天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

シャンバラ一武闘大会

リアクション公開中!

シャンバラ一武闘大会
シャンバラ一武闘大会 シャンバラ一武闘大会

リアクション

 

第三十八試合

 
 
『続いては、氷室 カイ(ひむろ・かい)選手対、真田 幸村(さなだ・ゆきむら)選手です』
「最強の座、狙ってみるのも悪くはないか。催しごととはいえ、手加減はせぬ。殺すつもりで参られい!」
 そう言うなり、真田幸村が猛禽龍【鬼灯】を呼んだ。赤い翼竜が真田幸村の背中に貼りつき、身体をつつみ込むようにして真田幸村の翼となり、尾と角を形作る。
「ずいぶんと派手だが……まあいいだろう。初戦の相手はおまえか、よろしく頼む」
 威圧的な真田幸村の姿にも動じず、氷室カイがブラックコートの裾を靡かせつつ静かに武舞台を進んできた。
 それぞれのシンボルは、真田幸村が頭の上の紙風船、氷室カイが腕につけたタイラントアームだ。
『さあ、試合開始です』
妖刀【雲蒸龍変】!」
 開始直後、氷室カイが斬撃を飛ばした。
後には退かぬ!
 真田幸村が、長槍の轟咆器【天上天下無双】でそれを相殺する。
「そうか」
 敵が動かないのを見て、氷室カイが突っ込んできた。敵の間合いに入る前に、刀の鞘を投げつけて牽制とする。だが、槍の柄で鞘を弾いた真田幸村が、弧を描くように動いて刀の切っ先を躱し、逆に穂先で氷室カイに斬りつけた。
 思わずタイラントアームで防ぐものの、シンボルに深々と傷が刻まれてしまった。
「俺の負けか……」
 大会のルールでは、シンボルを守れなければ負けとなる。
「もしよければまたいつか勝負をしてくれ。そのときまでにもっと強くなっておく」
 そう言い残すと、氷室カイは潔く武舞台を下りた。
『勝負ありました。勝者、真田幸村選手!』
 
 
第三十九試合

 
 
『続いては、キネコ・マネー(きねこ・まねー)選手対、キーマ・プレシャス選手の戦いです』
「ふふふふ、暴力女もすでに敗退したことですらに、一気に優勝を狙いますのらー!」
『キネコ・マネー選手、何やら邪悪なオーラにつつまれています。招き猫的には、それでいいのでしょうか?』
「とりあえず、豚猫を倒して日銭を稼がないとね」
『対するキーマ・プレシャス選手、ガイドさんやったり屋台で売り子したりと、いろいろバイト生活が大変なようですが、ここでどんな戦いを見せてくれるのでしょうか。それでは試合開始です』
「それじゃあ、いくよ!」
 レイピアを構えたキーマ・プレシャスが、シンボルとした大きな羽根つきの鍔広帽をくるりと回して言った。
「先手必勝ですら!」
 キネコ・マネーが、シンボルである千両箱から小判型手裏剣を投げつける。
「そんな物」
 キーマ・プレシャスが、マントを翻して小判を弾き落とした。
 突き出されるレイピアを、キネコ・マネーがぶっとい手を使った猫招きで左右に弾く。
「いただきですら!」
 一瞬の隙を突いたキネコ・マネーが、ひょいとキーマ・プレシャスの帽子を弾き飛ばした。
『勝者、デブ猫……キネコ・マネー選手です!』
 
 
第四十試合

 
 
フィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)選手の不戦勝です』
 
 
第四十一試合

 
 
『さあ、この試合は樹月 刀真(きづき・とうま)選手と……』
「ちょっと待て、俺の対戦相手のこいつはなんなんだ!!」
 対戦相手のマジック・スライムを指さして、樹月刀真が怒鳴った。
『対戦相手です』
 淡々と、シャレード・ムーンが答えた。
「マジック・スライムは、今回出てこないはずじゃなかったのか!」
 樹月刀真が、シャレード・ムーンに言い返す。
『武舞台の周りにはいませんが、せっかくなのであいている枠に突っ込まれたようです。とりあえず倒してください。でないとすっぽんぽんです』
「すっぽんぽん……」
 なぜか、その言葉に反応して、漆髪月夜が武舞台の端っこにガブリつく。
 シンボルであるネクタイを分解されたら試合としてはアウトだが、それ以前に、すっぽんぽんが樹月刀真的にはアウトだ。
「こいつは、斬ったら増えるんだったよな……。顕現せよ、黒の剣! あーもしもし、月夜さん、そういうわけで光条兵器の出前を」
 携帯を取り出して、樹月刀真が漆髪月夜に言った。
「取りに来ればいいのに……」
「武舞台から落ちたら負けだから……うわっ」
 話してる間にスライムが寄ってきて、樹月刀真があわてて逃げだした。とにかく急いで、そばに用意してあった廃自動車でバリケードを作る。
「お前だって、俺のすっぽんぽんは……ま、まさか……」
 こくりと、漆髪月夜がうなずく。
「こ、こら、馬鹿なこと考えてないで、早く光条兵器ください!」
 携帯にむかって、樹月刀真が懇願した。スライムが、じわじわと廃自動車を乗り越えてきた。
「仕方ない……んんっ……」
 漆髪月夜が、黒の剣を転送する。
 ふっと、樹月刀真の携帯近くの空間に黒の剣が現れた。すぐさまそれをつかみ取ると、柄頭に携帯を接続する。
死神の姿を見た者よ……灰燼と化せ!
 間一髪、樹月刀真が迫りくるスライムに黒の剣を振り下ろした。光条に焼かれたスライムが、一撃で灰となる。
『勝者、樹月刀真選手でした』
 
 
第四十二試合

 
 
『では、次の試合です。ジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)選手対、カガリ グラニテス(かがり・ぐらにてす)選手です』
「相手はどこにいるのだ?」
 ミニシルクハットの先に紙風船をつけたジャワ・ディンブラが、空中で羽ばたいてホバリングしながら対戦相手のカガリ・グラニテスを探す。
「もらった!」
 突然隠れ身から姿を現したカガリ・グラニテスが、ジャワ・ディンブラの背後から襲いかかった。全自動防衛尖翼の先につけたダガーで斬りつけてくるところを、すんでのところでジャワ・ディンブラが躱す。
『ああっと、開始の合図を待たずして、カガリ・グラニテスがしかけた。ゴング鳴らして、早く早く』
 シャレード・ムーンの指示で、あわててゴングが鳴らされる。
「礼儀を知らぬ奴だな。叩き落としてくれよう」
 戦闘域を離脱しないように注意して飛び回りながら、ジャワ・ディンブラが言った。
 カガリ・グラニテスは、自らのコウモリの翼と、極度に小型化した飛空艇ヘリファルテをフライヤーとして高速で飛び回っている。顔の半分を隠したシンボルのマフラーが、激しく風にはためいていた。
 たちまち、激しい空中戦が始まる。
 火術のブレスを断続的に吐いて弾幕を張るジャワ・ディンブラに、カガリ・グラニテスが死角に入って姿を隠しながらブラインドナイブスで一撃必殺を狙う。
 戦いの場がもっと広ければ、遠距離からの帯域魔法でジャワ・ディンブラの方が有利なのだが、この狭い空間ではリングアウトしないようにする方が至難の業であった。
 御神酒をかけられた吉兆の鷹が、火をつけられてジャワ・ディンブラに突っ込んでいく。
「酷いことを」
 ジャワ・ディンブラが、火術で鷹のみをつつむ炎を吹き飛ばす。その隙を突いて、カガリ・グラニテスがリターニングダガーを投げつけてきた。
「囮か!」
 わずかに反応の遅れたジャワ・ディンブラの紙風船がリターニングダガーで割られる。
『勝者、カガリ・グラニテス選手です!』