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恐竜騎士団の陰謀

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恐竜騎士団の陰謀
恐竜騎士団の陰謀 恐竜騎士団の陰謀

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7.奇跡を起こすための時間制限



「お疲れ様、今日は私達だけみたいね」
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が合格者の控え室に入ると、さっそく声をかけられた。
 声をかけてきたのは、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。その隣では、カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が静かに佇んでいる。他に人は見当たらない。
「まだあと少し試合は残ってるわよ」
 リカインがそう返すと、カルキノスは首を振る。
「残りの奴じゃ、せいぜい餌になるのがオチだな」
 と言う。実際、そこまで腕のあるようには見えなかったが、結構運も絡むのでそう決め付けるには早いんじゃないかな、とシルフィスティは思ったりしたが口にはしなかった。
「しばらくしたら、バージェスが来て、それで解散になるらしいわよ。詳しい話は聞けないみたいね」
「そうなんだ。風紀委員になってから、何をしなきゃいけないとかそういう説明も無いのかな?」
「無いみたいよ。とりあえず、荒野を我が物顔で歩き回ればいいんじゃないかな?」
「それもどうなんだろう?」
 なんて世間話みたいな話をしていると、駆け足の音がこちらに向かってきた。それはそのままこの部屋に飛び込んでくる。
「おい、お前ら」
 入ってきたのは、恐竜騎士団の一人のようだ。見たところ、それほど偉い立場ではなく使いっパシリといった様子である。
「どうしたの?」
 さすがに息を切らした様子はなく、部屋に四人に向かって飛び込んできた騎士がこう言った。
「襲撃だ。さっそくお前らの力を試す時が来たぞ」



「もういい、つまらん話はよせ」
 バージェスは報告に来た部下にそれだけ言うと、手を振って部屋から退出させた。
 報告の内容は、また風紀委員が何者かに襲撃されたというものだ。報告であがってきただけで、もう十件以上となる。もっとも、ほとんどは従恐竜騎士団であり、未だ精鋭である恐竜騎士は誰も落とされてはいない。
「未だに極光の琥珀が手に入らず、報告はつまらぬ敗者の話ばかり。恐竜との試合もいささか飽きてきたな」
 やれやれと言った様子で、体を沈めていた豪華な椅子から立ち上がる。たった今、今日の最後の試合が終わったところだ。最後の試合は特に酷かった、恐竜に一方的に嬲られ、食われるだけの試合を見て何を楽しめばいいというのだ。
 今日の合格者は四人、それぞれ二人組みで試合に参加していた。
 どちらも、まぁまぁ面白い試合ではあったが、しかし心を躍らせてくれるようなものではなかった。ああ、早く出ないものか、血が疼くような猛者が、そしてそれが目の前に敵意を持って現れてくれないか、早く一刻も早く。
 そうでなければ、この退屈な気持ちが永遠に続いてしまう。
 猛者といえば、あの石原という男は相当な実力を持っていたように見えた。しかし、奴に手を出すことがあってはならないとキツク厳命されている。少なくとも、今だけはそれに従わざるを得ないのがツマラナイ。
「バージェス様!」
 謁見に向かう途中、部下に呼び止められた。また誰かがやられたのか、とつまらなそうな目でバージェスは部下を見る。
「敵襲です」
 だが、その言葉を聞いて色の無かったバージェスの目に光が宿った。



 時間が無かった。
 奇跡を起こせる期限は決まっている、少なくともガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)はそう考えていた。
 時間が限られているのなら、その間に行動するしかない。
 簡単な話だ。そして、彼女は実際に行動を起こした。自分のできる限りの力を用いて、今の状況に不満を持つ者を集めて軍団、といっても五十人に届かない程度なのだが、を作り上げた。
 そして、彼らを率いて闘技場に襲撃をかけたのだ。
「出てきなさい、石原肥満! ぶっ飛ばしてあげます!」
 軍団を率いて、闘技場に向かうガートルード。
「おーおー、盛り上がっておるのう」
 なんていいながら、シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)もついていく。
 当然、闘技場を占拠している風紀委員が迎え撃つために出迎えに出てくる。しかし、闘技場に居る風紀委員の数はそこまで多くない。全部合わせても、ガートルードの作った軍団にも届かない。
「そんな人数で、私達を止められると思っているのですか! そんな人など使わずに、出てきなさい、石原肥満!」
 一つささやかな勘違いなのだが、闘技場には確かに風紀委員長であるバージェスが居るため、風紀委員の集会場にはなっている、しかし石原校長はここには一度も顔を出した事は無いのである。
 当然、今だってここに石原校長は居ない。



「襲撃だって、どうする?」
 ルカルカの問いにカルキノスは、何を言っているんだかといった様子である。
 既にルカルカの目は輝いているのだ。チャンス到来、と。
 ここにどれぐらい風紀委員が居るのか、それがどれだけ外に向かったのか、二人とも既に把握している。バージェスは出迎えには行かなかったようだが、彼の護衛は今はほとんど居ない。
 なら、外に向かう必要は無い。
「全く、最初からそのつもりなんだろ」
「当然」