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【フレンディス 対 スヴェトラーナ】


 それはフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)が、ニコライに参加の旨を伝えていた時の事。
「この度は訓練のご協力に、私の実力でお役に立てれば良いのですが……。
 私、アレックスさんをやるべきかどうか迷いましたが」
「を、殺るべき?」と、ベルクはフレンディスの言質を取る。
(……何気に以前負けたっつーか殺されかけた上に、刀1本壊されたのを根に持ってねぇか?)
 逡巡するが、その間にフレンディスの言葉は続いていた。
「アカリさんと一戦混じえたく」
「…………アカリ? ええっと……」
「スヴェータだ」
「ああ! はいはいスヴェトラーナですね」
 ニコライが作成した表に記入しながら、他に要望は無いかと尋ねると、フレンディスは頷いた。
「私でもお役に立てる訓練内容を考えたのですが、
 希望と致しまして、敵が隠れやすく不意打ちが容易な……、路地裏等如何でしょうか?」

 そんな訳で今、スヴェトラーナとフレンディスは路地裏を模したフィールドで訓練中である。
 しかし訓練とは言っても、フレンディスはこう先に宣言していた。
「訓練でも手加減出来ませぬ故……、アカリさんも私を殺しに来て下さいまし」
 その言葉通り、彼女は本気だった。
 路地裏と言う事も有り、先程迄の試合形式と違い、既にかなりの時間が経過している。
 その間フレンディスは壁抜けを多用し、目眩ましを多用し、スヴェトラーナを翻弄するように動いた。
 スヴェトラーナの性格上、これは彼女に取って不利な戦いになった。
 傍目からもスヴェトラーナの苛つきが見て取れる様になってきた頃、遂にフレンディスとスヴェトラーナが直接対決する瞬間が訪れた――。
 左右の刀を振るい攻撃の手を休めないスヴェトラーナに、防戦していたフレンディスが追いつめられる。
「――あ!」
 トン。と、フレンディスの肩が壁にぶつかったのに、勝機をつかんだスヴェトラーナの唇が歪んだ。
 しかし、スヴェトラーナが刀を袈裟懸けに振り下ろした時、フレンディスの姿はそこには無くなっていたのである。
「え?」
 ひたりと冷たい刃の感覚が首にぶつかり、スヴェトラーナは後ろを殆ど目だけで振り返る。
 そこにはスヴェトラーナの影の中から姿を表したフレンディスが、立っていた。

 フレンディスは今回の訓練を通し、スヴェトラーナの短所――迂闊で調子に乗り易い上、すぐ熱くなる――を改善したいと考えて居た。
 フィールドを生かしたフレンディスの罠に見事にハマってくれた為、これで彼女も自分の弱点を強く自覚した事だろう。
「マスター。本当に私などで、アカリさんのお役に立てたのでしょうか……」
 ヤンの説教を受けているスヴェトラーナを遠目に見ながら頬に手を当ててぽやんと呟くフレンディスからは、もう既に忍者の殺気は消え失せている。
「さぁな。
 いい教訓になったと願いてぇが…………」
 水晶で戦いの全てを見ていたベルクに、ジブリール・ティラ(じぶりーる・てぃら)
「ねぇベルクさん」と、声を掛けた。
「――本音を言うとさ。
 オレもちょっと戦ってみたいなーって思ったけど……、今のオレだと冗談抜きで10年早いよね。
 でもいずれ同年代……トゥリンと張り合えたり共闘出来る実力にはなりたいかな」
 ジブリールの謙虚で前向きな言葉を聞いて、隣に座るトゥリンは眉を上げた。
「バッカじゃないの?」
 お前は何を言っているのかというトゥリンの声音に、ジブリールは驚き言葉を失った。
 だがトゥリンはジブリールへにんまりと笑ってみせる。
「10年たったら、今のあいつらより、アタシたちのほうが強くなってるよ!」
 自信をみせるトゥリンに、ジブリールは笑顔で頷くのだった。



【舞花 対 アレク】


「アレクサンダル大尉の胸を借りるつもりで、全力で挑ませていただきます」
 瞳に緊張を滲ませながら丁寧に挨拶し、ぺこりと頭を下げる御神楽 舞花(みかぐら・まいか)に、アレクは少しの間を置いて両腕を広げた。
「全力だなんて……最近の若い子は過激だな。
 まあ、よし。
 おいで舞花ちゃん。お兄ちゃんの胸に、飛び込んでおいで!」
「そうじゃねぇだろこの変態!!」
 ベルクの正確な突っ込みが入っている間、見学席の近くでニコライが「もういいからスタートしちゃって」と促すので、舞花は困惑した気持ちを切り替え、息を大きく吸って自分の中に眠る能力の全てを解放させる。
 こうして全ての力を出し切れば余り時間は持たないが、アレクは舞花から見ればひたすら格上の相手。
 ハンデを付けて貰って更にだが、下手をすればこれでも足りない位だろう。
(まずは……)
 シュミレートしていた作戦通り、舞花は『機動アーマー』の側面に取り付けられた発射口から、弾丸を移出する。
 これは牽制目的だ。
 アレクはその弾丸の全てを避け、最後に正面に着たものを小太刀の刃でスライスした。二つに割れながら地面に転がり落ちた弾丸を指さして、アレクは見学席のベルクに手を振っている。この小太刀は、ベルクから貰ったものらしい。
「見て見てベルク、弾が凍った! あはは! 凍ってる!」
「お前は戦いに集中しろ!」
 こうしたボケ突っ込みのお陰で、舞花はアレクに肉迫する事が出来た。
 軽いフェイントするような動きを混ぜて、『モンキーアヴァターラ・ナックル』を装備した腕を振りかぶった。
「はああッ!」
「あー駄目駄目」
 肩に軽い衝撃を感じて、舞花の動きが停止する。
 舞花はアレクを殴りつけようとしたが、その肩を向こうから抑えられたのだ。
 そう、抑えられただけだが、身長150センチの舞花と、187センチのアレクとでは腕の長さが違い過ぎる。だから拳を先に進める事が、出来なくなってしまったのだ。
「――ッ!」
 無鉄砲に踏み込み過ぎた事に気がついて、舞花は後ろに引いた。
 アレクは動かない。その程度は大目に見るというのが、ハンデの内容らしい。
「舞花ちゃんリーチ短いから、そうやって突っ込んじゃ駄目だよー」
「はっ、はい!」

 こうして対戦というよりは純粋に訓練のような応酬を繰り返し、暫く。
 もう間もなくで『覚醒』の反動が出るというところで、舞花はアレクから漸く隙のようなものを見つけられたと、レガースで壁に立ったままポーズを取る。
 彼女の目には、『ビームレンズ』という特殊なコンタクトレンズが装着されていた。
ま、舞花ビーム!…………です
 赤い瞳がキラリと輝き、光りの粒子がアレク目掛けて並進する。
「や〜ら〜れ〜た〜」
 と、まだ何も当たってもいない状態でアレクが敗北を宣言したのは、萌え殺されたという事だろう……か?
 大体やられたと言った割に、力を使い果たした舞花が壁から落ちてくる時には、その下でばっちりスタンバイしていた位には元気らしい。
 くったりした舞花を覗き込んで、アレクは小首を傾げた。
「楽しかった?」
「はいっ! 正面切って戦うだけで、良い経験になりました。
 有り難う御座います!」
 そんな生真面目な返しに、アレクは再び萌え殺された。此の戦い、ある意味舞花の完全勝利である。