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第9章 パンツァーにご奉仕☆

 そして、朝日が昇るときがきた。
 夜明けの光が、大地を染め、パンツァーの神殿を照らしだしていく。
 朝日の光は、神殿の最上部にある聖堂の天井のガラスに射し込み、その内部の御神像に向かって祈りを捧げる、アケビ・エリカと夜薙綾香(やなぎ・あやか)とに輝きをもたらしていた。
 よくみると、聖堂の内部には、ほかにも人がきていた。
「汚いものにこそ、奉仕するべきだもん☆」
 騎沙良詩穂(きさら・しほ)がいた。
「徹底的にご奉仕して、全部抜かせて頂きますね」
 秋葉つかさ(あきば・つかさ)がいた。
「ご主人様! 私は、ご奉仕します!!」
 宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)がいた。
「誠心誠意、ご奉仕しますにゃん」
 神代明日香(かみしろ・あすか)がいた。
 それらの者たちは、みな、眠っている間、何かに呼ばれたような気がして、夢うつつの状態のまま、聖堂の中にやってきたのである。
 エリカを含め、6人の女性は、みな、御神像の前にひざまずき、一心不乱に祈り始めた。
 そして。
 綾香、詩穂、つかさ、祥子、明日香の5人は、今回、自分たちがパンツァーの「巫女」に選ばれたのだと、直感したのである。

「うん!? まぶしい朝日だぜ」
 ロイ・グラード(ろい・ぐらーど)は、目を覚ました。
 ティンギリ・ハンとの闘いの最中、追いつめられて倒れてから、しばらく眠っていたようだ。
 朝日の光が、ロイの身体をまぶしく染めあげている。
 ふいに、ロイは気づいた。
「あっ、この感覚! もしかして!!」
 ロイは、まさぐった。
「あっ、ある! ある! あるぞ! よかったー!! 元に戻ったぞ!!」
 ロイは、突然のことにわけもわからず、ただ喜びの感情だけがあふれだすのを感じていた。
「あるあるって、何がだい?」
 全裸のまま朝日の中を歩いてきたナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)が、ロイに尋ねた。
「いや、別に。ナイチンゲールから、アルゼンチンになった。それだけだ」
 ロイは、謎めいた答えを返した。
「そうか。よかったねぇ。それじゃ、ナガンが、ナイチンゲールだね」
 ナガンもまた、謎めいた笑いを浮かべていう。
「アルゼンチンさん、おそらくそれは、パンツァー神の奇跡だぜ。感謝しなきゃ」
「いわれなくても、わかってるさ。パンツァーは、パンツァーは偉大だ!」
 ロイは、たちのぼる朝日をバックにそびえたつ神殿の最上部に向かって拳を振り上げ、精一杯の敬意を表した。
 すがすがしい気分の中で、ティンギリ・ハンを憎む気持ちなど、どこかに消え去ってしまっていた。

「なるほど。そういうことか。それで、拙者を恨んでいたのか」
 遠くから、ロイたちの様子を見守りながら、ティンギリ・ハンは呟いた。
「だが、おぬしのそれは、拙者がやったことではなかった。どうしてそういう現象が起きたのかはわからんが、おそらく、邪な精霊のいたずらか何かだろう。それにしても」
 ティンギリ・ハンは、すがすがしい気持ちで、神殿が放つ光をみやった。
「パンツァー神。潔く、敬意を表そう。全ての者を愛し、受け入れる、それが、パンツァー神の意向だというのなら、神と比べるべくもなく卑小な存在である拙者は、さしでがましいことはせず、ここでこれ以上の争いを起こすのはやめるとしよう。拙者は、あまりにも小さかった。そのことは認める。さらばだ」
 ティンギリは、決意した。
 鏖殺寺院に帰る。
 帰って、この奇跡のことを報告し、己自身を鍛えるため、また、修行に専念するとしよう。
 だが、ティンギリは、神殿にきてよかった、と思った。
 おおいなる意志に触れることで、少しでも自分の人格を向上させることができたのだから。

 ティンギリだけではない。
 朝日の光、そしてパンツァーの奇跡をみた多くの人々は、慈悲に満ちたおおいなる意志のはたらきに感動し、それ以上争いごとをしようという気が、不思議となくなっていくのを感じたのである。
 やがて。
 時刻が進み、神殿の客室の人々が、起き出す時間になったころ。
 ゴゴゴゴゴ
 神殿は、この地上に現れたときと同じく、再び、大きな振動を始めた。
「な、何だ何だ!?」
 驚いた宿泊客、メイド、マッチョマンたちは、みないっせいに、急いで荷物をまとめると、神殿からチェックアウトして、外に逃げ出していった。
 神殿の内部に、エリカと「巫女」以外の者がいなくなったとき。
 神殿は、すさまじい地鳴りとともに、宙に浮上していったのである。
「パンツァーの神殿が、飛んでいる!」
 人々は、みな、驚愕に目を見開いていた。

「ハッ! ここは、どこですか? 私は?」
 アケビ・エリカは目を覚ますと、自分が荒野の中の、見知らぬ場所に寝ているのを知って、驚いて飛び起きた。
 長い夢をみていたような気がするが、あまり想い出せない。
 何だか、神秘的なものに触れていたような気もする。
「あれは? 巨大な神殿が、空の彼方に浮かんでいますね。いったい、どこに行くのでしょう?」
 パンツァー神のとりあえずの「巫女」としての役割を終えたエリカは、他の宿泊客たちに混じって、神殿が飛んでいって、消えていった方向を、いつまでも見送っていた。

 パンツァーの神殿に宿泊したカップルは、絆がより一層深まる。
 その噂は、本当であった。
 神殿が去っていった後も、宿泊客たちは、誰も、寂しいとは思わなかった。
 なぜなら、最愛の人が、既に側にいたからである。
 人々は、愛する者同士、互いに手と手を取り合い、パンツァーのおおいなる志を賞賛しながら、それぞれの帰宅の途についていた。
 パンツァーが、自分たちに教えてくれたもの。
 それを、帰ったら、他の人たちにも伝えていきたいと、考えながら。


担当マスターより

▼担当マスター

いたちゆうじ

▼マスターコメント

 今回、巫女に選ばれた方々は、神殿と一緒に飛んでいってしまっていますが、後日、自分たちの家にそっと帰してもらっていますので、ご安心下さい。
 巫女に選ばれたからといって何が義務があるわけではなく、たいした特典もありませんが、今後、いたちのシナリオでパンツァーが出ることがもしあれば、巫女として振る舞うことができるでしょう。

 今回のシナリオ、純愛系のアクションが多く、執筆していて、心が洗われるようでした。
 いろいろ心配して下さった方もいますが、「コメディタッチの、ほのぼのとしたネタをやるなら問題ないだろう」と思って企画したので、多分、大丈夫かと思います。

 それでは、みなさんも、パンツァーが教えてくれた、おおいなる「愛」の志を胸に、今後も人生が有意義なものになるよう努めていきましょう。

 いたちの次のシナリオの発表時期は、全く未定です。
 公私ともに忙しくて、オフィシャルイベントにも参加できません。申し訳ありません。

 それでは、このシナリオに参加頂いたみなさん、ありがとうございました。