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【2021修学旅行】血の修学旅行

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【2021修学旅行】血の修学旅行

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第1章 ガイドを襲わないで下さい。

「はーい、みなさん。もうすぐシボラに着きますわよ。野獣ばかりの危険なところですので、いまのうちから心の準備をして下さいね」
 舗装されていない道をゴトゴトと揺れながら走るバスの中で、崩城亜璃珠(くずしろ・ありす)が上品な口調で生徒たちに呼びかけていた。
 シボラへの修学旅行。
 危険極まりないジャングルのただ中の、「ラゾーン」と呼ばれる聖域に全裸で立ち入って古代のパンツを発掘しようという、スリリングそのものともいえるその旅行には、まさに選ばれし生徒たちが参加していたのである。
「よーし、いいぜ! いよいよ闘いだな! くう、わくわくするぜぇ!!」
 浦安三鬼(うらやす・みつき)が、力強く手を上げて亜璃珠の声にこたえ、冒険の予感から武者震いにわななく肩を揺すらせた。
「三鬼。何だかんだいって、みんなと一緒にバスに乗ってるのよね」
 魔威破魔三二一(まいはま・みにい)が、そんな三鬼に囁くような調子でいった。
「うん、まあな。みんなバスで行くっていうんだもんな。それに、この修学旅行は目的地に着いてからが本当の闘いなんだぜ!!」
 三鬼はそういって、親指を上げて、ニコッと微笑んでみせた。
「はあ。なるほどね。そうなんだ」
 三二一は、それ以上話す気も起きないのか、三鬼から視線を外して、窓の外の景色に目をやった。
「はい、ジャングルがみえてきましたわね。このバスは、ジャングルには入れませんので、鬱蒼とした森の側にバスが停車しましたら、みなさんは降りて、徒歩で探検を開始することになりますわ。各自、装備の点検を怠りなくやって下さいね」
 亜璃珠は、バスの前方の、恐るべき未開の地を手で示しながら、それぞれの話をガヤガヤ続ける生徒たちに語りかけ続ける。
「それにしても、なぜ崩城さんがガイドをやっているんですか?」
 風森巽(かぜもり・たつみ)が、疑問を口にした。
「何となく、流れでやることになったみたいですよぉ。まっ、この中では非常に上品なお姉さんですからねぇ。本人も、はまってやってますしぃ。ところで、あんたは、どうしてシボラに行きたいと思ったんですかねぇ?」
 クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)が、風森の疑問にこたえる。
「えっ? ああ、この腕輪のためですよ」
 風森は、ゲゲの腕輪をクドにみせて、いった。
「おや、この腕輪は? ググの腕輪に似ていますがねぇ」
 クドは、目を細めて腕輪を検分しながらいった。
「ググの腕輪と一対になる、ゲゲの腕輪というものらしいです。ふとした偶然から手に入れたのですが、古代パラ実文明の秘宝とされているとかで、この腕輪のことが何か、シボラの遺跡でわかるんじゃないかと思いまして」
「古代パラ実文明の秘宝? はあ、そりゃまた、とんでもない代物ですねぇ。ですが、そんなものがそう簡単に手に入るとも思いませんけどねぇ。けど、何ていうのか……あれ? 不思議ですね。何か感じますよ、これ」
 風森の話を聞いて肩をすくめてみせたクドだったが、腕輪に指が触れたとき、脳の奥に不思議な鼓動を感じたのだった。
「どうしたんですか? 顔色が悪いようですが」
 風森は、クドの様子を気遣った。
「いえ。実は、お兄さんは、パンツの声に導かれるようにして、この旅行に参加したんですが、この腕輪からも、その、不思議なんですが、パンツの声が聞こえるような? うん?」
 クドは、目をつぶって何かに耳を澄ませるような仕草をしてみせたが、何もわからなかったのか、首を振って、風森をみた。
「ああ、すみませんでした。気のせいだったんですかねぇ。でも、この腕輪は、パンツと何か関係があるという気がしますよ。そして、あんたがこれを手に入れたのは、偶然ではないという気がしますねぇ。ええ」
 クドの言葉に、風森は首をかしげたが、それ以上腕輪の話をすることはなかった。
「それはそうと、崩城さんがガイドをやってくれてるおかげで、エリカさんはだいぶ肩の荷が降りたんじゃないでしょうか? 何しろ、彼女が仕切り役をやるたびに、野獣同然の男たちからいやらしい視線を受けていたんですからね」
 風森はいった。
「うん? そうでもないわよ。確かに、自分に視線が集まることはなくなったけどさ。今度は今度で、亜璃珠の心配をしなきゃいけないのよね」
 三二一はそういって、バスの最前列の席で、亜璃珠をかばうように立ち上がったアケビ・エリカを指した。
「みなさん! ガイドの亜璃珠さんのいうとおり、これからジャングルの中に入ります。薄暗くて危険なことをしたくなるかもしれませんが、間違っても、ガイドさんを捕まえて押し倒すようなことをやってはいけません!! そんなことは、決して許されないことですから!! いいですね?」
 エリカは、大きな声で生徒たちに釘を刺すような口調でいった。
 生徒たちは、ちぇっという顔をしてみせた。
「エリカさん、大丈夫ですわ。みなさん、古代の神秘あふれるジャングルを探検したくてうずうずしてるんですから、ジャングルの中でそんなことを考えたりはしないと思いますわよ。ね?」
 亜璃珠は、エリカの話に驚いたような顔をしてみせて、いった。
「亜璃珠さん。私もそう信じたいんですが、こういっておかないと、本当にやってしまう人がいるんです。みなさんの行動をいつもみていれば、わかりますよ」
 だが、このときはまだ、亜璃珠は、エリカのその言葉を本気にすることができなかったのである。 
 
「さあ、着きましたわ。みなさん、私の後に続いて、くれぐれも道に迷わないようにして下さいね」
 亜璃珠は、バスから降りてから、生徒たちを苦労して整列させると、旗を掲げながら、鬱蒼としたジャングルのただ中に分け入っていった。
 だが、いったそばから、亜璃珠の指示どおりにはならなかった。
「ヒャッハー!! ジャングルだぜえ!!」
「うっきー!! 密林が俺を呼んでいるー!! お、おほほほほほ、はっぴやー!!
 生徒たちは歓声をあげながら、亜璃珠を追い抜いて、ジャングルの中に我先にと飛び込んでいったのである。
「ああ、ちょっと。危険ですわ。みなさん!!」
 亜璃珠とエリカは、慌てて生徒たちを追い駆けていく。
「さあ、地元の人を探そう! ラゾーンのことをいろいろ聞くんだもん」
 湯島茜(ゆしま・あかね)は、生徒たちの歩む方向から外れて、独自の道を模索し始めた。
「ここがシボラのジャングルでありますか。非常に開放的な気分になれる場所であります!!」
 そういって、エミリー・グラフトン(えみりー・ぐらふとん)は獣化してナベゾームの姿となった。
「あっはっは!! 愉快、愉快!! さあ、探検するであります!!」
 ナベゾームは歓喜の叫びをあげながら、ジャングルの中をぴょんぴょんと跳ねて移動していった。
「エミリー。水を得た魚のようだね」
「いえ。ナベゾームであります」
 茜の言葉にそう答えながら、エミリーは気の向くまま、風の向くままにジャングルの中をうろついていく。
「エミリーさん! ですから、はぐれないようにしていただきたいですわ。迷子になりますわよ」
 亜璃珠の声も、エミリーを止めることはできない。
 獣化したエミリーが、ジャングルの中で迷うことなどはないのだ。
「こんにちはー!! 湯島茜です!! 誰かいませんかあ?」
 茜もまた、エミリーの後をそろそろと追いながら、地元の人々と接触しようと、声をあげてまわっていく。
「茜さんも、地元の人々なんて、こんなところには」
 いないですわ、という声を亜璃珠は飲み込んだ。
 というのも、茜の声にこたえるかのように、ガサガサと薮をかきわけて、筋骨隆々とさせた、半裸の男たちが現れたのである!!
 それは、「地元の人々」というよりは、「原住民」と呼んだ方が適当ではないかと思えるいでたちであった。
「う、うわあ!!」
 突然現れた男たちの異様な姿を目にして、茜は、驚きとともに、お目当ての存在に出会えた感動が入り混じった歓声をあげていた。
「ヒャハア。ヤンノカヨ?」
 男たちは、カタコトの言葉で茜に語りかける。
「は、はじめてまして。湯島茜だよ。よろしくね」
 茜は、とりあえずコミュニケーションしようと、自己紹介して、ニッコリ微笑むと、原住民たちに握手の手を差し出した。
 バシィッ!!
 男たちは、そんな茜の手に力いっぱい拳を叩きつけていた!!
「う、うわあ。あ、熱い!!
 茜は、男たちの拳の熱さを掌いっぱいに受けて、痛さと感動の入り交じった悲鳴をあげていった。
「湯島殿。この者たちは、それでも友好的に振る舞っているつもりなのです。この先に、この者たちの村があります。そこで、みなさんを歓迎したいという所存であるようです」
 ジャングルの先を偵察して戻ってきたエミリーが、戸惑い気味の茜にいった。
「そ、そうなんだ。あ、ありがとう。ヒャハアって、パラ実の人たちじゃなくても使うんだね」
 茜はそういって、ニッコリと笑うと、歩きだした男たちの後についていった。
「みんなも、一緒にきてね!! 歓迎の宴をやってくれるって!!」
 茜の声に、他の生徒たちもぞろぞろとついてきた。
「パラ実の人たちじゃなくてもって、もしかして、この人たち、古代パラ実の人々の末裔なんじゃ?」
 三二一もまた、首を傾げながら茜たちについていくのだった。

「オー。ヨクキタナ。ヤキイレタルゾ、オンドリャア!!」
 原住民の村に着くと、村の人々が総出で生徒たちをお出迎えし、長老と思われる白髪の老人が、茜にガンを飛ばしながら恫喝ともとれる言葉を述べた。
「あ、ああ、こんにちはあ」
 とりあえず挨拶する茜。
「湯島殿。この長老は、こういっておられます。『よくきたな。おぬしたちが来るのを待っていた』と」
 エミリーが、長老の言葉を翻訳してみせる。
 エミリーは、恐るべき原始の本能により、原住民たちが何を伝えようとしているかがわかるようだった。
「オーホッホッホ。パンツァ、パンツァー!!」
 長老は茜の身体をぎゅっと抱きしめてニコッと笑うと、その手を引いて、村の中央にある広場に導いていった。
「湯島殿。長老は、『おぬしたちは、パンツァーに導かれし者たちだ。是非、このシボラの、いや、世界の危危機を救って欲しい』といっておられます」
 エミリーは翻訳を続ける。
 他の生徒たちも、茜たちについて、広場にまで歩いていった。
 そして。
 広場には、肉や魚の料理、そして、お酒が並べられていて、生徒たちを歓迎する宴の準備が完了していたのである。
「あら、いいわね。もう飲み会ができるだなんて、最高だわ!!」
 綾原さゆみ(あやはら・さゆみ)は歓声をあげると、早速席について一杯やり始めた。
「さ、さゆみ。こんなところでいきなり飲み始めちゃって、いいのかしら?」
 アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)が、困惑した表情でそういいながらも、さゆみの隣に腰を下ろす。
「いいも何も、宴なんだから! さあ、楽しむわよ!!」
 アデリーヌとは対照的に、さゆみはもう盛り上がっている。
 他の生徒たちも、さゆみにつられるように腰を下ろして、宴の料理に口をつけ始めた。
「うーん、味つけはおおざっぱだが、食材が新鮮だな!! 量もある!! 最高だぜ!!」
 三鬼もさっそく適応して、宴の料理に舌鼓をうち始めた。
「えー、でも、トカゲとかワニとか、ゲテモノみたいなものも結構あるけど? みんな、よく食べられるわね」
 三二一は原始的な食材の数々に目を丸くしていたが、周囲の生徒たちがなりふり構わず貪り始めたのをみて、比較的食べやすいものから食べようと努めた。
「はあ、お腹いっぱい。もう食べるのはいいから、歌ったり踊ったりしたいところね。ところで、私たち、何しにここにきたのかしら? この人たち、何で歓迎してくれているのかしら? ああ、もうどうでもいいわ。何もかも忘れて楽しみたいわね!!」
 さゆみは手を打ち鳴らしてリズムをとりながら、陽気に歌い始めた。
「はあー、シボラのー、ラゾーンの、乙女はー、すっぽんぽんー」
 さゆみの歌を聞いた生徒たちはみな笑い声をあげると、一緒になって歌い始めた。
 どこどこ、どこどこ、どこどこどこどこ
 原住民たちも、宴を盛り上げようと太鼓を叩いて、さゆみの歌に勢いをつける。
「うーん、しかし、ここまで歓迎されるとは。原住民たちは何を期待してるんでしょう? パンツァーに導かれし者たち、とは、いったい? どっちかというと、みんな、煽られてきただけという気もしますが」
 風森は、宴を楽しみながらも、どこか、不思議な気持ちになっていた。
 再び、荷物からゲゲの腕輪を取り出して、撫でてみる。
「風森。相当気に入ってるようだけど、何でその腕輪をしないんだ?」
 三鬼が尋ねた。
「ああ。つけてみたいのはやまやまなんですが、実はこの腕輪をすると、なぜか、カタコトの言葉遣いになってしまうんですよ。まっ、この村を出るころにはつけようと思っているんですが」
 風森がそういったとき。
「ウッヒョー!! ガチョーン!!」
 原住民たちは、風森の腕輪をみて、いっせいに驚きの声をあげ、両手を天高く掲げながら、ぴょんぴょんと飛び跳ね始めた。
「な、何だ? 何が起きたんだ!?」
 骨つき肉にかじりつきながら、三鬼は異様な光景に目を丸くした。
「これは、どういうこと? みんな、何をいってるの?」
 茜も、ぽかんとしている。
「湯島殿。この者たちは、この腕輪に刻まれた紋章に見覚えがあるようです。正直、それがしも、この者たちのいっていることが全て理解できるわけではありませんが、長老の話を参考に、だいたいの内容を要約してみせましょう」
 エミリーは、茜に、原住民たちの話を翻訳した内容をまとめて聞かせた。
 原住民たちは、最近、ジャングルの遺跡で邪悪な獣人たちが行っている邪神の復活の儀式を非常に恐れている。
 1万年前に封印されたというその邪神が、急に力を強めてきたことを知ったのは、見知らぬ長身の男がこの村を訪れてからだった。
 ナイアルラトホテップと名乗るその男は、ある日突然現れると、邪神の復活が近いことを原住民たちに伝え、邪悪な笑いを浮かべると、ジャングルの遺跡を訪れ、獣人たちに何らかの知恵を与えて、どこかへ去っていったという。
 復活の儀式が盛んになりだしたのは、それからだという。
 原住民たちは、1万年前に邪神を封印する導き手となったというパンツァーという不思議な存在の加護を願い、毎日のように祈祷を繰り返していたところ、生徒たちが現れたので、パンツァーの使いだと信じてしまったというのである。
「なるほど。しかし、そのナイアルラトホテップという男は、何をしたかったんでしょう? 獣人に知恵を与えると同時に、原住民たちにも邪神のことを教えるとは。まるで、対立構造が起きるのをどこかで期待しているようにも思えますね」
 風森は首をかしげた。
 結局、この腕輪が何なのかもはっきりしない。
「そんなのどうでもいいじゃない。ぱーっといきましょ、ぱーっと!!」
 あゆみは風森の肩をびたびた叩いてゲラゲラ笑ってみせた。
「ヒャッハー。俺は、パンツァー・イタチューンという謎の存在に、パンツ四天王に任命されたことがあるぜ!! どうやら、パンツァーが動き出しているようだな。このジャングルで、謎を解明するとしようぜ!!」
 南鮪(みなみ・まぐろ)も、陽気な口調で風森にいった。
「でも、僕は思うんだけど、ラゾーンって、本当に全裸でなきゃ入れないのかな?」
 ふと、トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)がそんな疑問を口にした。
 トマスのその発言に注目した者はほとんどいなかったが、南は目を細めて、トマスを興味深そうにみつめて、いった。
「ほう。いいことに気づいたな。どうしてそう思うんだ?」
「全裸、とは、身にまとう防具もなければ、闘うための武器も手にできない状態だ。全裸でなければ入れないという噂を流した連中は、発掘する学生たちの武装解除を意図していたのかもしれない。軍人だからかな、そんな気してならないんだ。まっ、真偽のほどは、ラゾーンに着いて、僕が制服のまま入ることができるかどうかで、すぐわかるんだけど」
 トマスは、冷静な口調でそういった。
「私も同意見ですね。もっとも、本当に全裸でなければ入れなかったのだとしても、私は裸になるつもりはありませんが」
 トマスの隣の魯粛子敬(ろしゅく・しけい)が、うなずいていった。
「私も同感だわ。とりあえず、ラゾーンについたら、魯先生と一緒に簡単な脱衣所をつくって、みんなの荷物をあずかる仕事をしようと思うの。何か厄介な敵に襲われるという気がしてならないし、そのときはそのときでみんなに闘いを促すわ」
 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)もまた、うなずいていった。
「でも、話が本当だったときのために、俺を獣化させて、一応全裸ってことで発掘をやらせるんだろ? 別に構わないけど、原住民の話だと、このジャングルには獣人がうようよいそうだな。激しいバトルが起きそうな予感だぜ」
 テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が、勢いよく鼻を鳴らしていった。
「わーっはっはっは!! そうかそうか。いや、感心感心!」
 トマスたちの話を聞いた南は、愉快そうに笑っていった。
「まっ、全裸になったんじゃ、パンツもなくなっちまうわけだからな」
「はあ? あの、そういうことをいいたかったわけでは」
 トマスは、南の話に眉をひそめた。
 だが、南はお構いなしに話を続ける。
「まずパンツを履いてもらわなきゃ、脱がす楽しみがなくなるものな。まったく、全裸でなきゃ入れないなんて、パンツに対する冒涜もいいところだぜ!! 考えてもみろよ。かつて、ノーパン派とパンツ派が争ってパンツ派が勝利したってんなら、全裸でなきゃ入れない聖域があるってのはおかしいだろうが。まっ、パンツ派の中に紛れ込むかたちで生き残ったノーパン派が、パンツ派が求めるパンツを封印するためにそういう聖域をつくったんじゃないかという説も考えられるがな。いずれにせよ、ラゾーンに行けば真相がわかるってわけだ。楽しみだな、おい!!」
 南は、いっきにまくしたてると、豪快な笑い声をあげた。
「パンツを脱がすことには興味がないけど、パンツ派が勝ったのに全裸の聖域があるのはおかしい、というのはもっともだね」
 トマスも、南の話に一理あると感じずにはいられなかった。
「……ねえ、実際はどうなの? ラゾーンは、本当に全裸でなきゃ入れないの? もしそうなら、どうして全裸でなきゃいけないの?」
 茜は、南とトマスのやりとりを聞いて、どうしても長老に尋ねずにはいられなくなった。
 長老なら知っているはずだ。
 シボラの秘密。
 そして、ラゾーンの秘密を。
 だが、長老が口を開き、エミリーが翻訳を始めたとき、他の生徒たちは料理をすっかりたいらげて満足し、そろそろ行こうかと腰をあげ、村を去ろうとし始めたのである。
「さーて、そろそろ行くかー!! かーっ、うまかったな。よし、やる気満々!!」
「みんな、待って。いま、真相を聞くよ」
 茜は他の生徒たちに声をかけるが、みな、聞こえていない様子で、再び我先にと、ずんずんジャングルに分け入っていく。
「湯島殿。長老もラゾーンのことはよくわかっていないようですが、それがしがラゾーンとされる場所の位置を説明したところ、何か思うところがあったようであります。もう少し話を聞いてみましょう」
 エミリーは、茜にいった。
 そして、生徒たちは、茜とエミリーを残して、颯爽と村を後にしていったのである。