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夏合宿、ざくざく

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夏合宿、ざくざく

リアクション




ふむふむ



「じきに宝探し大会を開会する。準備のある者は、各自、今のうちに済ませておくように」
 夏合宿で使用しているパラミタ内海そばのキャンプ場に三々五々集まってきた生徒たちにむかって、ジェイス・銀霞が言いました。それに応えて、生徒たちが散っていきます。
「ところで、この辺りに出る幽霊っていうのは、どんなお化けなんだ?」
 テンコ・タレイアテンク・ウラニアの二人の巫女に協力して幽霊退治をすることにした源 鉄心(みなもと・てっしん)が、ガイドさんたちに聞きました。
「ええ、詳しい話を、私ももう一度聞きたい」
 テンク・ウラニアが、淡々と源鉄心に続けます。うんうんと、テンコ・タレイアがそれにうなずきました。
「ええっと、一度、僕は巫女さんたちに助けられて実物を見たけれど、ガラスの鎧を着たような女の子だったね」
 実際に、その幽霊に襲われたキーマ・プレシャスが口を開きました。
「私は、海上での霧に遭遇しましたが。いかにも、幽霊らしい現れ方でしたな。ただ、私は霧だけで、実物は見ておりませんが」
 キーマ・プレシャスと一緒に幽霊を調べていたジェイムス・ターロンが続けます。
「幽霊なんて、怖い話ですぅ」
 大谷文美が、神戸紗千にしがみつきながら言いました。さすがに、ちょっと神戸紗千が苦笑いします。幽霊幽霊と騒いではいますが、いったいどれだけの被害があったというのでしょうか。
「たかが小娘一人、我がミニいこにゃー軍団の前には無力ですわ」
 どんな相手だって構わないと、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が胸をはりました。
「ふっ、ミニうさティーの敵にもならないミニいこにゃーに頼るなど……」
 陰で、ティー・ティー(てぃー・てぃー)が、フッと笑います。黒いです。
「近隣の伝聞では、以前から幽霊が出るという地元の伝説はあったようだ。詳しく調べると、一昨年の末あたりから目撃例が増えたらしいが。ただ、昨年の夏以降は、小船を難破させるようにエスカレートしたらしい。夏合宿での肝試し以降なのははっきりとしている。まあ、放置しておいても、いずれ誰かが退治することになるだろうが、こちらとしては、原因を作ったという負い目がある。さっさと退治しても、誰も文句は言わないだろう。ならば、さっさとけりはつけておきたいというところだ。幽霊の姿は、証言によってまちまちだが、痩身の娘と言うことでは一致している。霧を伴って現れ、その身体は水晶の鎧に被われていたとも、白い蛇を使い魔としていたとも言われる。まあ、実際に戦ってみれば分かるだろう。で、お二人が探しているという人物は、この幽霊と何らかの関係があるのかな」
 ジェイス・銀霞が説明しました。
 二人の巫女が探しているのが人であるのならば、すでに死んでいる幽霊ではないでしょう。だとすれば、その関係が気になるところです。
「さあ、それは。ですが、私たちが探すお方、コウジン・メレ様が封印された地もここと分かっています。聞けば、先年、ここに封じられていた何かが解き放たれたとのこと。確認は、必要でありましょう?」
「細かいことは、本人を見つけてから聞きましょうよ。その方が、早いわよ」
 こうして話しているのが面倒くさいと、テンコ・タレイアがテンク・ウラニアに言いました。
「じゃあ、ちゃっちゃっと終わらせてのんびりするでござる」
 スープ・ストーン(すーぷ・すとーん)が一同を急かしました。
「では、警備の方は任せたぞ」
「了解した。みんなは、安心して宝探しをしてくれ」
 そうジェイス・銀霞に答えると、源鉄心は二人の巫女たちと件の幽霊を探しに行きました。


うめうめ



「宝か。やはり、秘密結社を名乗るからには、その名前を冠した隠し財宝や伝説の秘宝の一つや二つ、ステイタスとして持っていなければならんな。よし、お前たち、すぐに埋めに行け」
分かりました、ハデス様。これを埋めてくればいいのですね」
「りょーかーい。さっさと埋めて来ちゃうね。だって、早く戻って、ゲームやるんだもん」
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)の言葉に、なんの疑問もいだかずにアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)デメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)が答えます。
「ちょ、ちょっと、兄さん。また変なこと考えて。そんな物を埋めたら、完全に産業廃棄物の不法投棄じゃないですか」
 あわてて、高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)が二人をとめようとしました。
「何を言うか。これも、大切な秘密結社の啓蒙活動の一つだ。文句を言っていないで、さっさとお前もそこに用意した物を埋めてこい!」
 ドクター・ハデスに命令されて、高天原咲耶も渋々アルテミス・カリストとデメテール・テスモポリスと一緒に宝という名のガラクタを埋めにいきました。

    ★    ★    ★

「さすがに、教育実習生である私が、生徒に混じってお宝探しをするわけにはいかないわよねえ。ここはひとつ、みんなに御褒美として、この『水のルーンカード』を宝物として埋めておいてあげましょう」
 水着を着た祥子・リーブラ(さちこ・りーぶら)が、マップ区分で0番区画に当たる場所にやってきて言いました。ちょうど、腰の深さぐらいの海の中です。
 カードケースをも兼ねた小箱を、祥子・リーブラが海の底に埋めようとしたときです。
「ようこそ、ルルイエへ!!」
 突然海底の砂の中から何本もの触手が飛び出してきて、祥子・リーブラの手足や身体や持っていた小箱に絡みつきました。
 触手の正体は、イングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)です。宝を探しに来た者を驚かして楽しもうと、ずっと前から海底に潜って隠れていたのです。あまりに長く隠れていたものですから、すでに宝探し大会が始まったと勘違いして、祥子・リーブラに襲いかかってきたのでした。
「きゃあ、変なタコ!!」
 思わず見たままを叫んだ祥子・リーブラが、イングラハム・カニンガムの触手から逃れようとして身をよじりました。さすがは人妻、身をよじる姿が色っぽいです。
 宝箱を奪われ、反撃するにも武器が何もない祥子・リーブラが、思わず目の前にあった物に手をのばしました。なぜか、イングラハム・カニンガムの頭の上に、大きなフィギュアが載っています。迷わずそれをつかみ取ると、祥子・リーブラが、思いっきりフィギュアでイングラハム・カニンガムを殴り倒しました。
「きゅう〜」
 一撃で気絶したイングラハム・カニンガムが、うつぶせの状態で、ぷっかりと海面に浮かびます。
 フィギュアの方はと言えば、結構、丈夫です。イングラハム・カニンガムとは対照的に、フィギュアには傷一つありません。どうやら、このフィギュアは、最初からお宝として埋められていた物のようでした。よく見ると、空京神社に奉納されている、『百合園女学院山車フィギュア』のようです。豪華絢爛の台座の上には、褌姿も凛々しい桜井 静香(さくらい・しずか)の精巧なフィギュアが載っています。
 水に浮かんだイングラハム・カニンガムの触手が、波にゆられてペタッと祥子・リーブラの太腿に触れました。
「ぎゃーぎゃーぎゃー」
 さすがに気持ち悪いと、祥子・リーブラがフィギュアを持ったままその場から逃げて行きました。成り行きで、お宝『百合園女学院曳き山笠フィギュア、桜井静香褌バージョン付き』ゲットです。
「あれれ、何か浮いてるのじゃ。危ないので、かいしゅーなのじゃ」
 見回りに来たビュリ・ピュリティア(びゅり・ぴゅりてぃあ)が、宝箱を持ったままのイングラハム・カニンガムを回収していきました。成り行きで、お宝『水のルーンカード』ゲットです。