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魔女の願い

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魔女の願い

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願い


「瑛菜。こっちはどうじゃ?」
 物理ステージへときたアーデルハイトは暇そうにしている瑛菜に話しかける。
「もうそろそろ終わりそうだよ。アテナも頑張ってくれたし」
 それは物理ステージも勝利を収めそうだということ。
「ふむ……それでは魔法ステージと物理ステージで2勝は出来そうじゃな」
「じゃあ、無制限ステージはもう放棄してもいい?」
「いや、そうはいかぬじゃろう。あのステージがあちらの最大戦力なのは間違いない。ゲームに負けて破れかぶれで村に襲撃されたら危険じゃ。ある程度は戦力を削っておかねばなるまい」
「なるほど」
 瑛菜はアーデルハイトのいうことが最もだと思う。
「アーデルハイト様。少しよろしいですか?」
 瑛菜と話しているアーデルハイトに非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)はそう声をかける。
「なんじゃ?」
「ユニコーンの角とバイコーンの角を合成したものをアーデルハイト様は持っていらっしゃいますよね?」
「そうじゃな」
 アーデルハイトは頷く。
「レオーナさんがそれを粛清の魔女に使って欲しいとアーデルハイト様に伝えてくれと言われました」
「ふむ……粛清の魔女にの。もともとはレオーナが持っているはずのものだから別に良いが……一応理由を聞いても良いかの?」
「この間、開校イベントの時ミナさんにあったんです。その時にもしもの時自分の力を借りたければ魔女の枷を外せと。そのことをレオーナさんに相談したら例のものを使って欲しいと言われました」
 ミナから話を聞いてから根回しをしていた近遠は、アーデルハイトが今持っているものが魔女の枷を外すものだとまで突き詰めていた。
「なるほどの。ミナの力を借りる……か。思い切ったことをするの。じゃが、恵みの儀式に対向するには恵みの儀式が必要なのかもしれんの」
 頷きアーデルハイトは正邪の角を取り出す。
「ミナよ。見ておるのじゃろう? 使うが良い」
 そう言ってアーデルハイトは正邪の角を誰もいない場所へ投げる。
「あら? どうして気づかれたのかしら?」
 誰もいなかった場所から姿を表しミナは正邪の角を受け取る。
「本来なら気づけるはずないのじゃがな。今は理の魔女の力で恵みの儀式の力も契約者の力も普通に影響しあう状態になっておる。……やる気のない隠形くらい見破れるのじゃ」
「なるほどね。…………それじゃ、遠慮なく使わせてもらわうわ」
 そう言ってミナはまた姿を消す。
「約束を守ってあげる」
 その声を最後にアーデルハイトたちの近くから完全にミナの気配が消えた。


「ミナホちゃんには村を守ってほしいのですわ」
 ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)は村で留守番のミナホにそうお願いする。
「衰退の魔女が力を振るうには繁栄の魔女が同じだけ力を振るわないといけないのでございます」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)はユーリカのお願いの理由を補足する。
「そうですか……粛清の魔女さんの力を貸してもらえるんですね。そしてその力を存分に発揮するには私が力を使わないといけないと」
「……随分と理解が早いのであるよ」
 ミナホの様子にイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)はそう思う。
「自分のことですから」
「それなら話が早いのですわ」
「この村を守るため力を使って欲しいのでございます」
「……そう、ですね。どうせ私はここで留守番しているしかありませんから」
 ミナホは頷く。
「……もしかして、ミナホさんは穂波さんがどんな思いでゲームへと向かったのか知っているんじゃないですか?」
 そんなミナホにそう声をかけるのは源 鉄心(みなもと・てっしん)だ。
「……知りはしません。けど、穂波ちゃんがどんな思いでゲームに向かったのは分かります。……形はどうあれ戻ってくるつもりがないんですよね?」
「そこまで分かっていて、ミナホさんはこの村に残ることを選んだんですか?」
 そうだとするなら鉄心はそれでいいと思う。それがミナホの心からの選択であるなら。
「けれど……もしも、自分の思いを我慢しているなら……」
 鉄心は自分よりも若い子たちが自己犠牲しようとするのはあまり見過ごせない。穂波のような子はもちろん、感情を押し殺そうとする子もだ。
「仕方ないですよ…………この村を守るというのが村長としての仕事ですから」
 実際もしもの時を考えた時に村の守りは必要だ。そういった意味では繁栄の力を持つミナホはうってつけなのだ。
「勝手にあいつらの仕事取ってんじゃねぇよ。相変わらずムカつく女だな」
「ユーグ……くん?」
 ミナホに掛けられる苛立ちの声。それはかつての野盗のボス。ユーグという男のものだった。
「『村を守る』ってのはあいつら……ニルミナス防衛団の仕事だ」
「それじゃ、村長の仕事は……」
 それは何なのかとミナホ。
「『村民を守る』ことじゃねえの? だから選べよ。今にもいなくなりそうな村民か、この村で大勢過ごしてる危険に晒されるかもしれない守ってもらえる村民か」
 だがとユーグ。
「……そんな暗い顔してる奴に守られても嬉しい奴なんていないだろうよ」
「……………………」
「1度だけだ。お前がいなくなったら一度だけ防衛団を俺が率いてこの村をどんな手を使ってでも守ってやる」
 それだけ言ってユーグはミナホの元を去り、防衛団の元へ向かう。
「…………ミナホさん。あなたはどうしたいですか?」
 鉄心の問い。

「私は――」