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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

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【冬季ろくりんピック】激走! ペットソリレース!

リアクション

 スクリーンにメリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)が大写しになる。「わーい! みんな見てる!」と大喜びだ。
 直後にロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が、メリッサの襟首を引っ張って「失礼しました」と頭を下げた。
「できれば優勝とか目指すべきなのでしょうが、楽しい思い出を作るのが一番なのじゃないかなと思います」
 質問に対しては、マイクに向かって、一言一言丁寧に答える。
「秘策……と言うほどのものではありませんが、事前の下見やナビゲートも完璧にしてありますから」
 そこでカメラがシャロン・ヘルムズ(しゃろん・へるむず)を映す。シャロンは籠手型HCを調整しつつ、空飛ぶ魔法を試していた。
「シャロンが上空からナビゲートしてくれますの。先々の危険な場所や、順位などもしっかり把握できますわ」
 ロザリンドの答えに、他のチームから「その手があったか」「今からじゃおせえや……」との声が聞かれる。
「それでも、まず目指すのは完走です。途中でトラブルに遭遇している人がいれば、積極的に救助を手がけたいと思います」
 観客から拍手が起こった。 

 フライングヒューマノイドと拳で語り合っていた佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)にマイクが向けられる。
「いやぁ、これがパラジツ式ですからねぇ」
 おそらく波羅蜜多実業高等学校の生徒であろう観客から「いいぞ!」の声が出る。
「もちろん鞭ばかりじゃなく、飴も用意してあるよぉ」 
 弥十郎は自慢の腕前を振るった料理を見せる。
「頑張ったみんなには、ご馳走するつもりなんだぁ。それがぁ、上司としての務めってもんだよぉ」
 弥十郎の横では熊谷 直実(くまがや・なおざね)が緊張気味に背を正している。
「はい、わたくしが下りを任されました。下り坂は一の谷を……」
 言いかけたところで、熊谷直実の視線が中をさまよう。弥十郎に促されて、ハッとマイクに向き直る。
「愛馬に乗れないのは残念だが、そこは期待に応えたいものです」
 パラミタセントバーバードの頭を撫でる。
「もちろん目指すは優勝だよぉ。直実君と隙をついて、やるだけやってみるからねぇ」

「目指すは東シャンバラの総合勝利。このレースを足掛かりに、栄光への道を切り開きましょう」
 きっぱり言い切ったリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)に、東チームの生徒が歓喜で応えた。
「速さを重視したいので乗員は一人だけで参加。選手村の整備が進んでいないものですから……運が良ければ、転んだりしませんわ」
 ここでカメラがナカヤノフ ウィキチェリカ(なかやのふ・うきちぇりか)を映す。チルーとペンギンを連れている。
「順位次第なんだけどね。交代しても問題無さそうなら、チルー4頭をパラミタペンギン4羽と交代。交代してる暇がなければ歴戦の回復術でチルーの体力を回復させ、そのまま走らせるつもりだもん」
 カメラがリリィに戻る。
「チルーは高山の生物ですから、山に強そうな気がしたんですけど、物をひくタイプの生き物ではないかもしれませんね」
 そこでリリィが周囲を見る。他にもチルーを引き手にしているところがいくつもあった。
「結果次第では、チルーの可能性も引き出すことができるかもしれません。さて、どこまで行けるものでしょうか……」

 スクリーン前のヴィゼント・ショートホーンに戻る。
「OK! 東チームはこれで全部だ。骨のありそうなやつもいれば、本当に勝負になるのかってやつもいたな。しかしレースに出ようって意気込みはお前らなんかよりも数段上等だぜ! じゃあ次は西チームだ。ビューティーズ、よろしく!」
 火村 加夜(ひむら・かや)セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)達が、西チームの場所に移動した。

 スクリーンに桐生 理知(きりゅう・りち)北月 智緒(きげつ・ちお)、そして彼女達とチームを組んだ辻永 翔(つじなが・しょう)が映る。
「できれば優勝したいけど……、ゴールは必ずしたいです」
 桐生理知に続いて、辻永翔が「とにかく勝つ! それだけだ」と宣言した。
「理知に誘われたんで一緒に、と思ってな。引き手は賢狼を十分な数用意してある。怪我をしたり疲れが見えたりしたら、交代ポイントで変えていく予定だ」
 交代ポイントを担当する北月智緒にもマイクが向けられる。
「修理の練習はしたわ。レース中の理知からの連絡を受けて、修復箇所を把握しておけば、交代ポイントに入ったらすぐ修理できるでしょ」
 しっかり打ち合わせが済んでいるところを語る。
「乗員は変わらないっていうか邪魔しないって感じ? せっかく二人で頑張ってるから応援するの!」
 そんな智緒の応援を聞いた理知は、瞬く間に顔を赤くした。

 馬 超(ば・ちょう)ラブ・リトル(らぶ・りとる)高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)の姿がスクリーンに映ると、観客席のコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が声を張り上げた。
 それが聞こえているのかいないのか、ラブ・リトルがカメラに向かって愛嬌を振りまく。
「うん、3人で別々のところを走るのよ。あたしは軽いから湖の担当なの。ここがこのレースの勝負どころ! 超軽量&スピード勝負よ! 使うスキルは激励よ! 引っ張る皆を応援しまくっちゃうんだから!!」
 無愛想な馬超に代わり、鈿女が説明する。
「最初の登りはスパルトイを用意したわ。スタミナ優先で、攻撃への回避も余裕を持ってできると思うわ。私の乗る下りは急カーブの連続ルートだから、ここからは小回りが効いて、なおかつ賢い狼軍団で進むわ。第二セクションで差を大きくつけることが出来たならばスピード重視で、ソリのダメージが大きかったり、相手にすぐ後ろに追いすがられているようならば事故回避重視で進む予定よ」
 懇切丁寧な説明と共に、ボリュームのあるバストに男性観客の視線が集中する。バストが揺れるたびに、一部の男性からは「おお!」と歓声があがった。
 インタビューを聞き届けたコアは、交代ポイントに先回りしようとしたが、またしても雪に足を取られて下半身まで埋まってしまう。
「こ、こんなはずでは、せめて手伝いくらいしたいものだが」
 あがけばあがくほど、推定600キロ体は雪に埋もれていった。

 酒杜 陽一(さかもり・よういち)酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)がスクリーンに映ると、一部からはブーイングが聞こえた。波羅蜜多の生徒ながら、西チームに参加してたからだ。 
 しかしアナウンスと高根沢 理子(たかねざわ・りこ)の呼びかけもあって、すぐに静かになる。
 ゲッソリとした陽一がインタビューに答える。
「いろいろ言われるのは分かってるけどな。ろくりんピックを盛り上げようと思ってさ。勝つのは大事だけど、見る人を楽しませるのも、もっと大事かなって」
 インタビューを聞いた観客から、パラパラと拍手が起こる。
「あ? 体重? うん、30キロまで絞ったけど……やりすぎたかなぁ」
 女性から「どんな方法なんだろう」とヒソヒソ話す声が聞こえた。
 パートナーの酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)にマイクが向けられる。
「私はやめておきなさいって言ったんですけど、全然聞かなくって」
 言葉とはうらはらに、カメラに向かってパチンとウィンクする。
「第一、身長はそんなに代わらないのに、私より軽いってのが、頭にくるって言うか、ムカツクって言うか…………あら、私、何言ってるのかしら」
 大きく手を振って、何もなかったかのように取り繕う。
「わたげうさぎとパラミタペンギンに頑張ってもらうわ。私は陽一のフォローに徹します」
 2人のインタビューを聞いた高根沢理子が拍手をする。他の観客も拍手を送った。
 
 クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)が連れた式神が映ると、「そうか式神か……」の声がアチコチから聞こえる。
「ああ、本部には確認済みだ。問題なしとの返事があった」
 自身たっぷりにクレーメックが答える。
 パラミタホッキョクグマや犬も引き手として用意しているが、クモワカサギは目を引いた。
「交代ポイントでは式神の術のみだな。それで時間のロスを最低限に抑える予定だ」
 術を担当するヴァルナにマイクが向けられる。
「ねぇねぇ、30キロってホント? わたくしなんていろいろ頑張ってるのに…………、あ、映ってるの?」
 あわてて身なりと言葉を改める。
「えーと、参加を認められて良かったわ。ダメだったら、参加を断念しようと思ってたくらいだから」
 傍らのクモワカザギをポンポンと叩く。特大のクモワカサギや大きなクモワカサギはさすがに目に付く。
「あとはどれだけ集中していけるかね」
 目標を聞かれたクレーメックが「まずは一勝して、勝ち点30を上げよう!」と宣言すると、観客席の西チームから大きな歓声が聞こえた。

 犬系のペットやクマ、ペンギンなどが多い中で、キノコマンを連れた高峰 雫澄(たかみね・なすみ)には注目が集まった。
「なぜか付いてきちゃったんですぅ。数には違反してないしー、いざと言う時は楯役にはなるかなぁってー」
 雫澄の答えに、会場かわ笑いが聞こえる。
「妨害行為はしないけどー、やられた時の備えはしておかないとねぇ。作戦? それは第玖号に……」
 マイクが魂魄合成計画被験体 第玖号(きめらどーる・なんばーないん)に向けられようとしたが、カメラには誰も出てこない。
「ああ、どこか行っちゃったかなぁ。開始までには戻ってくると思うんだけど……」
 既に魔鎧形態で雫澄が装着していたのだが、これも作戦の一部とばかりに、第玖号が姿を現すことは無かった。
 ── 擬似的にレース中に乗組員の人数を変更する……ってのが僕らの作戦だねぇ ──
 ── ……まぁ、他の人も思いつきそうな作戦ではあるし、油断は禁物……だけどね? ──
 それ以上、語ることなく雫澄はカメラに向かって手を振った。
 
 ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)がスクリーンに映ると、大きな歓声が湧き上がる。誘った宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)も誇らしげだ。
「トラブルに対応しやすいように、できるだけ2人でソリに乗ったほうがいいのだけど……。凍った湖の上を走るんじゃ、ソロのほうが良いかなってティセラに頼んだの」
 祥子の説明を受けて、ティセラが手を振ると、またしても歓声が上がった。
「それにしても30キロって何よ。私の半分くらいじゃない。もちろん身長差もあるから、理想体重なんて一概に言えないけど……」
 憤慨する祥子にティセラが苦笑しながら「まだ映ってますわ」とささやいた。
「ああ、ごめんなさい。ケンタウロスにシルバーウルフ、ケルベロスなんかを用意したの。状況に応じて変えていく予定だから、交代ポイントの時間ロスを、いかに少なくするから問題ね」
 ティセラにもマイクが向けられた。
「せっかく誘っていただいたんですもの。全力で頑張りますわ。気になるのが妨害行為ですけど、わたくし達はなるべく回避する方向で行くつもりです」
 コメントが流れると、もう何度目かというくらいの歓声が上がった。