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なし

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少女と執事とパーティと

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少女と執事とパーティと

リアクション

 ゆったりとした音楽の流れる空間にパパンと銃声が鳴った。
「!」
 銃声のした方へと、一斉に招待客の目が向けられる。
「何……」
 パーティ会場にざわざわと先程とは違う喧騒が起こっていた。
「全員、動くな!」
 再び銃声が鳴る。
「抵抗すれば容赦はしない。特にイリスフィル家当主、貴様は特段素晴らしい扱いをしてやる」
「……テロリスト」

 「……やれやれ」
 メシエは溜息を隠さない。エース達の居る場所からもテロリストが何人か見えていた。
「あれほど忠告をしたのだがな」
「そう言うな。子供っぽい嫌がらせで自分の首を絞めている事に気付いていないのさ」
「だが、ここまでやると後には引けないぞ」
「それぐらい分かっていると思うよ。何せ次の当主予定だからね」

 「始まりましたか……」
 『ユニオンリング』によってドクター・ハデス(どくたー・はです)に扮した天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)はパーティ会場での騒ぎを楽しむように聞いていた。
「ふふ……」
 ジョージが会場を混乱させる事は既に情報を得ていた。十六凪はその小さな企みを利用して、自らの計画を実行すべくパーティ会場に来ていた。
「では、ベルセポネ君。正面からの陽動を頼みますよ。その隙に僕が『特戦隊』を率いて、会場を制圧します」
「分かりました、ハデス先生!悪い取引が行われている会場を攻撃すれば良いんですねっ!」
 ペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)は十六凪の提案に頷いた。
「ええ、作戦開始と行きましょう」
(……アルテミス君。ペルセポネ君と陽動に使うために放っておきましょう)

 数日前のある日。
 「何?パーティの手伝いだと?」
 ハデスに一本の電話が掛かってきた。電話の相手は詳細をハデスに言って聞かせるが、ハデスはあまり興味がないようだった。
「ダメだ。今は、ある研究に忙しい。うむ、では」
「何処からです?」
「有力貴族の集まるパーティーの手伝いをしろと電話が掛かってきたのだ」
「……ふむ」
 ハデスの話を聞くと、十六凪は考えるような仕草をする。
「ハデス君。ちょっと買い物に行きませんか?」
「いやだ」
「……奢りますよ」
「良いだろう」

 「明日は何を手伝いましょうか」
 ハデスからのお使いを終え、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は帰宅の途に着いていた。
 そんな折だった。ハデスと十六凪の二人がアルテミスの視界に映り込んできた。
「あれは、ハデス様と十六凪さん……?」
 ハデス達は公園に向かうようだった。
「……え」
 アルテミスが公園を覘くと、そこに十六凪の姿は無く身体の調子を確かめるように自身の手を握るハデスが居た。
「ハデス君、身体をお借りしますよ。僕のオリュンポス乗っとり計画のために……ね」
「!」
 十六凪がハデスの身体を乗っ取るところを目撃してしまったアルテミスは、咄嗟に身を隠した。
「ふふふ……」
 十六凪はアルテミスのいる場所を流し見る。アルテミスは自身が見られていることに気付かない。
「有力貴族の集まるパーティーですか。僕ら『秘密結社・真オリュンポス』の旗揚げには、ちょうどいいイベントではないですか」
「……」
「楽しみです」


 「キロスさんっ!ハデス様が十六凪さんにっ……!」
 ニルヴァーナ創世学園に来ていたキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)にアルテミスは助けを求めた。
「ああ?何言ってんだ?」
 突然現れたアルテミスにキロスは事態を理解できていない。慌てるアルテミスを宥めすかし、キロスは話を聞いた。
「実は――」
 アルテミスはキロスに起こったことをありのまま伝えた。
「一緒に十六凪さんと戦ってください!」
「ふん、久しぶりに大暴れ出来るぜ!案内しな!」

 「(……動きますか?)」
 真は大洞に合図を送る。
「(いや、少し様子を見る)」
 パーティ会場に散った真達は既に臨戦態勢になっている。
 慎重に会場に現れた男達の様子を伺った時だった。
「「!」」
 ドンとパーティ会場が派手に揺れる程の衝撃が起こった。
「何だっ!?」
 男の一人が叫び声を上げた。
「入り口の方だ。確認に向かえ!」
「了解!」
 男の一人が不意にジョージの方を伺った。
「……」
 ジョージは苦い顔をしていた。不足の事態であり、状況を把握できない。
「「!」」
 男が向かった後、再び鋭い衝撃がパーティ会場を揺らした。

 「悪いことをする人たちには、この私がお仕置きですっ!」
 十六凪の『機晶解放』により、ペルセポネのパワードスーツのリミッターが解除され戦闘能力が向上していた。
 外に出てきた男達を即座に『ショックウェーブ』で吹き飛ばす。

 「始まってしまいました!」
 アルテミスが声を上げる。
「ちっ、急ぐぞ。楽しみが減っちまう」
「私も一緒に戦いますっ!……あ、けどオリュンポスを裏切るのはまずいので、変装してっと」

 「正面入り口の敵の排除は完了です」
「そこまでです!」
 勇ましい声が聞こえ、ベルセポネは振り返った。
「この正義の騎士マスクナイトとキロスさんが、悪の真オリュンポスの野望を打ち砕きます!」
 『魔剣ディルヴィング』を構えたアルテミスとキロスがベルセポネの前に立ちはだかった。
「キロスさんがいますから、悪いことをする人たちの手先ですね!容赦はしませんよ」
「あ?」
 キロスが怪訝そうな顔をした。
「キロスさん、来ます!」
 ベルセポネが手を翳すと、衝撃波が生まれる。
「っ、『ショックウェーブ』か!」
 アルテミスとキロスは二手に飛び出し、別れた二人の間を衝撃波が突き抜ける。
 舞い上がる砂埃を突き抜け、アルテミスとキロスが同時に斬りかかる。
「てやあ!」
「ふっ!」
「『ポイント・シフト』」
 刹那、ベルセポネの身体が消失。二人の剣が空を切る。
「くぅ!」
 ベルセポネは二人から既に距離を開けていた。
「逃がしません」
 ビーム発射形態の『ペルセポネ専用ビームブレード』からプラズマ粒子のビームが撃ち出される。
「『拡散射撃モード』」
 アルテミスとキロスを狙い、ビームが分裂。二人を襲う。
「キロスさん私の後ろに!」
 キロスを庇い、アルテミスが前に出る。
 『龍鱗化』を行い、『ファランクス』で剣を盾に防御態勢を取る。
 次の瞬間、ビームがアルテミスの剣と衝突する。
 ギャンと甲高い音が鳴り響き、ビームが散っていく。衝突したビーム粒子は地を削り、周辺を破壊し粉塵を巻き上げる。
「っ!」
「頑張れ!」
 キロスがアルテミスの背中を支える。
「この出力、どうなってやがる!」
「『機晶解放』を十六凪さんがしているんだと思います」
 ビームにより熱せられた大気と地面が爆発した。