。
「その、ええと、三月さんと出かけるのはあれ以来初めてで……」
 その顔が真っ赤になっているのに気づいた三月は、ああと頷くと安心させるようにサニーの頭に手を置く。
「大丈夫だよ。別に、今までと同じでいいから」
「う、うん……」
 弱々しく答えるサニー。
 その態度は、何か言いたい事を押えているようにも見えた。

「ひゃっははははは! てめえら、タケノコ狩りだけじゃなくいちゃついてやがるとはいい度胸だな!」
 平和なタケノコ狩り。
 そこに響き渡る下卑た声。
「タケノコぉ? そんなまっすぐなだけのモノより、絶妙に曲がったり傘があるキノコの方が最高だろうよっ!」
「ですヨー!」
 現れたのはキノコ党のゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)と。
「サリー!?」
 いつの間にか、ウェザーのサリーもキノコ党に入党していたらしい。
「よく分からなイのですガ、人手が少なかったので駆り出されたのですヨ! でもやるからにはがんばりまス!」
 何故かやる気まんまんのサリー。
「ウェザーの第一の居候は私なんでスかラ! えろい要員ハ、ラフィルドだけじゃありませんヨ!」
「えー」
「そんな方向で張り合わなくても……」
 サニー達の呆れ声にもサリーは耳を貸さない。
 キノコ党員としての使命に満ち溢れている。
「行けえぇえ!」
「はいでス!」
 ゲブーと共に、手に大量のキノコを持って襲い掛かるサリー。
「馬鹿な奴らめ…… 暗くじめじめした所でキノコを愛でていれば生きていられたものを……」
「タケノコ党の力を見るがいいもん!」
 キノコ党の前に立ちはだかるタケノコ党二人!
 斎賀 昌毅(さいが・まさき)キスクール・ドット・エクゼ(きすくーる・どっとえくぜ)
「俺達のタケノコ狩りの邪魔をした事、後悔させてやるぜっ!」
「うふふ、タケノコの底力、見なさい!」
 ひょいぱく。
 二人は強力タケノコ剤を口にする。
 ぐむむむむ。
 むにょにょにょにょ。
 昌毅の脚が、キスクールの胸が、巨大化する!
「がはははは、効くかよっ! そりゃあ!」
 しかしそれに構わず襲撃を続けるゲブー。
 彼らが巨大化している隙に、マイア・コロチナ(まいあ・ころちな)に攻撃を仕掛ける。
「この俺様のキノコを食らいやがれ!」
「ぎゅむっ!」
 じゅぽ。
 じゅぽっじゅぽっじゅっぽ。
「あ……ぅ、やめっ……」
 ゲブーは手に持ったキノコをマイアの口に押し込んだ!
「ほぉら、おいしく焼き上がったキノコ、最高だろぉ?」
「う……あ……」
「お止めなさい!」
 ぶるるん。
 巨大化させた胸を揺らしながら、七日が間に割って入る。
(揺らしながら! 胸を!)
 憧れのシュチュエーションに思わず恍惚となる七日。
 しかし。
 ゲブーの持っていたキノコが、七日の胸に触れる。
「ひゃうっ!?」
 びくびくびくっ!
 それだけで、激しく悶絶する。
(な……なにこれ……っ)
 そう。
 強力タケノコ剤のもう一つの作用『機能が増す』。
 増した結果、七日の胸は敏感になりまくっていたのだ。
「くひひひひ…… どうやらそこが、キノコ党の弱点のようだな」
 それに気づいたゲブーが七日ににじり寄る。
「や、やめ……っ」
「くらえ、俺のキノコ!」
「あぁあああーっ!」
 ゲブーが手に持っていたキノコを胸の谷間に挟まれ、七日は完全に戦意を喪失した。
(憧れの、胸の、谷間挟み……)
 しかしその顔はどこか幸せそうでもあった。

「くだらない事は止めるんだ!」
 鬼龍 貴仁が真正面から説得に入る。
「タケノコでもキノコでも、好きならそれでいいじゃないか。否定しても、いい事はなにもない!」
「うるさいでス」
 じゅぽっ。
「ぐむっ!?」
 更に説得を続けようとした貴仁の口に、何かが詰められる。
 キノコ。
 サリーが、持っているキノコをどんどんと貴仁の口に押し込んでいく。
「う…… 止めなさ……っ」
「うるさいお口ハ、こうやって塞ぐですヨ〜」
 じゅぽじゅぽじゅぽ。
「う……っ」
「ほラ、もうこんなニ入ってしまいましたヨ。だらしないお口ですネ。どこまでデ入るんでしょうカ……」
「く……やめっ……っ」
 しいたけ、しめじ、エリンギまいたけ……
 様々なキノコを口に詰められ、貴仁ダウン。

「くぅう、なんたるおいしいシチュエーションじゃ!」
 混乱の中、一人、いや一羽の興奮するハトがいた。
 アガレス・アンドレアルフス(あがれす・あんどれあるふす)は大きく身構える。
「キノコ党が持つというパラミタクヤシイタケの粉末。あれをこの身に浴びたふりをすれば、世のおなごたちを幻滅させることなく我輩の欲望が叶う!」
 いつ飛ぶか?
 今でしょう!
 そう主張せんとばかりに、高く高く舞い上がる。
「おおーどうしたことか―体が勝手に女の子の胸へー」
 棒読み台詞で、倒れている七日の胸元へダイブ……!
 ひゅるひゅるひゅる……ずがっ!
「ごぶうっ!?」
 突然、飛んできたタケノコがアガレスの体に激突した。
「な、何じゃこれは……」
「あれー、あたしのタケノコ、どこに行っちゃったんだろー?」
 それは、マーガレットが掘り起こしたタケノコだった。
 加減を知らないマーガレットが全力の風の力でタケノコを掘り返した結果、タケノコは勢いのまま飛んで行ってしまったのだ。
 そしてそれが、アガレスに……
「な、なんのこれしき……ひょうっ!?」
 しゅるしゅるしゅる……ざくっ!
 突然、飛んできた鋭利な物体が、アガレスの顔を掠め、後ろの木に突き刺さる。
「ひ、ひぃい……」
「あれー、私のスコップ、どこに行ってしまったんでしょうー?」
 それはリースが飛ばしてしまったスコップだった。
 うっかり竹の根っこにスコップを指してしまったリースが思い切り引っ張った結果、スコップは勢いのまま飛んで行ってしまったのだ。
「う……も、もう駄目じゃ」
 がくり。
「あ、お師匠様!」
「あれー、どうしたの?」
 アガレス、志半ばで逝く。

「ううっ、タケノコとは、生まれてから多けになるまでのほんのちょっとの少女の期間。その良さが分からないキノコ党なんて……っ!」
 キスクールは大きくなった胸を抱き締めながら、悔しそうに呟く。
 キノコ党を巨大化した胸でめろめろにしようと思ったが、先にやられた七日を見て、そんなに事は簡単ではないと気付く。
(ああ、痺れる……)
 キスクールの胸もまた、強化の結果敏感になっていた。
 何者にも触れられていないのに、じんじんと響く。
(あ……っ、このままじゃ、駄目え……っ)
 ゲブーが手をわきわきさせながら近づいてくるのが見える。
(くぅ……っ)
 そんなキスクールに、助け舟が入った。
「タケノコ狩りの邪魔は、許さないーっ!」
 小鳥遊 美羽だった。
 短いスカートをひらめかせながら、自慢のキックでゲブーたちを葬ろうというのだ。
 しかし。
「おまえ等キノコ党は、洞窟の中でキノコの苗床にでもなってな!」
 ぎゅいぃいいん!
 美羽よりも一足早く、強力タケノコ剤で強化した昌毅のしなやかな脚が、風を切る。
「ぐわぁああああー!」
「きゃぁあああアー!」
 見事、ゲブーとサリーを蹴り飛ばす。
 きらーん☆
 そして星になる二人。
「さあ、タケノコ狩りを再開しよう…… 踏まないように、気をつけなきゃな」
 キノコ党を見事蹴散らした昌毅は、そっと下を向きタケノコに気を使うのだった。
「け……蹴れなかった……」
 一方、昌毅に先を越された美羽はショックを隠せない様子だった。
 さすがに、強化した足には勝てなかったようだ。
「元気出して、美羽。僕たちには料理があるじゃないか」
「そ……そうだよね!」
 コハクの励ましに、美羽は再び立ち上がるのだった。
 そして彼女が生きる場所、調理場へ――