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【2021クリスマス】大切な時間を

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第3章 半年経ったね

 機晶姫である天海 北斗(あまみ・ほくと)にとっても、今日は特別な日だった。
 防水構造ではなく、飲食も一切出来ない北斗には、食べたり飲んだり、泳いだり、風呂に入ったり。そんなデートは出来ないけれど。
 それでも、今日が恋人と過ごす大切な日であることに変わりはなかった。
 北斗はほぼ全身が大破した状態で、転がっていたところ、パートナーの天海 護(あまみ・まもる)に拾われて、修理され再起動した後、護と兄弟として契約を交わした。
 再起動前の記憶はほぼ失っている為、自分が何の為に作られたのか。
 どんな風に生きてきたのか――。
 その記憶はほとんどない。
 北斗にとっての生は、再起動をしてから。
 護に助けられ、そして……大切な人、レオン・ダンドリオンと出会ってから、過ごした日々が、生きている、記憶に残っている時間だ。
「今日はオレの誕生日だけど、覚えててくれてるかな」
 待ち合わせの場所に急ぎながら、北斗はレオンを想う。
 きっと覚えていてくれるだろう。
 去年も、彼は祝ってくれたから。
 出会ったのは去年の夏。
 彼を好きになったのは、北斗の方から。
 休暇を一緒に楽しんだり、一緒の任務で頑張ったり。
 共に過ごしてきて、そしてようやく恋人同士になれたのが、半年前。
 出会って2度目のクリスマスは、2人きりで過ごす予定だった。
 話したいことはいくらでもある。
 1年半、苦楽を共にしてきた思い出が思い浮かんでいく……。
 飲食が出来なくても、温泉に入れなくたって、2人でしたいことは沢山あった。
「これからもずっと、一緒に過ごす為に」
 結婚……はまだ早いかもしれないけれど、婚約をしたいなと。
 北斗は考えながら、笑みを浮かべた。
「今年は2度目のクリスマス。来年も、その先もずっと、いっしょに居られますように」
 そんな言葉が、北斗の口から流れ出た。
 レオンも同じ気持ちでいてくれているだろうか。
 海を眺めながら。
 オレンジ色の光の中で。
 付き合うか、と。
 恋人として、よろしくな、と。
 言ってくれたあの日のままの気持ちで。
 ずっと、自分の隣に。ずっと彼の隣にいられるだろうか。
「愛してるぜ、レオン!」
 こらえきれない想いを口にしながら、北斗は大好きな人の下に駆けていった。