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【ニルヴァーナへの道】月軌道上での攻防!

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【ニルヴァーナへの道】月軌道上での攻防!

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○     ○     ○


「機関室には行かせない」
 機晶姫に感情はほぼないようだが、人の言葉は分かるようだった。
 ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、機関室に向う機晶姫を、敗走しているかのよう見せかけ、小規模攻撃を続けながら誘い込んでいた。
 機晶姫達は要所の破壊だけが目的らしく、人物を狙ってはこない。深追いもしてこない。そのため誘い込みは中々難しかった。
 制御室と連絡をとり、機関室側で有利に戦える場所を導き出して、誘い込み。機関室に続く道は隔壁で封鎖してもらう。
 誘い込む場所は、通路の終点にある倉庫だ。
「通すわけにはいかない」
 ブリタニア(ウルクの剣)と、タイタニア(ウルクの剣)を手に、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は機晶姫に飛び掛かり、剣を降り回し複数の敵に、傷を負わせていく。
 続いて、狂血の黒影爪を使い、身を隠していたエシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)が光条兵器の攻撃対象を敵に限定し、アナイアレーション。
 狭い通路に固まっていた機晶姫がドミノ倒しのように倒れた。
 直接攻撃を受けた者以外は、すぐに起き上がる。
 そして機晶姫達は機晶姫用レールガン、機晶キャノンをアルカンシェルへの影響関係なく放ってくる。
「……っ」
 倒れた機晶姫を盾に、エシクは攻撃のダメージを若干減らした後、逃げるかのように敵に背を向けて走り出す。
 進もうと、機晶姫が足を踏み出した途端。
 倒れた機晶姫の下にセットしておいた機晶爆弾が爆発し、2体の機晶姫の足が破壊される。
「ここは守ります!」
 上杉 菊(うえすぎ・きく)は、鬼払いの弓で機晶姫を攻撃。……しかし、足は狙わない。
 攻撃しては、後退し、爆弾を仕掛けて破壊し。
 敵側の擲弾、爆弾による破壊は、極力ブリザードで攻撃して止めつつ、密かに誘導していく。

 ローザマリアとグロリアーナは先回りし、機関室の上に位置する倉庫へとたどり着く。
 エシクと菊の攻撃で倒れなかった誘導された機晶姫達もすぐに倉庫に迫ってきた。
「休んでいる暇はないわね」
「一気に叩こうか」
 ローザマリアとグロリアーナは頷き合った。
 直後にエシク、菊が駆け込んでくる。機晶姫の攻撃を受けながら。
「随分減ったわね」
 ローザマリアは銃舞で極力敵の攻撃を回避し、真空派を放つ。
 敵を吹き飛ばした後に、奈落の鉄槌を発動。狙撃銃型の光条兵器で機晶姫を倒していく。
「行くぞ」
 グロリアーナはダッシュローラー、兵は神速を尊ぶを。
「了解」
 ローザマリアはゴッドスピードを発動し、驚異的なスピードで敵の方へと走る。
「ごめんなさいね。ここは終点です」
 菊がヒロイックアサルトを発動した状態で、凍てつく炎を放った。
「つまり、こういうことです」
 誘い込んだ倉庫で、エシクは機晶姫の方に飛び、アナイアレーション。
 そして、後方に回り込んだローザマリアが魔弾の射手で、グロリアーナが両手に武器を持ち、連続攻撃。後方から機晶姫を砕いていく。
 誘い込まれた機晶姫達は、崩れて積み重なっていった。
 全て倒した後。
 2人一組で偵察に出していた斥候と、隠者が戻る。
 従者達の報告と、銃型HC弐式に届いた情報を確認して、ローザマリアは息をつく。
「エアロックに向かったトマス達も善戦してるみたいね。こっちも機関室の負担をもっと軽くしないと。隔壁、上げてもらうわよ。次を誘い込みましょう」
 狭い通路での戦いの為、仲間と固まって剣を振るうことは出来ないが、周囲の状況を確認しながら連携重視でローザマリアは動いていく。

(ごきげんよう、優子様。単刀直入にお聞きしますが……)
 指揮で忙しいと思われる為、ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)に手短にテレパシーを送る。
(手に余る敵戦力の場所があればお教え頂きたいですわ。もしくは著しく劣勢の場所……思い当たりましたら連絡をお待ちしておりますわ)
 指揮官自ら危険な場所へ行けとは言いにくいだろう。そう考えてテレパシーで問いかけた。
 自分達は、百合園生でもニルヴァーナ探索隊でもない。戦闘、闘争を求めに来た無頼の輩としてここにいると。
(狙いは機関室とエネルギー室のようだ。特に機関室の方が戦闘スペースがなく戦い難いはずだ。機関室に向かう機晶姫を阻んで欲しい)
(了解です)
 優子にそう答えてテレパシーを終えると、ナコトは牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)と、彼女のパートナーにそれを伝えて、まずは下層の巡回に動くことに。
 アルカンシェル内の通路は、メイン通路以外は狭いため、飛空艇などの乗り物での移動は適さない。
「皆頑張ってますねー。ラズンちゃんおいでおいで〜」
 アルコリアは広い空間に出ると、空飛ぶ箒シュヴァルベに乗って、ビューンと飛びながら通路を巡回していく。
「久しぶりに楽しい戦場になるといーねー、きゃは☆」
「そうですねー」
 移動する機晶姫を確認し次第、アルコリアは魔鎧のラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)を装着。
 ラズンの鎧姿は、悪魔の革で作られたレザーアーマーだ。
「まぢかる☆アルちゃんたんじょー♪」
 そして、ちぎのたくらみで5歳の姿に変身。
 魔法の箒に跨って、ぴゅぅーっと、悪いことを考えている悪の機晶姫集団に突撃。
「えへへ〜。機晶姫のおねーちゃんたちぃ……」
 メタモルブローチを使用し、ラズンの上にエプロンドレスを装着する。
「あっそぼー☆」
 にふふーっと、笑って……。
 叡智の聖霊、クライ・ハヴォックが発動。
「ふしぎのくにへよーこそ、へーたいさん☆」
 炎の聖霊、それからサンダーバードを呼び出し、敵に敵と認識されるより早く、強力な攻撃を浴びせる。
「まて、なんだその戦い方は……!?」
 シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)が、アルコリアに続いて駆け付ける。
 ラスターエスクードを構えて突込み、アルコリアより前に出て機晶姫の攻撃を受けて仲間を守る。
 ……むしろアルコリアの攻撃からアルカンシェルを守る。
「善でも悪でもないさ
ただ、在るだけさ
ただ、居るだけさ」
 戦うアルコリアに纏われながら、ラズンが詩の朗読の様に言葉を発する。
「炸薬のように、悪疫のように、燎原の火のように。……ただ通過するだけ
助けようとなど思わないのさ 恩も感謝も要らない」
「マイロード、貴女に選ばれし魔道書の力お使いくださいませ」
 ナコトはシーマの盾の後ろに隠れ、歴戦の魔術を発動。
 機晶姫達に、まともな攻撃をする時間を与えない。
「おおー」
 機晶姫の狙いの定まらない攻撃が飛び散り、アルコリアの身体を掠める。
「マイロード!」
「全然へいきー☆」
 龍鱗化で攻撃を受けたアルコリアは、ナコトの本体である魔道書をぽーんと投げた。
 アイアンフィストの技能による素手の攻撃――等活地獄を機晶姫達に叩き込んだ。
「まじゅつしだとおもった? ざんねん! ある子ちゃんでしたー☆ うにゃふふふー」
 機晶姫の身体の一部が、破壊され飛び散る。
「まだまだ来るようだ。一旦戻ったらどうだ」
 殺気看破で次なる機晶姫の接近を感知したシーマだが。
「もんだいないー。かわいいーでしょー」
 パシンと魔道書をキャッチして、アルコリアは可愛らしくポーズを決める。
 それから。
「まんたんどりんく、まんたーん」
 栄養ドリンクを飲むようなポーズで、完全回復を自分にかけて。
「かわいいあるちゃんと、たのしくあそぼーねー」
 次なる敵の集団に、歴戦の魔術を放ち、飛び込んでいく。
「わたくしの力、照覧あれ」
 ナコトはシーマの隣で、パイロキネシスを発動。
「待て!」
 発動してから止めても遅い。
 高温の炎が機晶姫達を包み込む。
「うおおおっ、火は危ないだろ!」
 シーマは大きな盾をぶんぶん振って、アルカンシェルの被害を最小限に抑える。
「あるのは搾取さ、その結果助かった者を見て――影で笑む
黎明薄暮の区別のつかない光だよ」
 ラズンはアルコリアに纏われたまま、静かに言葉を続けていた。
「かわいいあるちゃんとたのしくあそばないっていうのかー。そんなおねーさんはすくらっぷ&すくらっぷだぞ、がおー」
 アルコリアはとっても可愛らしい笑顔で、自分を避けて機関室に向かおうとする機晶姫に突撃をして……殲滅していく。