リアクション
海京の自由な一日 「ごにゃ〜ぽ☆ 風が気持ちいいよねー」 海京の人工海岸に海水浴に来ていた鳴神 裁(なるかみ・さい)が、真っ青な海を見て言った。 「うんうん、気持ちいいよね〜」 海風を楽しみながら、アリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)が言った。 「ちょ、ちょっと、いくら気持ちいいからといって、その格好なのですかー?」 アリス・セカンドカラーの格好を見て、ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)がちょっと慌てる。 倫理結界という名の服は、まさに隠す所を最低限隠しているだけというかなり危ない服なのだ。人のいないプライベートビーチで泳いでいるのであればまだいいが、こう人の多い海水浴場で、これはまずい。ドール・ゴールドとて、ちょっと困ったことになる。 「えー、別に構わないよね」 しれっと、アリス・セカンドカラーが言う。 「ええっと、裁様、ごにょごにょごにょ」 海水浴場の周囲の目が痛いので、黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)が鳴神裁に何か耳打ちした。 「うんうん、それはいいかもね」 鳴神裁が、黒子アヴァターラマーシャルアーツにうなずく。 「ねえねえ、せっかくだから海に行こうよ。もちろん、みんな一緒に飛んでくんだよ」 鳴神裁が、そう言ってアリス・セカンドカラーにウインクした。 「まっ、それもありかなあ」 うりうりといたいけな男の子たちを弄ぶのにも飽きてきたのか、アリス・セカンドカラーが鳴神裁に同意した。 「じゃあ、フュージョンだよー。ごにゃ〜ぽ☆」 「フュージョンだよね。ごにゃ〜ぽ☆」 砂浜に離れて立つと、鳴神裁とアリス・セカンドカラーがお互いにむかって走りだした。直前で大きくジャンプすると、空中でお互いの手を結んでクルクルと回る。激しい空気の渦が、竜巻となって二人の姿をつつみ込んだ。霞んで朧にしか見えなくなった二人のシルエットが、その中で一つとなる。 「ごにゃ〜ぽ☆」 竜巻が、一瞬にして解け、アリス・セカンドカラーと一体となった鳴神裁が立っていた。見た目は、長い銀髪姿の鳴神裁だ。 「行こう♪」 鳴神裁がドール・ゴールドを呼んだ。 ドール・ゴールドが鳴神裁の周りをクルンと一周する。その間に、ドール・ゴールドの姿がぼやけて消え、代わりに水着姿だった鳴神裁の身体がぴっちりとしたアンダースーツにつつまれた。ドール・ゴールドが魔鎧となった姿だ。 「来たよ」 黒子アヴァターラマーシャルアーツが、鳴神裁に声をかけた。 海岸の砂を蹴たてて、ペガサスポーンが駆けてくる。さっと、黒子アヴァターラマーシャルアーツがその背に飛び乗った。 「おいでよ」 鳴神裁が呼びかけると、駆け寄ってきたペガサスポーンがジャンプした。その姿がみるみる変形し、翼持つ鎧の姿へと変わる。大きく開いたペガサスポーンが、鳴神裁の身体に巻きつくようにして装着されていった。いつの間にか、ギフトである黒子アヴァターラマーシャルアーツの姿が、黒い外衣となって鳴神裁をつつんでいた。 「それじゃあ、行こうか!」 鳴神裁が、海にむかって走りだし、大きく空にむかってジャンプした。 風を捉える。 音をたてて、鳴神裁の背中にペガサスポーンの翼が広がった。 「駆けあがるよー!」 一体となっているパートナーたちに言うと、鳴神裁が空へと駆けのぼっていった。 潮風の上を滑り、雲の間をすり抜ける。 光が、鳴神裁の進む道となった。 風が、気紛れにむきを変える。 それを捉えて、鳴神裁が自由に空を舞った。 風を追って、鳴神裁が空を翔ける。いや、空を翔ける鳴神裁の通った後が風になるのだ。 それに気づいているのかいないのか、鳴神裁たちは新たな軌跡を空に描いていった。 |
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