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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【ニルヴァーナへの道】崑崙的怪異談(前編)

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【1】奇異荒唐……3


 樹月 刀真(きづき・とうま)は堂の中を覗き込んだ。
 小さな堂だが中暗く奥はよく見えない……だが、キョンシーは潜んでいないようだ。
「九龍か……」
 刀真は小さく漏らした。
「壊滅状態の鏖殺寺院がこの時期に出てくるものだろうか。ウォンドを狙う第三勢力に雇われた可能性もあるが……」
「考えごとしながら仕事してると大尉にビシバシされるわよ」
 銃型HCのオートマッピングで地図を作製しながら漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は言った。
「やめてくれ、俺にそっちの趣味はない。ところで、何か発見はあったか。トレジャーセンスにも反応はなしか?」
「うーん……はっきりとはわからないけど、なんだか奥のほうにある……気がする」
「何かある気はするが、反応を掴みきれない……と言ったところか」
 奥を見やり『こちら樹月、霊廟の奥に朧げだがトレジャーの反応アリ。調査を求む』とインカムに報告を送る。
「ねぇ、さっきの話だけど……」
「ん?」
案外、パイロンと九龍は同じ先生に師事してたりしないかな?
 何気なく言ったその言葉に、刀真は言葉を詰まらせる。
「九龍も仇討ちのためにここに来た……とか」
「その場合、パイロンとは兄弟弟子になる。となれば何故、一緒に行動しないのか、だな……?」
 何か引っ掛かりを覚える……しかし、それを確かめるには今はまだ材料が少ない。
 そんな2人の傍で、百合園のメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が探索を行っていた。
 いや、厳密に言えば探索はしていない。彼女は手を休め、まだ月の出ていない空を見上げている。
「パラミタ以外にも浮遊大陸が存在したんですねぇ……」
 空の向こうに想いを馳せる。
「うーん、でもどこに? 月から行けるってことは……やっぱり空のずっとずっと上になるのでしょうか??」
「空ばかり見上げてるとキョンシーが出てきても気付きませんよ」
 と言ったのは、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)
「あ、ごめんなさい……」
「気になる気持ちはわかりますけど、全てはブライドオブシリーズが集まれば明らかになりますわ」
「うーん、ブライドオブシリーズをポータラカの人たちが欲しがってた理由も明らかになるんでしょうかぁ」
「そう言えば、あの方々の協力条件は……ブライドオブシリーズの引渡しでしたね」
「あの人たちもニルヴァーナと関係があるのですかねぇ?」
「……と、言うことはたいむちゃんとも関係が!?」
「たいむちゃんですかぁ……」
 メイベルの頭にほわほわと、キュートな兎が浮かんだ。
「あんなかわいい生き物がいる所なら、きっとニルヴァーナは素敵なところなんでしょうねぇ」