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【ニルヴァーナへの道】浮遊要塞アルカンシェル(後編)

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【ニルヴァーナへの道】浮遊要塞アルカンシェル(後編)

リアクション

「テレパシーも極力使わない方がいいでしょう」
 白竜は普段より増して無表情だった。
「もしかしてすげえヤバい状態?」
 羅儀のそんな問いに答えることもなく、進んでいく。
 緊張感を感じながら、羅儀は白竜の指示に従って、サイコメトリで情報を得ていく。
「……このこっち側は居住区みたいだな」
 要塞でもあり、家という用途でもあったのならどこかに移動できる空間があるのかもしれない。
 そう考えながら、壁を調べ、ピッキングで開けられるドアは開けてみながら、進んでいく。
「通気口は……地球人の大人が通れるほどの広さありませんね」
「あっ」
 小さな声に立ち止まる。
 開けたドアの先に、少女の姿をした機晶ロボットがいた。
「侵入者の方ですね。この部屋でお待ちください」
 ロボットは、白竜の手を掴んで、中に入れようとする。
「……」
 無言で、顔色一つ変えず、白竜は怯懦のカーマインで少女型ロボットの頭部を撃ち抜いた。
 同時に、羅儀も赫奕たるカーマイン で胸を撃ち抜く。
 ロボットは完全に沈黙した。
「カードキーでロックされている部屋が多いようです。……ありました」
 白竜は、ロボットのポケットの中からカードキーを見つけ出して、確保した。

「攻撃が激しくなってきましたね」
 補給に戻ったNachtigallが、戻ろうとした時には、要塞から発せられる攻撃は数倍になっていた。
 単機ではとても近づけない。
「けど、やんなきゃな! 大がかりな攻撃は出来ねえが、これまでに調べた重要ポイントを破壊していくまでさ」
 メインパイロットのフロッ ギーさん(ふろっ・ぎーさん)が、攻撃を躱しながら接近を試みる。
 内部に仲間達が入り込んだため、バリア発生装置を破壊した辺り等、要塞に大きなダメージを与える攻撃は出来なくなっている。仲間を撃ってしまいかねないから……。
 だが、要塞の速度を落とすため、起動をずらすため、最終作戦……破壊の可能性も考え、バリア発生装置を外部からも出来るだけ破壊しておかなければならない。攻撃をやめることは出来なかった。
『援護する。調査を続けてくれ』
 ウンヴェッタを操るクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)から、Nachtigallに通信が入る。
「了解! じゃ、行くぞ。サポートは任せたぜ、ナナ・マキャフリー! いや……相棒!」
「はい!」
 ウンヴェッタの攻撃に合わせて、フロッギーさんはNachtigallをアルカンシェルに接近させる。
「レーザー砲台、撃ちます」
 ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)は自分達を狙っている砲台に向けて、20ミリレーザーバルカンを放つ。
 バリアに守られているため、破壊できたのは先端だけだが、その砲台からレーザーは放たれなくなった。
「よし、離れるぞ!」
 即、フロッギーさんは攻撃を回避しながら、要塞から離れる。
 ナナが採取したデータと、情報から攻撃目標を決め、クレアや教導団の援護を受けて接近。破壊、離脱。
 ヒットアンドアウェイを繰り返していく。
「砲撃のエネルギーは、違うようだが、それ以外の動力はブライドオブドラグーンによるものだ」
 要塞をモニターに拡大表示しながら、クレアは考える。
「こちらの攻撃によって多少なりとも速度が落ちているのは、つまるところ、動力の一部を移動以外……バリアによる防衛等に振り分けるためもあるか」
 要塞が軍が決めた最終ラインに到着するまでの時間を、少しでも遅らせることが出来るのならば。
「攻撃を続けなければなるまい」
 要塞上部。
 図面によると、ここに主砲や中距離ミサイルが多く存在している。
 第一突入班の侵入経路として攻撃を控えてはいるが、要塞からの攻撃が厳しくなった今、破壊出来るのならばこの辺り一帯は破壊しておきたい。
「足止めをされてるって連絡もあったけど、もう出発してるみだいた」
 エイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)が、マジックカノンで砲弾を撃ち落としながら言う。
 内部に入っていた者達から直接連絡を受けているわけではないので、タイムラグはかなりあるだろう。ならば。
「既に最上層に残っている者はいないだろう」
 外からの攻撃により、せっかく要塞内に侵入した戦力を潰してしまっては意味がない。
 だが、いつまでも入り口で立ち止まっているようでは、戦力にならない。
「バリアへの攻撃と共に、最上層、主砲の位置、ミサイル砲台を狙い、集中攻撃を行う。引き続き、バリア発生装置の探索を頼む」
 クレアはイコンを飛行形態に変形させて、要塞の上空より最上層への攻撃を試みる。
「わかりました。これまでのデータを転送いたします」
 ナナは、そう答えて集めたデータを、クレアと本部に送信する。

「待たせて悪かったな!」
 和希ロボを駆り、姫宮 和希(ひめみや・かずき)が、アルカンシェルに追いつく。
「情報を回してくれ。中に入った奴らがどのあたりにいるのか分かるといいんだが」
 和希は中にいる者との通信を試みるが、電波の状況も悪く、厚い壁に阻まれているせいもあって一切連絡がとれない。
「こちらでも、外部から要塞の弱点を探ろう。脱出口を作っておくためにもな」
 和希のパートナーのガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)は、機晶テクノロジー、先端技術、博識の能力、知識をフル活用し、要塞を探っていく。
「バリア発生装置は早めに壊したいところだが、中に人がいる以上、バリアがなくなれば余計、攻撃が出来なくなる」
 要塞側も、バリアに注ぐ分のエネルギーを動力に使えることになる。
「つまり、時間制限を早めてしまうということだな」
「で、具体的にどこを撃てばいい?」
 和希の問いに少し考えた後、こう答える。
「バリアから覗いている砲身だ。だが、暴発させたら、付近にいる者が危険な目に遭うことになる」
「でも、撃たなきゃ、放たれた弾が一般人を傷つける可能性があるんだよな」
 和希は届いたデータを確認し、攻撃すべき場所を選んでいく。
 仲間が絶対に居ない場所。破壊すれば、脱出口として使えそうな場所――。
「重要ポイントから遠い場所に脱出口を開けてもな」
 図面と情報を参考に、決めていく。
 その間にも、味方側の攻撃に合わせて、左舷への攻撃を入れることも忘れない。

『……話、出来ない……。まだ、落ち着いてない……』
 関谷 未憂(せきや・みゆう)の携帯電話に、アレナの傍にいるプリム・フラアリー(ぷりむ・ふらありー)から連絡が入る。
「そう、空京の様子はどう? そちらの方にも時々ミサイルが向かっているけれど」
『……まもる……』
 プリムは魔力を上げた状態で、氷術で盾を作り、アレナを守っているという。
「うん、無理しないでね……」
 話しながら未憂は、モニターに目を向ける。
 写っているのは、浮遊要塞アルカンシェル。
「不安です」
 未憂は今、パートナーのリン・リーファ(りん・りーふぁ)と共に、カリプテ・ヘレナに乗っている。アルマインに乗るのは、初めてだった。
 外部から何が出来るだろう。
「……神楽崎先輩……」
 撃つことで、突入した友人達を傷つけてしまわないだろうか。
「ぜすたん達はあの中で戦ってる。あたし達は外で頑張ってみよう」
 リンは自分に何が出来るのか考えて、アルマインと未憂を引っ張ってきた。
「水仙のあの子は宮殿にまだいるんだねー。近くにいる人が、守ったり励ましたりしてるかな」
 リンはゼスタが気にしていたアレナのことを思い浮かべる。
「今、傍にいる人だけじゃなくって、あなたのこと大事に思ってる人がたくさん居ると思うよ。あなたが知らなくても、想ってくれてる人が居ると思うよ」
 それからそっと心の中で思う――。
(ぜすたんが好きな子、守んなきゃね)
 そして、大きく息を吸い込んでお腹に力を入れる。
「さー、ミサイルばんばん撃ち落とすよー!」
 リンは威勢よく、イコンを動かしていく。
「マジックカノンが火をふくぜー♪」
「あ、ちょっと、リン、近づきすぎっ! 撃つ場所も考えないと、ええっと、左舷方向を狙った方がいいみたい。攻撃ポイントを映すから待って!」
 受け取った情報から、適切と思われるポイントと未憂はモニターに映していく。
「それじゃ、どんどん撃つよ! みゆう近づいて♪」
「これ以上は危険ですって。……きゃっ!」
 アルカンシェルから放たれたレーザーがカリプテ・ヘレナの腕を掠めた。
「へっちゃら! のーだめーじだもんね!」
 リンはお返しとばかりに、マジックカノンを撃ち、バリアに衝撃を与えていく。