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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【2】奇奇怪怪……4


「大尉。確認したいことがあるわ」
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は指揮を執る大尉にそう言った。
 パイロン達が壁の文字を発見したその頃、メルヴィア大尉を主軸とした隊は本殿右側にある堂に到達していた。
「夜営や夜間訓練と言うのは防諜上の観点か、もしくは訓練以上の意義を持つ物なの?」
「街まで戻るのにも時間を要する。夜間に移動するより野営のほうが危険は少ない。他に夜営を行う意味があるのか」
「では、夜間訓練と言うのは?」
「なんだ、それは? 一言でも『私が』そんなものを行うと言ったか? 阿呆が」
「う……!」
 彼女は訓練を行うなど一言も言っていない。
 夜間訓練をしたがってたのは、サンプルアクションに出てくる変態隊員……つまり筆者のような何かである。
「それは失礼しました……」
 しかし、ローザもくさらず、別の提案を始めた。
「周辺都市で情報収集を行うべきだと思うわ。ブラッディ・ディバインにウォンドの情報を握られるのは避けたい。先んじて情報の確保に動くことは重要よ。それに、コンロンの人民が奴らの危険にさらされる可能性がある。また情勢が不安定になれば、隣接するエリュシオンがコンロンに介入してくる状況にもなりかねないでしょう」
「ふん、情報は先行隊が集めた。だからこそ、我々はこの霊廟に来ている。今更新たな情報が手に入るとは思えん」
 メルヴィアは冷たい目で、ローザを睨んだ。
「それに、連中がコンロンの人民に何をしようと私の知ったことではないっ」
「ど、どういう意味!?」
「この隊の任務はウォンドの探索だ。民間人の保護は私の仕事ではない」
「ちょっと、あなた軍人でしょう! 軍人が民間人を見捨てるなんて……!」
「命令があればそうする。だが今、我らが動く必要はない。己の分もわきまえられんのは愚か者のすることだ」
 しかし……と続けた。
「周辺都市での情報収集は必要だ。ウォンドではなく九龍を追うためにな。それに関しては志願兵を調査に向かわせた」
「軍閥の協力は仰げないのか?」
 ふと、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)が進言した。
「物資提供や道中の道案内で協力を受けている。彼らには彼らの任務がある、これ以上を望むことはできん」
「ふえ〜、意外と気配りもできるんだねぇ〜」
 バナナをむしゃむしゃ食べながら、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は言った。
 なんとなく馬鹿にした感のある口調だった。メルヴィアもそう感じ、危険な目付きで彼女を睨み付けた。
「なんだ、貴様……。作戦行動中の間食は許可していないぞ」
「むっしゃむっしゃ……」
「おい、そこのうじ虫! 即刻間食をやめろ!!
 と言うと、美羽はちらっと小動物のように見返した。
「そんな口利いていいのかなぁ。私、ロイヤルガードだよ。国軍だと左官扱いなんだよ。メルメルの上官だよぉ〜」
 次の瞬間、メルヴィアの鞭が一閃。容赦なく厳しく美羽の顔面を引っぱたいた。
「……はうあっ!!」
「だからどうした、うじ虫」
「じょ、上官を引っぱたくなんて……え、ええと、上官暴行罪だ!」
「馬鹿か、貴様」
「え?」
「この隊の最高司令官は私だ。階級がどうあれ、この隊の中では私が上官だ。誰に指図される覚えもない」
「えええー……」