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リアクション
★ ★ ★
「正義が私を呼ぶ。皆、むやみな戦いはやめるのだ!」
まったく空気を読まずに、コア・ハーティオンが叫んだ。
もちろん、これはあくまでも模擬戦である。コア・ハーティオンの言葉などガン無視で、他のイコン立たちはそれぞれの相手を定めて戦闘に入った。
「みんな、戦いをやめて、コア・ハーティオンのお願い!」
やはり、ガン無視である。
「こうなれば、しかたがない。力を持って、皆に分かってもらうまでだ」
コア・ハーティオンのフェイスをカバーが覆う。
「仕方ないわね。ハーティオンも、頑張ってね」
ラブ・リトルが、コア・ハーティオンにエナジーを送った。
「おおおお、パワーがみなぎってくる!!」
コア・ハーティオンのハート・クリスタルにエナジーが満たされていく。コア・ハーティオンの全身が金色に輝き、蒼空戦士としてのパワー全開となった。
「ほら、あなたも」
ラブ・リトルの祈りが、星怪球バグベアードにも届いた。
「はははははは……」
星怪球バグベアードがコア・ハーティオンに近づいていくと、無数の触手を放出してその身体に絡みついていった。
「星心合体! ベアド・ハーティオン! 星の心を身に纏い、愛に応えてここに推参!!」
コア・ハーティオンが、ベアド・ハーティオンに合体する。
「ホイ、次!」
ラブ・リトルのエナジーが、今度は龍心機ドラゴランダーを満たした。
「来い、龍心機ドラゴランダー」
『ガオォォォォォン!!!!』
コア・ハーティオンに呼ばれた龍心機ドラゴランダーも金色に輝きだし、変形を始めた。
「蒼空勇者! ドラゴ・ハーティオン! 見参!」
アーマーと化した龍心機ドラゴランダーと、コア・ハーティオンが合体する。
だが、相手は熟練パイロットの乗ったイコンだ。ドラゴ・ハーティオンでは勝ち目が薄い。
そこへ、大空の彼方から龍帝機キングドラグーンが飛来した。誰か乗っているようだが、バンクシーンを使用しているので適当に省略されている。
「黄龍合体! グレート・ドラゴハーティオン!! 心の光に導かれ、勇気と共にここに見参!」
変形した龍帝機キングドラグーンと合体して、ドラゴ・ハーティオンがグレート・ドラゴハーティオンとなった。
だが、この程度の力では、まだ第三世代のイコンにはおよばない。
「ついに、あれを試す時が来てしまったのか……」
「はい!?」
コア・ハーティオンに見つめられて、まだやるのかと、ラブ・リトルの目が点になった。
「もう、どうなっても知らないんだから」
ラブ・リトルが、コア・ハーティオン、龍心機ドラゴランダー、星怪球バグベアードにありったけの思いを注ぎ込む。
「では、行こう! ラブ! そして皆!」
「竜心咆哮! 龍心機 ドラゴランダー! 星心招来! 星怪球 バグベアード! 超龍星合体だ!!」
いったん合体が解け、すべてのパーツがコア・ハーティオンを取り巻くように周囲を舞った。
「宇宙に邪悪が溢れても、心の力が輝く限り、正義の光は燃え盛り、いつか銀河を希望で照らす! 超龍星合体! キング・ドラゴハーティオン! 希望の心に照らされて 奇跡と共にここに見参!」
ついに究極の姿となって、キング・ドラゴハーティオンが大地に降り立つ。ここまで、実に26分。すでに、テロップが流れ始め、特殊エンディングの時間となっていた。
「つ、続くの!?」
横目でそれを見守っていたラブ・リトルが絶句した。
★ ★ ★
恐ろしく手間のかかっているコア・ハーティオンをガン無視して、他のイコンたちは戦いへと突入していた。
同じ直接コントロール同士、鵺と魂剛が静かに相対する。
背後での戦いとやたら繰り返される名乗りの叫びとは対照的に、二機のイコンは相手を見据えたまま、微動だにしなかった。お互いに、相手の出方をうかがっているという様子だ。
腰に手を添えたまま、紫月唯斗が全身の神経を研ぎ澄ます。
まるで羊水の中にいるような人肌の暖かさを感じながら、朝霧垂がゆっくりと右手をかざした。さすがに、今度は前のような不意打ちはない。だが、逆に、一瞬の差が、勝負を分けるに違いない。
「動かないものなら、動かすまで」
隙がないのであれば、隙を作ればいい。
予備動作も見せずに、鵺が超空間無尽パンチを繰り出した。
このタイミングであれば、回避は不可能だ。
だから、魂剛は避けなかった。居合いのごとく、背から抜き放たれた鬼刀が、飛んできたパンチを叩き落とす。だが、同時に鬼刀が砕け散った。
軌道を変えられたパンチは大地へと激突し、凄まじい土煙を舞い上げながら地中深くへとめり込んでいった。
その土煙が晴れる間もなく、中から魂剛が飛び出してくる。
互いに相手の姿を見失った一瞬の後に、両機が必殺の間合いに入り込んだ。
鵺が機龍の爪を振り下ろすと同時に、魂剛が神武刀・布都御霊を横に一閃させる。
どれほどの差があったと言えるのだろう、上下に両断された鵺が爆散する。
だが、妙な手応えに、魂剛がとっさに回避行動に移った。右側のバインダーが、灼熱する拳に粉砕される。振り返るところを、今度は左側のバインダーが破壊された。
「幻影の陣……」
七体の鵺が、魂剛を取り巻いていた。
「ミラージュ……、いや、実体か」
いきなり多勢に無勢に追い込まれて、魂剛が防戦一方となった。だが、数は増えたと言っても、単機の性能は見て分かるほどに低下している。
「落ち着いて数を減らせばいいだけのことだ」
神武刀・布都御霊をさらなる大刀に変化させて、魂剛が手近な鵺の分身を斬り倒した。突如として広がった間合いに、鵺の分身も迂闊には近づけなくなる。
「なら、これで決めよう!」
本体である鵺の機体が漆黒に変化していった。リミッターを解除したのだ。四肢が押さえ切れぬエネルギーに炎を纏い、まるで鬣のように後頭部からも余剰エネルギーの炎が吹き出した。一つに纏まったバインダーからは薄紅色のエナジーウイングが激しく吹き出す。
「波羅蜜多龍滅拳!」
残る五体の分身が魂剛の動きを止め、鵺が一気に魂剛に突っ込んでいった。
「解!」
魂剛も、制限を解除してクルリと回転斬りをする。神武刀・布都御霊のエネルギー波が、魂剛を押さえ込んでいた分身をすべて弾き飛ばした。
そのまま、魂剛がファイナルイコンソードで、真っ向から鵺を迎え撃った。
二機が交差する。
魂剛を切り裂くはずの鵺の左手が、切り落とされて宙を舞っていた。踏み込み時の激しい力で大地に抉った跡を引き残して、魂剛が神武刀・布都御霊を斬り下ろした体勢で全身から吹き出す熱によって陽炎をたたせている。
必殺技の硬直が解けた魂剛が立ち上がり、しゃがみ込んで動かない鵺に止めを刺そうと振り返った。そのとき、地中から飛び出してきた超空間無尽パンチが、ごっそりと魂剛の右半身を削り取っていく。
見れば、鵺の右腕が、深く地面に突き刺さっていた。
「分身を倒して、安心しすぎたか」
魂剛がバランスを保てずに横転する。
だが、鵺の方も、中の朝霧垂が幻肢痛に苦しんでいた。次の瞬間、鵺の全身が炎につつまれる。
暴走だ。
インテグラルナイトは、鹵獲した敵の生体組織を元に作られているため、コントロール系に損傷を受けると本来のインテグラルナイトの凶暴な性格が戻ることがある。その状態を暴走という。
まだ右腕が地中にあるために動きがとれないが、炎につつまれた鵺が激しく身悶え咆哮した。
操縦槽内の体液が沸騰したと感じるほどの激情が朝霧垂を襲った。限界を超えるフィードバックにセイフティーが起動し、操縦槽との神経接続を焼き切って強制的にリンクを解除する。気を失った朝霧垂は、操縦槽に浮かんだままだ。
やっと右腕を大地から引き抜いた鵺が咆哮した。暴走はこれからだった。
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