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最強アイドルへの道

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最強アイドルへの道
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リアクション

【最強の女決定戦!!】

 リング上に女たちが並んでいる。女たちは闘志の火花をバチバチとぶつけ合いながら、観客にアピールをしていた。
『最強の女が、今ここに決定する』
 馬場 正子(ばんば・しょうこ)が厳しい目つきで、一堂に会した女たちを見た。
『いや、それ以前にリング狭くてろくに動けないよねこの人数』
 実況解説の席にいる紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が、思わず突っ込んだ。
 リング上に立つ女は、正子を入れずに20名。至極もっともな感想だ。
『というか何故か実況解説席にいるんですけど、何でかなぁ……』
 そう唯斗はぼやくも、リング上の異様な雰囲気にどこか楽しそうな表情ではある。

 リングの一角を見て見よう。やる気満々でリング上の面々を見るのは、鳴神 裁(なるかみ・さい)だ。裁に憑依した物部 九十九(もののべ・つくも)と二人分の闘争心を胸に抱いているようだ。その隣では、朝霧 垂(あさぎり・しづり)が慎重に相手を見極めるような視線を送っている。
 と思えば、ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)が謎の空手らしき構えを取ってアピールしている横では、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が挑発的な笑みを浮かべて対戦相手たちを見ている。
 そこへ、ローライダーに乗った九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)斑目 カンナ(まだらめ・かんな)こと、謎の魔法少女ろざりぃぬとハートブレイクカンナが登場した。
 ろざりぃぬコールが沸き起こる。そのコールに答えるようなハイドロに、観客は一層湧く。
 降りてきたろざりぃぬはにやりと笑った。
「キラッ☆ろざりぃぬだよ!」
 そんな様子を横目で見るのは、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だ。二人はリングに上った瞬間から、自分以外は全て敵……恋人であるお互いでさえも敵であるという緊張感に、自身の内に潜んでいた戦闘能力を引き出させていた。
『ま、リングアウトしていけば戦いやすくもなるか。リングアウトした時点で負けが決まるからな。さて、試合もそろそろ始まりそうだ』
 唯斗が言うか言わないかのタイミングで、ゴングの音が鳴った。

「連日連夜、唯斗を締め落としてきた結果を見せるでありんす!」
 ハイナが、周囲をぐるりと見回しながらニヤリと笑う。
『ええ、逝きかけましたけどね? ここのとこ連日連夜』
 唯斗が頬を引きつらせる。と、ハイナの元に葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が近寄ってきた。
「お、やるでありんすか?」
「お互い正々堂々闘うであります」
 爽やかな笑顔で、ハイナに握手を求める吹雪。ハイナが伸ばした手をしっかと握った吹雪。

 ゴキッ

 リング上に嫌な音が響いた。ハイナが叫び声をあげる。
『ハイナの腕の関節が外れた!?』
 正子が、ギロリと吹雪を睨む。
「とうっ」
 吹雪が隠し持っていた小麦粉をハイナの目に浴びせかける。その好機を見逃さなかった垂は、目を抑えて騒ぐハイナの身体を担いだ。
「でりゃああああああ!!!!」
 ハイナの身体が、リングの外目掛けて投げ出される。……が、ここは総勢20人もが右往左往するリング上。
「あーれー」
 グルグルと回転するハイナは、佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)に裏十字固め状態にされているルカルカ・ルー(るかるか・るー)に激突し、その反動で、にらみ合うイングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)桜月 舞香(さくらづき・まいか)の間にポスリと落ちた。
「っ!」
 間一髪、イングリットの一撃をかわしたハイナは、すかさず体勢を立て直す。
「よくもやってくれたでありんすね……!」
 殺気を纏い、戦闘態勢に入るハイナの横を、駆け抜ける者がいた。
(何故か垂達と一緒にバトルロワイヤルに参加する事になってしまった、なんで僕はここに居るんだろう……?)
 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)はそんなことを考えながら、ただひたすらにリング上を逃げ回っていた。逃げ回っていたといっても、乗降中の満員電車の中を駆け抜けようとするようなものである。
 が、ライゼは本気の逃げを見せた。ちょこまかと、誰が戦いを挑もうとも思えないような速度でリング上を駆け抜ける。
「邪魔すんなぁッ!」
 突如、ライゼを強い横薙ぎの拳が襲った。が、素早くライゼは正子を盾にしてその一撃を防ぐ。
『む……?』
 正子の意識が吹雪から逸れたのは、幸か不幸か。吹雪はこれ幸いとばかりに、椅子を持ち出して近寄ってくる女たちをめった打ちにせんと構えている。
 ライゼが駆け抜けようとしてしまったのは、リネン・エルフト(りねん・えるふと)……ではなく、謎の覆面レスラー「ブラックペガサス」と、フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)……ではなく、謎の覆面レスラー「マスク・ド・ペガサス」が対峙している空間だったのだ。
「マスク・ド・ペガサス! あなたを倒すのは私よ!」
 黒いマスク・ド・ペガサスの覆面をしたブラックペガサスは、そう高らかに宣言して羽織っていたマントをバサリと脱ぎ捨てた。
「受けて立つわ。ロスヴァイセの名にかけて!」
 名乗りを上げる二人の間を、轟音とともに飛び抜けた者がいる。……ソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)だ。万勇拳の構えを取っている小谷 愛美(こたに・まなみ)の攻撃を受けたのか、あるいはかわしたのか。ソフィアはロープに身体を上手く絡めてリングアウトを防ぐと、愛美を見た。
 ソフィアはその頭脳のコンピュータで、愛美の攻撃をいかにかわすか、演算する。積極的には攻めていかない。その理由は、戦っている面々を間近で見ながらソフィアの戦いぶりを見ている大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)にある。
 剛太郎は、ギャグ目的でソフィアをこの戦いに参加させた。とはいえ、すぐに負けてしまってはつまらない。そこで、剛太郎はソフィアに約束をしていた。
『この大会で善戦したと認めたら、服でも装備でも買ってやる』
 その誘いに見事に乗ったソフィアは、否、その誘いを頼りに、ソフィアは何が何でもリングアウトしない構えでいる。責めるのではなく、しぶとく生き残る。そのための計算をしながら、ソフィアはリング上の他の皆の様子を見ていた。
 複合的な関節技をかけようと狙っている騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、ソフィアを見ようとしない。機晶姫であるソフィアは、恐らく体重差があり過ぎるだろう、と踏んでいたのだ。
「いっけえええええ!!!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の超高速の蹴りが、体勢を立て直そうとするソフィアに炸裂する。
 リングアウト狙いの鋭い連撃にも、ソフィアの執念は負けていない。固定具付き脚部装甲を使って滑り止まろうとするが、こちらはなかなか上手く固定できないようだ。ズズズ、と脚がずれてしまうが、何とかリング上には残った。
「なかなかやるわね!!」
 美羽も負ける気はないようだ。こうして、女たちの戦闘は白熱していく。