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【ダークサイズ】灼熱の地下迷宮

リアクション公開中!

【ダークサイズ】灼熱の地下迷宮

リアクション

「汚名返上名誉挽回! 『イレイザー一番槍』を冠する自分が何もせずに終わるなんて、耐えられませんっ!」

 吹雪は一戦目の失態を取り戻そうと、またも先陣を買って出る。
 隣にはセリスと御前もいて、

「まったくだ。俺達のチームで一番の功績がマイキーなんて、耐えられない」

 と、息巻いている。
 遺跡へ補給に戻ったチームは、またしてもオアシス到着直後の戦闘となるが、とにかく拠点組とニルヴァーナ捜索隊からの援助をアルテミスに提供する。

「よかろう。皆、我が加護の元、存分にその力を示すがよい!」

 アルテミスは加護を強めて溶岩の熱を完全に遮断し、加護の範囲をオアシスを超えてマグマイレイザーも囲む。

 吹雪とセリス、御前を筆頭にオアシスのドームを出、マグマイレイザーに一刀を入れて開戦の狼煙。

「グラキエス! おまえはこんな過酷な戦いを繰り広げていたか……しかも自分の意思で!」
「ではロア、ゆくぞ……!」

 マグマイレイザーを前に驚くロア。
 レヴィシュタールが【奈落の鉄鎖】を振り回し、それにつながったロアを投げ飛ばす。

「おいちょっと待てええぇぇぇ……」
「うむ。ヒットしたな」



☆★☆★☆



「さあさあハッチャン! 一戦目はダイダル卿に譲ったけど、次は私たちが目立つ番よ〜」

 師王 アスカ(しおう・あすか)が超人ハッチャンの肩を叩く。
 超人ハッチャンはアスカの楽しそうな雰囲気に、若干引き気味。

「あの、アスカ……頼むからこないだみたいな無茶苦茶な戦い方やめてよ……」

 遺跡のイレイザーとの戦いで、アスカに人間爆弾をさせられた超人ハッチャン。
 蒼灯 鴉(そうひ・からす)は超人ハッチャンの頑丈さに改めて感心しながら、

「ていうか不憫野郎、生きてたんだな。さすがに無傷で帰ってくるとは思わなかったぜ」
「いや、そう思うならやらせないでよ」
「はちゃん、あつい……?」

 超人ハッチャンの頭の上では、ラルム・リースフラワー(らるむ・りーすふらわー)がまた水をかけてあげている。

「あー、今そういう場合じゃないけどありがとね」
「で? アスカ。今日の連携技コーナーはどうするの?」

 アルテミスのバリア節約モードが暑かったからと、【ザナドゥの執事服】の上着を脱いで上半身下着になっているオルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)
 そういうセクシーサービスへの反応が下手な超人ハッチャンは、あえてそれに触れず、

「ちょ、コーナーって……ていうか、また何かやらせる気なの?」
「あっはっはぁ、大丈夫よぉ〜。さすがに溶岩が周りにあるのに『ハッチャン・L・ストライク』かましたら、ハッチャン焦げるか溶けるかしちゃうでしょぉ〜」
「さらっと怖いこと言うね、アスカ……」
「ていうかハッチャン、武器って使わないのぉ?」

 そういえば、元は普通の人間で戦闘要員ではなかった超人ハッチャン。
 超人化してからも武器は肉体で、得物を持つようなことはなかった。

「うーん、特にないね。必要に迫られなかったからなー」
「今日のコーナーでは、ハッチャンに武器を持ってもらいたいの〜。私の貸してあげるねぇ。どれがいい?」

 と、アスカは【師王アスカの彫刻刀】【師王アスカの彫刻刀【爆】】【師王アスカの彫刻刀【炎の印刀】】【師王アスカの彫刻刀【黄金】】を並べる。

「アスカって武器マニアなの……?」

 と言いつつも、超人ハッチャンは、

「見た目的にもこの辺かな」

 と、槌状の【師王アスカの彫刻刀【爆】】を手に取る。

「おっけ〜。じゃ、行くわよみんなぁ!」
「で、また説明なしに開始なんだね……」
「だいじょぶだいじょぶ〜。今日は痛くないからぁ!」

 と、アスカはフレイムタンの壁に向かって【黒曜石の覇剣】をきらめかせ、壁を大きく切り抜く。
 同時に鴉が【鬼神力】で、肉体を2倍に肥大させ、頭には角が4本生える。
 オルベールが【カタクリズム】を練り始め、
 ラルムは、

「ぷれいぼおーる」

 と、覚えたての言葉を口走る。
 アスカはくりぬいた石壁を巨大な球状に加工しながら、

「行くわよぉ〜。『ハッチャン魔球返し』ぃ!」

 と叫び、岩の球を鴉がずしりと受け取る。

「行くぜ不憫野郎! おまえの腕力でマグマイレイザーにこいつを打ち返してやれ!」
「うええ! 魔球返しってそういうこと? てかでかくねー!?」
「当たり前だろ。相手はマグマイレイザーだぜ。逃げるなよー。少しでもひるんだら、ラルムごとペシャンだからな」
「ハッチャーン。マグマイレイザーの動きと止めるのは一瞬だから確実にね。大事なラルムを死なせないでね♪」
「ちょ、オルベール! ラルム人質みたいに!」
「からすとうしゅ。だいいっとうでぇす」

 ラルムは超人ハッチャンを信頼しているのか気にしてないのか、実況と審判を兼ねている。

「いっくぜえええ!」
「う、うおおおおー!」
「なげまちたー!」

 鴉が身体をきしませて、岩の球を投げる。
 スポーツ経験は体育の授業くらいの超人ハッチャンだが、思い切り【師王アスカの彫刻刀【爆】】を振る。
 爆発するような音と共に、鴉の初速と超人ハッチャンの筋肉と【師王アスカの彫刻刀【爆】】の連携で、強力な破壊球と化した岩の球が、マグマイレイザーの顔面に直撃する。

「きゃー! すごーいハッチャン!」

 オルベールがブラジャー姿のまま、超人ハッチャンに抱きつく。
 鴉も意外な効果に驚き、

「すげ、マグマイレイザーがよろめいたぜ」
「アスカ! 鴉! これいいよ! 次いこう次!」

 前回の連携技に比べてよっぽど楽で安全な攻撃に、超人ハッチャンも嬉しそうである。

「いっつ! しょー☆たーいむ!!」

 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)が【ちぎのたくらみ】で5歳児に姿を変える。
 何か、星のようなものが視覚効果的にキラキラ周りを走り、ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)が魔鎧化して、アルコリアの身体に装着された。

「あああああ! マイロード、アルコリア様! 今日の変身シーンも格別にかわいらしいですわ!」

 ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)は、顔に両手を添えてアルコリアのスキルに感激している。
 そんな3人の動向をシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)は腕を組んで装備の分析をする。

「ナコト、お前は魔法防御に特化しすぎではないか? マグマイレイザーの物理攻撃にはどう対処する?」
「心配ありませんわ。炎熱耐性を上げてますし、わたくしは距離を置いて攻撃しますもの」
「そうか、まあいい。アル、その【妖刀村正】だが、属性に弱いのではないか?」
「きゃはは☆ラズンの耐性が反映されるから、アルコリアは平気に決まってるじゃない☆」
「そうか、まあいい」

 シーマの小姑のような指摘がことごとく論破される中、ナコトがシーマの装備をけなすように見下げる。

「シーマこそ、その装備……」
「ボクの装備がどうかしたか? 完璧だろう」
「防御性能はまあいいとして……そのヤバいくらいのダサさは何とかなりませんでしたの?」

 シーマは対炎熱、対イコン武器とマグマイレイザーの強さを想定した装備の一番上に【フレイムワンピース】を纏っている。
 能力重視なのは結構だが、さすがにコーディネートのコの字もない。
 シーマには、ナコトが何を言っているのか理解できず、

「さあ、行くぞ。ボクがみんなの盾になる」
「ああ、もうそういう反応ですのね……」
「そいじゃー、容赦なくいっくよー。テロリストとかイレイザーとかは、問答無用でいてこましていいって聞いたし」

 アルコリアは、泰輔の言葉を台無しにするような余計なことを言って攻撃に参加。
 盾になると言ったシーマが、【オートガード】【オートバリア】を発動し、アルコリアたちの前に進み、彼らを【ファイアプロテクト】で補強する。
 ナコトがイコンにも通用するという【対神刀】やら【歴戦の魔術】やら【氷術】やらの強力技を高レベルに任せて撃つわ、アルコリアは【クライ・ハヴォック】で強化した【妖刀村正】の二丁持ちで【魔障覆滅】をかますわ、この1チームだけでとてつもない火力を発揮する。
 アスカたちの巨岩攻撃に加えてこの調子なので、実際、

「シーマ・スプレイグ、推して参る!」

 までもない。
 マグマイレイザーにしても、一向に自分の攻撃ターンが回ってこないので、フラストレーションは溜まる一方だ。
 そこで、このマグマイレイザーは一体目が使えなかった技に出る。

「!? やっ……ばあい!」

 マグマイレイザーが、尻尾をフレイムタン通路のすぐ脇を流れる溶岩に突っ込み、勢いよく弾き出す。
 尻尾に弾かれた溶岩が、散弾銃のように飛沫を飛ばした。
 1200度前後の超高温度。
 一般的な炎と同程度かそれ以下の温度だが、溶岩の恐ろしさはその粘性にある。
 スキル防御をしていても、貼りつこうものなら内包した熱が延々と身体に伝導してゆく。
 岩石の質量の物理攻撃力と、拷問のような熱の責苦。
 炎をぶつける程度のスキルとは、ダメージの質が段違いである。
 アスカや超人ハッチャン、アルコリアを始め、人間達が距離を置くのを見て、マグマイレイザーもこれは有効な攻撃だと気付く。
 溶岩攻撃を押さえるためには距離を取るのはまずいと思うものの、通路内という制限を考えると、一直線に後ろへ下がってかわすしかない。
 ミーナやアイリス、ノーンたちが急いで溶岩の洗礼を受けた者の回復に回る。
 あげく、マグマイレイザーは腹と喉を鳴らし、熱線の充填まで始めている。

「フッ、地底に吹きすさぶ灼熱の嵐……煉獄の飛沫は美しくもある……が、華麗さに欠けるようだね。実に土臭い」

 というのが、ララ・サーズデイ(らら・さーずでい)の感想。

「単純な火力においては、私では到底及ぶべくもないが……やはり、一戦目とは違う華麗な勝利を収めたい。違うか?」

 と、ララはユノ・フェティダ(ゆの・ふぇてぃだ)に流し眼で問う。
 ユノは自分に色目を使ってもしょうがないだろうと思いつつ、

「ララちゃん。そんな言い回ししないで、普通にカッコよく勝ちたいもん! って言えばいいんだもん」
「フッ……戦いの美しさは言葉の美しさ。そんな大人のたしなみは、君にはまだ早かったかな?」
「そ、そんなことないもん! あたしだってそのくらい、わ、分かるもん……」

 と、ララに言われるとついムキになってしまうユノ。
 ララは、涙目でまだ腰を抜かしている向日葵を抱き上げる。

「さあ、もう泣かないで、私の太陽の花。モモといい君といい、ダークサイズには麗しい花ばかりが辛い目に合う。私がダイソウトウ側近になり上がり、そんなダークサイズの悲しい運命を変えてみせよう……」
「はうぅぅ」

 ララは、向日葵の目じりに溜まる涙を、そっと唇でぬぐった。
 続いて向日葵をダイソウの隣まで下げて降ろしたあと、

「リリ。マグマイレイザーを倒す手立ては、考えているんだろうね?」
「あれだけカッコいいこと言っといて、作戦はリリ頼みなのだな……ダイダル卿」
「なんじゃ」
「一つ頼まれごとをしてほしいのだ」

 リリがダイダル卿に耳打ちをする。
 一方、マグマイレイザーの溶岩攻撃をかわせる者が一人。

「本当に溶岩の上を歩けるとはのう」

 【秘湯の飛刀】を使って毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)が溶岩の上を疾走する姿は、まるでマジックだ。

「さてはて。口からは熱線、超耐熱の尻尾からは溶岩。どう戦うがよいかのう。皮膚の裂傷に【アルティマ・トゥーレ】を撃ちこみたいが、皆引いてしまったな。ん? そうか、よし」

 大佐はリリに耳打ちされて『亀川』を持ち上げるのを見て、【毒入り試験管】をマグマイレイザーの目に投げつける。
 慌てて目をつぶり、腕と尻尾を振りまわすマグマイレイザー。

「ほれほれ、私はこっちだ。ボーっとしておると皮膚の裂傷に【アルティマ・トゥーレ】をお見舞いするぞ?」

 と、大佐は溶岩の上でマグマイレイザーを挑発する。
 大佐が仕込んだのは一体どんな毒か分からないが、マグマイレイザーは薄めをかろうじて開け、大佐を追う。
 目論見通り、ちょこまかと動く大佐の動きを封じようと、マグマイレイザーは溶岩に片足を入れる。

「かかったな」

 大佐はすかさず、溶岩に突っ込んだ脚目がけて、【アルティマ・トゥーレ】を放つ。
 大佐が狙ったのは温度差攻撃。
 溶岩で高熱になった部位を急激な冷却で強度を落とそうとしたものだが、

「おや、つまらんな。凍らんではないか」

 【アルティマ・トゥーレ】では、さすがに溶岩を氷結させるにはいたらず、いまいち予想した効果が出ない。

「ふーむ、やはり『亀川』に期待するしかないのう。ダイダル卿、やってよいぞ」

 と、大佐がダイダル卿に手を振る。
 ダイダル卿が『亀川』を抱え、距離を置いてユノがフレイムたんを持ち上げる。

「よし、わしは『亀川』を投げればいいんじゃな」
「うん! あたしはフレイムたんを投げるもん。マグマイレイザーのとこで二人が接触するように投げるんだもーん!」

 『亀川』のスキルを超えた冷気を利用する作戦だが、フレイムたんもとんだことに巻き込まれている。

(きゃんきゃん!)
「ごめんね、フレイムたん。あたしたちのために、ひと肌脱いで欲しいんだもん」
「ダイダル卿、ユノ。やるのだ!」
「おおおりゃああああ!」

 ダイダル卿が『亀川』を投げ飛ばし、同時にユノがフレイムたんを投げる。

「アイスたん! 今こそ解き放つのだ、究極の絶対零度を!」

 と、リリが叫んだ直後、

ばしん!

 マグマイレイザーが尻尾で『亀川』を叩き落とす。

『い……いかーーーーん!!』

 フレイムたんがマグマイレイザーの頭上にちょこんと到着。
 さらにマグマイレイザーが熱線を照射する。
 大佐の毒のおかげで狙いは外れたが、『亀川』はろくに冷気の反応を出さずに、ダークサイズ側にはじき返された。
 すかさず超人ハッチャンが【師王アスカの彫刻刀【爆】】を持って飛びだし、

「ハッチャン魔球返しー!」

 『亀川』をゴルフの要領でフレイムたん目がけてナイスショットする。
 狙いは良かったが、

(『亀川』ったらボクのことキライだから)

 と、フレイムたんがマグマイレイザーの頭から飛び降りる。

『避けてんじゃねーーー!』

 『亀川』は、マグマイレイザーの顔に当たって弾かれ、横の岩壁に当たった後、

どぼん……

溶岩の中に飛びこんでしまう。

『あかーーーーーん!!』

 何故か分からないが、全員関西弁で叫ぶ。
 マグマイレイザーは人間が飛ばしてきた冷たい物体を握りつぶそうと、溶岩に手を入れて『亀川』を掴む。
 いかに無敵の冷気を潜在するとはいえ、それを発揮できないままマグマイレイザーの握力に身をゆだねれば、『亀川』も生き物、待っているのは死である。
 マグマイレイザーは溶岩で濡れた手で『亀川』を持ちつつ、尻尾は通路を挟んだ反対の溶岩に入れており、いつでも散弾溶岩を飛ばせる体制。
 それを警戒して飛びだせたとしても、『亀川』救出には間に合わない。
 我関せずと、フレイムたんは皆の元へ戻ろうとトコトコ歩きだす。
 全員が絶望的な気持ちになっているところ、

「この功績のごほうびは何にしてもらおうかのう」

 大佐がフレイムたんをひょいと持ち上げる。

(きゃんきゃん!)
「わがままを言うておらんで、腹を決めるのだ。ギフト風情が」

 と、大佐は容赦なく『亀川』に向かってフレイムたんを投げた。
 バシバシバシ、という音を立て、フレイムたんと接触した『亀川』から今まで見たことのない強力な反応が起こる。
 『亀川』からマグマイレイザーの掌、腕、肩と、絶対零度が伝播してゆき、今度は予想以上の効果、マグマイレイザーの半身を凍らせることに成功した。
 溶岩に触れて高熱になっていた手首が温度差で崩れ、『亀川』とフレイムたんごと溶岩に落ちる。

『あかんてーーーー!!』

 と、今度は全員飛び出して、『亀川』とフレイムたんの救出、マグマイレイザーのトドメへと走る。
 苦しみの雄叫びをあげて、尻尾の攻撃どころではないマグマイレイザー。

「美しく散れ! 『オーバーヘッド・アイスブリンガー』!」

 と、ララの回転つきの【アルティマ・トゥーレ】が炸裂。

「ララちゃん。その回転の意味って何なんだもん……」
「フッ……」

 続く全員の攻撃で、マグマイレイザーが頭からあおむけに溶岩へ身体を落とす。
 しまいには調子に乗ったのかテンションが上がったのか、

「あーはははは! イエス・マイロード! やはりアルコリア様の美しさと強さには、誰人もかなわないのですわー!」

 と、【パラダイス・ロスト】で広域攻撃をやらかし、アスカたちの『ハッチャン魔球返し』で深くえぐられた岩壁の天井が一部崩落。
 マグマイレイザーに岩石が大量に落下し、しまいには他の地域へ続くと思われる通路を塞いでしまったのであった。