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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ 妹の証明 ■
 
 
 
 ニューヨークにある実家に帰ったセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)は、取り敢えず玄関の扉を開けてみた。
「……やっぱり」
 それなりに大きな洋館なのだけれど、玄関には鍵が掛けられていない。
 おまけに、中に入ってみればろくに掃除もされておらず、館内には埃が溜まっている。
 予測は付いていたものの、セシルはため息を吐きつつ兄の研究室へと向かった。
 
「ただいま帰りました」
 そう声をかけて研究室のドアを開ければ、兄のケヴィン・フォークナーは実験の最中だった。
 こちらをじろりと見やると、怪訝そうに尋ねてくる。
「誰だ?」
「誰だって……セシルですわ」
 何の冗談だと思ったけれど、ケヴィンの顔は至って真面目だ。
「セシルだと? 何を言っている、セシルはまだ子供だ」
 ケヴィンは妹の名を騙る女の胸や尻を無遠慮に眺め、うむと頷く。
「無いな。セシルはもっと幼児体型だった筈だ」
 一体いつの話をしているんだと呆れかけ、セシルはその原因に思い当たる。
 確かに兄に最後に会った時にはそうだったかも知れない。
 どうやら兄のセシルに対してのイメージは、最後に会ったときのままで止まってしまっているようだ。
「年月が経てば私だって成長します」
「いや、少し会わなかった間にこんなにデカくなる筈が無い」
 きっぱりと断言するケヴィンに、セシルは頭痛を覚える。
「どうしてお兄様はこう、人の話を聞かないのでしょうか……」
 セシルがそう呟くとお前が言うなという幻聴が聞こえたが、そんなものは無視することにする。
 物わかりの悪い兄を殴りたくなるのを必死に堪えて、セシルは学生証や写真などの証拠となりそうなものを、色々と取り揃えてケヴィンに見せた。
「この学生証にある名前は、セシル・フォークナー。そして写真は今の私と同じ。それから……この写真に写っているのは……」
「妹のセシルだ」
「ええ。で、次の写真はその少し後。こうして順に並べていくと、今の私になるでしょう?」
 どうして妹だと証明するのにこんなに苦労しなければならないのだと内心ぼやきながらも、セシルは証拠を提示していった。
 
 そしてやっと。
「確かにセシルだ。どうりでどこかで見たような顔だと思った」
 ケヴィンは目の前にいる女性が、自分の妹のセシルだと認めてくれた。
「本当に、お兄様は手がかかって仕方ありませんわ」
 こんなことに苦労するとは思わなかったと小言を言いながらも、セシルは兄の世話を焼いた。
 両親は世界中を飛び回っていて滅多に家には帰って来ないし、兄は研究に没頭してばかりで身の回りのことは適当に済ませてしまうだらしなさ。放っておけば廃墟になってしまいそうな家と、浮浪者のようになってしまいそうな兄を何とか出来るのは、今はセシルしかいない。
「お兄様、こちらの白衣に着替えて下さい。ああ、そこは掃除しますからしばらく向こうに行っていて下さいます?」
「今は実験中なんだが……」
 研究の邪魔をされて煩わしそうにしつつも、兄は大人しくセシルに世話を焼かれる。口では文句を言っていても、内心は満更でもないのだろう。
「次に会うときには、妹の顔を忘れないでいて欲しいです。そうでないと……今度こそ殴ってしまいそうですもの」
 物騒なことを言いながらも、セシル自身もこんな実家でのひとときを懐かしく感じるのだった。