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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【2】奇奇怪怪……3


「ぷはぁーー! いやー、一時はどうなることかと思ったが、なんとかやり過ごせたな!」
 昶と北都は一緒に大きく息を吸い込んだ。
 いち早く敵の接近に気付いた彼らであるが、いち早く呼吸を止め、キョンシーに襲われないよう我慢していたのだ。
「皆がこの部屋に向かって走り出した時はどうなるかと思ったよぉ……」
「ああ、ただでさえ限界だったのに、有酸素運動はやばいよな。卒倒するかと思った。マジで」
 しかし、結界が張られた以上、しばらくはゆっくり探索が出来そうだ。
 堂の中をぐるり見渡す。床や壁、柱、そして天井に至るまで緻密な装飾がなされている。 
 おそらくコンロンの伝統的な装飾なのだろう。今は見る影もなくボロボロだが、完成時は美しかったに違いない。
「そう言えば、本殿の奥にトレジャー反応があると通信があったけど、ここかなぁ……」
「おいおい、トレジャーセンスに頼るのはどうかと思うぜ」
「おや、じゃあ他にいい方法があるのかい?」
「ああ、スキル頼りは冒険者としちゃ無粋ってもんだ。宝探しで頼っていいのは己の野性の勘だけだぜ」
 そう言うと、昶はぐるぐる室内を歩き回った。
「む、むむむ……ここだ!」
 おもむろに剣を振り上げると、壁にかかった襤褸布を切り裂いた。
 するとどうだろう、壁一面にビッシリ書かれた文字が目に飛び込んできた。
「これは……!」
 この歴史的大発見に、考古学大好きのグラキエスは壁に駆け寄った。
「この文字、もしやこの霊廟の由来を語るものか……?」
「そのようだねぇ」
 博識な北都は文字を解読し読み進める。
「……この霊廟は、時の帝に仕えていた将軍『ブセイ』を祀ったものだそうだよ」
「ブセイ……武晴廟の名の由来となった人物だな」
「ん? ここに彼にまつわる武勇譚が書いてあるよ……なになに、『宝貝(パオペイ)伝説』?」
「宝貝……と言うと、仙人が使う不思議な道具のことか」
 北都は文字を指先でなぞる。
 ブセイの東方遠征のおり、東方都市に恐るべき妖仙『不浄妃(ブージンフェイ)』あり。
 苦しむ民草を解放するべく、三日三晩に及ぶ死闘の末、ブセイはこれを打ち倒す。

「不浄妃……前にコンロンの伝承を調べた時にその名を聞いた。元は普通の剣の花嫁だったが、生に固執する性格だったと言う。ある時、手に入れた宝貝を使って、肉体をキョンシーと同質のものとし不死を得た……そんな話だったな」
「……ふむ。そして、ブセイは討伐後、その腹から出てきた宝貝を持ち帰った、と書いてあるね」
 はっと顔を上げ、2人は顔を見合わせた。
まさか、この宝貝がブライドオブヴァラーウォンド……!