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【終焉の絆】滅びを望むもの

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【終焉の絆】滅びを望むもの

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リファニーを制止せよ!1

「今はともかく、リファニーを連れ帰るのが先だ! 
 行くぞ、ティー! ……あの姿じゃ、特性の見当もつかん。だが知的行動とは縁がなさそうだ」
鉄心はそこで声を張り上げ、滅びを望むものに呼びかける。
「さて、あまり長く時間を取らせるつもりはないが……お付き合い頂こうか」
鉄心は防御メインで動くことをはなから決めていた。拗ねた幼子が暴れるのをやり過ごすように防御することで、”滅びを望むもの”のパワーの発散による消耗を仕掛ければ、リファニーが表に出やすくなるかもしれないとの考えからだ。もっともこの幼子は、いささか手に余るパワーを持っているのだが。リファニーは長い尾を振り回し、鉄心を叩き潰そうとする。鉄心はシックスセンス、行動予測をフルに使い、それをかわす。ヤギの口から炎が長い舌のように噴出すのをアブソリュート・ゼロで氷壁を呼び出し、攻撃を逸らす。
(ひゅう……ものすごいパワーだな……)
ティーがリファニーに呼びかける。
「……貴方が私たちの生んだ咎であるなら、受け入れましょう。ただ、それは滅びではなく、皆の未来を切り開くために、ですッ!」
神条 和麻(しんじょう・かずま)は武器を抜かぬまま、リファニーに向かって行く。鉄心同様、その攻撃をすべて耐えるつもりなのだ。十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)とともにすぐさまそのカバーに入った。リファニーの周囲にはバスターゴブリンが数十体集いている。20人の部下たちに、そちらを制するよう命じ、女神の右手とオートガードで自分とヨルディアの防御を上げると、自らはブラックダイヤモンドドラゴンにまたがり、宙に舞い上がった。
(しがないバウンティハンターとして無茶な仕事は慣れているつもりだったが……。怪物化したリファニーを説得か……。
 まったく、とんでもない仕事を引き受ける事になってしまったもんだ。だがまあ、世界を救うためにやらなきゃならんことは、やるまでだ)
光り輝く神狩りの剣を振るい、あえてヤギの顔めがけて切りつける。けん制攻撃だ。リファニーは咆哮し、炎を吹いた。防御策はそれなりに施しているとはいえ、凄まじい熱気と瘴気を含む炎が宵一を痛めつける。
「くぅっ……なかなか……効くねえ……」
リファニーが宵一の動きに気をとられた隙に、ヨルディアはひそやかにラブアンドヘイトで呼び出したヤドリギと世界樹の苗木ちゃんをエバーグリーンで一気に育成し、蔓をリファニーの全身に纏わせ、少しでも動きづらくしようと図る。黒い体に緑の蔓が急成長して巻きついてゆく。
「リファニー様、すみませんが辛抱なさってくださいましね……」
ヨルディアは植物のコントロールに意識を集中させた。いらだたしげにリファニーがそれを引きちぎっても、その箇所から新たな蔓を生じさせ、網の目のようにその体を覆って行く。和麻が魔鎧『伍式』と、スウェーで防御をあげ、リファニーの前に進み出て両手を広げる。武器を持たないジェスチャーと、異形であってもリファニーを受け止めるという意思表示だ。
「……もうルシアの悲しむ顔は見たくないんだ……その為にはリファニー、お前が居なきゃダメなんだ。
 お前は何の為に”滅びを望むもの”を取り込んだ? ルシアや皆を護る為に自分を犠牲にした事だろう?
 俺は知ってる、リファニーがルシアの事を大切に思っている事を。
 けどお前がルシアを悲しませてちゃ意味が無いだろうが!」
和麻が呼びかけると、リファニーが落ち着きなく身じろぎした。
(リファニーさん……苦しんでるんでふね……僕にも感じ取れまふ……きっと”滅びを望むもの”と、心を戦わせているのでふ……。
 心の底から呼びかけまふ。……どうか、思いが届きまふように……)
宵一のパートナー、頭にムラサキツメクサに似た淡い紫の花を咲かせ、抱き枕のような愛らしい姿の花妖精、リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が別方向から熾天使化を使って光の翼をはためかせ、リファニーの顔の高さまで舞い上がった。
「ルシアさんが心配してるでふ……リファニーさんがこのままでは壊れてしまうと……。
 ううん、ルシアさんだけじゃない、みんな、みんな心配してるのでふ。いつもの、元気なリファニーさんで帰ってきてほしいって、願っているのでふよ……」
リファニーがリイムめがけて黒い瘴気を纏う剣を振るった。蔓の影響で軌道は大振りだ。すぐに宵一がリイムをつかんで、剣戟の軌道から外す。ついでリファニーは鋭い牙で覆われた口をがっと開き、激しい炎を噴き出した。怒りと苛立ちのこもった紅蓮の炎が周囲を灼く。和麻は炎熱をもろに受けたが、その場に踏みとどまり、耐えた。いかに装備とスキルで守られているとはいえ、ダメージはある。炎の熱に彼は咽び、苦しげに呻いた。それでも和麻はそこに立ち続ける、両手を広げて。