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終章2 今後の温泉運営に関する指針とか


 地元の有志団体で構成される仮(的な)運営団体は、契約者たちの探索によって多くの資料を得て、事故防止の対策を施してのリニューアルに乗り出すことになる。
 危険な場所に関して正確な位置が多く割り出されたし、また唯斗の働きで源泉噴出孔の場所が分かったのも大きかった。予想以上に、洞窟内の高低差に関しては気を付けるべきことが多いということ、奥部の通気性の悪さは慎重に対策を考えるべきだということも改めて指摘された。安全な温泉施設をデザインするブレーン確保や、対策を施行するための費用捻出など、また運営にとっては頭の痛い問題も残ったが。
 そんな中で、カルキノスが地門遁甲で(やっても他の場所に大きな影響を与えないと判断した場所にのみだが)狭い水路の幅を広げたり、危険な段差を均したりと多少地形を変えてくれたことは、彼らにとってはありがたいことだった。

 その地門遁甲によって、広間はあの後再び岩の壁で囲われたが、以前より内部が見える隙間を岩の横や上に多く空けておいた。
 その上でダリルは、探索結果の報告書と共に、ヌシ自身から聞いたその生態を運営に話し、以下のような提案をした。

 すなわち、夏季はあの場所を開放し、一般の客が見学できるようにする。
 ――水深が深いので、事故防止のためにも立ち入り禁止にはした方が良い。
 夕凪の海に似た金色の水底の広間の風景は、ムードを求める恋人同士などにウケがいいだろう。
 だが、冬から春先にかけては、周辺からあそこへの立ち入りを禁止する。
 つまり、夏季限定公開の風景名所とするのだ。


 この提案は当たり、そのロマンチックな眺めは遠からず恋人たちが訪れる名所となることになる。


 後になってカルキノスはダリルに訊いた。
「最後にヌシは何言ってたんだ?」
 ダリルは、一瞬薄く笑って答えた。
「今回様々な人間に出会い、あの仔パラミタリンドヴルムにはいい人生勉強になっただろう、だとさ」
「あ?」
「しきたりで、最後に生まれた子供が、親の死んだ後その棲み処を継ぐことになる……そうだ。
 つまり、あの仔が次のヌシになる確率大、ということらしい」




 宵一は、ヨルディア、リイム、カーリアが持ち帰ったパラミタリンドヴルムに関する報告を、件の学者に届けた。
「地熱による抱卵……冬季の生活場所……なるほど。
 我々が思っていたよりもずっと、パラミタリンドヴルムの生態は、爬虫類的な形態を残しているようだな」
 学者はそれを興味深く熟読した。
 報告書以外にも、彼らが採取した鱗や卵の殻なども届けられた。その中にはカーリアが岩から剥がし取ったあの薄緑の柔らかい鱗もあった。
「彼らの一部だったものが手に入ったとは、これで彼らの食生活などの研究も進むだろう。素晴らしい。
 成獣のみならず幼獣にも逢えたとは……本当に素晴らしい。私が実際行けていたならと思うと惜しいくらいだ」
 そう言って、学者はその豊富な成果を喜んでくれた。
 依頼は達成された。宵一もこの結果を嬉しく思った。
 ヨルディアによると、自分の懸念も少しは和らぐような結果になったという話だったから。







 しかし、思わぬ爪痕も、洞窟温泉には残った。
 すなわち――怪談である。


「誰も行かないような奥の方まで行くと、『色は赤いですが』と書かれてその先が読めない看板がある」
「その辺りの湯だまりは血に染まっているんだって」
「その看板の文字を最後まで読めたら……恐ろしいことが起きるんだって……!」

「誰もいない、洞窟の奥の入浴場の岩の上に、全裸の女の幽霊が現れるそうだ」
「ひきつった顔で、何か叫び出しそうな顔をしたかと思うと――ふっと消えるんだって」
「洞窟の奥には主と呼ばれる大蛇がいて、その蛇に食い殺された女の霊らしい」
「もし、女が消える前にその叫びを聞いてしまったら……
 ヌシが目の前に現れて、一飲みにされてしまうんだって……!!」



担当マスターより

▼担当マスター

YAM

▼マスターコメント

参加してくださいました皆様、お疲れ様でした。
ところどころやや悪乗り気味になった部分もありますが(汗)いかがでしたでしょうか。

偶々、外国の温泉を紹介する番組で天然の洞窟温泉を見て、これを舞台にしたシナリオがあったら楽しいかなぁと思ったのがきっかけでした。
ヌシの顛末は、拍子抜けされた方も多いかと思います(汗)。結構ヌシ絡みで戦闘を意識したアクションを入れていた方が多くて(ほとんどが「ヌシとは戦わない」だったのはホロリでした)、全然そういった流れのないリアクションにするのがちょっぴり惜しくて、無理矢理盗掘者役作って戦闘入れた方がいいかななどと考えましたが、さすがに無理でした。

今回は称号は一部の方に送らせていただきます。全員にお贈りしたかったのですが今回作る時間がなくて……スミマセン。
それでは、またお会いできれば幸いです。ありがとうございました。