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みんなで楽しく?果実狩り! 2023

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みんなで楽しく?果実狩り! 2023

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【彼女と彼女の禁断の果実】


 実り豊かな秋を満喫しよう。
 そう提案したのは誰か。
 基本的に明るく脳天気ながらたまの気紛れを起こす神月 摩耶(こうづき・まや)か。
 そんな摩耶を癒やしの存在としてパートナーに選んだリリンキッシュ・ヴィルチュア(りりんきっしゅ・びるちゅあ)か。
 正義感に溢れながらいやらしいことを考えるのも忘れないクリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)か。
 そのクリームヒルトをかなり気に入っているアンネリース・オッフェンバッハ(あんねりーす・おっふぇんばっは)か。
 しかし、彼女達に今、誰が「果物狩りしよう」と声をかけたのか調べる余裕は、無かった。
 無かったというより、そんなことはどうでもよくなっていた。
 きっかけは、そう。

「へぇ〜、面白そうじゃない。試してみよう♪」
 の、語尾に音符マークさえつける、状況を余すこと無く楽しみたいクリームヒルトの一言だった。
 アッシュブドウの話を一通り注意事項として聞いた彼女の第一声に、三者三様の反応を見せながらも誰一人「食べない」とは言い出さなかった。
 その不思議のアッシュブドウを収穫だけして、賑やかになっていく場所を敬遠し、四人は移動しその実の味を堪能することにした。
 そして、その結果が、遠くの喧騒さえ届かない穏やかな場所での、今眼前で現在進行形として繰り広げられいる光景である。
「みゅ〜ん」
 鼻にかかるような甘えた声をだした摩耶は、座るクリームヒルトへ四つん這いに躙り寄ると彼女の女の子の香りのする柔らかい膝の上に頬ずりするように自分の頭を乗せた。
「うにゃぁ〜♪ にゃふ、クリムちゃぁん……うにににぃ♪」
 誰よりも積極的にアッシュブドウを口にして立っているのがきつくなり休もうと座った先から全力で甘えられて、クリームヒルトは思わず膝の上にある摩耶のピンク色の髪を自分の指で梳き、撫で付けた。その見下ろす赤い瞳は涙で潤み揺らぎとろけていた。
「摩耶、子猫のようねぇ」
 可愛いと囁き、淡く色づく耳に小指を挿し入れくすぐると摩耶は身悶えした。
「にゅぅぅん♪」
 腰から延髄に向かって駆け抜ける感覚に思わず声が出る。
「……然し、此処は妙に暑いですね……」
 ピンク色のイチゴ味なブドウの説明を聞いてはいたが、体質の問題なのだろうかとリリンキッシュは吐息も熱く囁いた。体内で滴るほどにも溢れて止まらない疼くような熱に、体の火照りをなんとかせねばと本能が行動を起こす。
 猫のようにじゃれつく摩耶の横で立ったまま黒色のロリドレスに指をかけ脱ぎ始めたリリンキッシュを、その作業を止めるように彼女の両手首を掴んでアンネリースは正面からべったりと自分の体重を乗せた。そのまま幾層の落葉で柔らかくなっている地面に倒れ込む。
「アンネ様!」
「リリンしゃまぁ〜、だいすきれすぅ〜♪」
 リリンキッシュの腹の上で馬乗りになったアンネリースは、脱衣中に襲ってしまい中途半端に解けて顕になったリリンキッシュの鎖骨の間に顔を寄せた。
「リリンしゃまぁっ、お肌まっしろでおいしそうっ♪」
 んちゅ〜♪ と生声の効果音付きで白さ故に仄かな薄紅色になって誘っているようなリリンキッシュの肌にアンネリースは唇を落とした。
 啄むように軽い口付けを何度も受けて、くすぐったさにリリンキッシュはアンネリースの背中へと両手を伸ばした。
「……アンネ様ったら、そんなにじゃれつかれて……大丈夫ですか? 皆様ご覧になってますよ?」
 他者の視線を浴びるリリンキッシュはそう問いかけたが、自分の上で酩酊故に本能全開になっているアンネリースの眼に、自分も同じ眼をしているのかと見止め、了承しましたと微笑んだ。
「ふ、ん。 ……ん。やぁん、リリンしゃま、もっと優しくぅ、んっ」
「アンネ達も楽しそう。リリン、困らせちゃ駄目よぉ?」
「……はい、心得ております」
 脱ぎかけのドレスのまま、アンネリースの衣服の下で彼女の肌を弄っているリリンキッシュにクリームヒルトは温もりを求めて摩耶の脇下に腕を通すと背中を支えると自分の腿の上に跨ぎ座るように促した。
 体内を血流に乗って隅々と巡り広がるアッシュブドウの成分に、理性がずり落ちて、本能が剥き出しになる。
「アハハハハッ♪ 何時もと違って、此れも面白いわねぇ〜♪」
 自分が何を求めて何をしたいのか明確に見えて、返ってくる反応も自分を満足させるに十分だった。
 猫になって鳴き続ける摩耶も、
 幼くなって甘えたがるアンネリーネも、
 引っ込み思案から一転大胆になったリリンキッシュも、
 皆が可愛く心地良いまでに愛しい。
 彼女たちの“酩酊状態”がこれならば、いつの日かお酒を交えることができるようになった時、この状況が再現されるのだろうか。
「クリムちゃーん」
 考えひとり笑うクリームヒルトに摩耶は大胆にも自分の胸を彼女の胸に押し当てて、首筋に顔を埋めた。
 ラフランスに香る吐息が混ざるクリームヒルトの香りを肺一杯に吸い込み、夢見心地な目でゆっくりと吐き出した。首筋に押し付けた唇を耳元まで持って行き、にゃおんと鳴く。
「んーん、どうしたのぉ?」
 衣服に手をかける摩耶は笑い声の混じる声で問われて、猫のようにごろごろと喉を鳴らした。
「なんかねー、羨ましくなっちゃって。ねね、リリンちゃん暑そうだけど、クリムちゃん暑くないー?」
 聞きながら衣類の留め具を外す摩耶の手は止まらない。
「もう、摩耶ったらぁ♪」
 自分の感情に素直になっている摩耶の目に、充実感に頬を染めるクリームヒルトはとても艶やかに映って見えた。彼女に本性そのままに甘え、それを許される快感に理性の歯止めが効かなくなっている。
 体の様々な場所を細い指で繊細に刺激されれば、どうして今が現実なのかと恨んでしまいそうだ。
 灰撒きの子が作り出す不思議の木の実。その禁断の果実を口にして、現実を知れば、夢のままで良ければと願わずにはいられない。
 時間の経過で醒めてしまう夢に、四人はいよいよもって溺れていくのだろうか。

* * *

「見てよ義仲! これ超かわいくない!?」
「うむ、ユピリアの言う通りだな。何時もの肢体は素晴らしいが、これもこれで味があるというものだ!! なあ陣よ!」
「いや、味っつーか……ガキだろこれ」
 すでにイイカンジに出来上がっているユピリア・クォーレ(ゆぴりあ・くぉーれ)木曽 義仲(きそ・よしなか)がジゼルさん七歳を囲んできゃっきゃと騒ぐのに、高柳 陣(たかやなぎ・じん)は、彼等の頭を通り越して遠くの木々を眺めていた。
 農園の異変の原因はアッシュだと聞いていたが、ジゼルが居るということは恐らく『あれ』も居るのだろう。
「一応聞いておく。保護者はどこだ?」
「うんとね、おにーちゃんはね…………あれ……、置いてきちゃった!」
「……はあ。あとは? 誰ときたんだ、他のはどうした」
「とよみちゃんとー、くろふぉーど!
 それからかがちとかまこととかねー、あおいがうたっててね、よすがはブドウがおいしいっていっぱいたべてるのー」
「やっぱりな。『アレクと豊美ちゃんが一緒に出かけると、アッシュにぶち当たる』。これもうあれだな。
 探偵のおっさんと眼鏡の坊主が出掛けた先では、必ず殺人事件が起こるのと同じだな」
「うん! それでねー、とよみちゃんとくろふぉーどは、なんだっけ……
 しらないうちにきえちゃった!」
「消え……うん、いいわ、そこいいから続きは?」
「そうたがぎゅーしてくれたの。そうたはあったかい!
 そしたらねー、こーどとるかがでてきて、るかがじぜるをこどもにしてー、へんなこびとさんとこーどがね、あはははは! おにいちゃんにころされたの!」
「殺された!?」
「うん。じゅうでばーん! ばーん! ばーん! っきゃーーー!! あははははは!」
「…………マジかよ」
「じぜるビックリしてここにきたの! ……あれ…………、ここどこ?」
 小首をちょこん。と傾げるチビに、陣はやれやれと額を抑えた。
 たまにはと果実狩りにきてみればこれだ。だがブドウの効果と酒の強さが比例するなら幸い陣は酒に弱くもないし、わざわざ怪しげな果物を食べる気にもならなかった。恐らく大丈夫だろう。
 ユピリアと義仲は既に手遅れだが、自分がまともでいられるなら別にいいやと早々に諦める。
「――なによりツッコミが正常じゃなくてどうする!!」
 唐突に叫んだ陣は、自分がすでに酔いの淵に片足を滑らせている事に、ちっとも気づいていないのだった。



「いた! アレクさん、あそこなのだ!」
 そんな陣等を、ジゼルを追ってきたアレクと薫たちが見つけたようだ。先程の失敗を繰り返すまいと、まずは木の影に隠れて様子を見守る。
「アレクさん、我に任せて!」
 様子を見守りながら薫が取り出したのは、毛布一枚と『何枚もの布が重なった何か』だった。
じゅーうーにーひーとーえー!
「ジュウニヒトエ?」
 ついノリで十二単を上に掲げながら独特の口調で言ってしまった薫に、アレクは首を傾げる。
 ――そういえばアレクは外国の人だから知らないのか、と思い当たって少々頬を染めている薫の代わりに、尊が説明する。
「昔の日本人が着てた服だな!」
「偉い女の人が着ていたもので、とっても綺麗なのだ。これをジゼルちゃんに着せたら可愛いかもしれない!」
「...um...yeah,so?(……えーと、それで?)」
「アレクさん、ちょっとコレ持ってみて?」
 薫に手渡されて素直に従ったアレクは、十二単を手にした瞬間眉を顰めた。
「重……!」
 小さな薫がこんなものを軽々持ち上げていたのかという驚嘆と、そもそも何故果実農園にこんな服を持っているのかという疑問が持ち上がるが、薫は戸惑うアレクに気がつかずに説明を続ける。
「可愛いし重いでしょ。だから下着だけになっちゃったジゼルちゃんに着せるには最適の服だと思うのだ! 着せてもいいかな?」
「なる、ほど、成る程。いいんじゃないかな」
 答えながらどこか上の空なアレクに薫は気づいている。きっと木陰に置いてきた弟分が心配なのだろう。
 ここは自分の出番だ!と心密かに意気込んで、薫はアレクに微笑んでみせた。
「我がジゼルちゃんを捕まえて戻るから、アレクさんは先に弟さんのところへ帰ってあげて」