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第21試合

 
 
『さあ、第21試合に参りましょう。
 イーブンサイド、謎の覆面パイロット、マスク・ド・NAORI、謎の覆面サブパイロット、マスク・ド・MIYUKI☆……。搭乗するイコンは不知火・弐型です。ええっと誰でしょうかこの人たち』
「イコンからバレバレじゃないの」
 マスクコンビの正体が綺雲 菜織(あやくも・なおり)有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)だとあっさりと見抜いたカチェア・ニムロッドがつぶやいた。
「それにしても、美幸ちゃんも大変よね」
 不知火・弐型はジェファルコンをベースとした機体であるが、フローター部分を大きく改造し、ビームウイング部分をアンチビームファンを装備したイコンホースに換装している。ライトブルーグレイの機体は装甲が強化され、ジェファルコンよりもかなり丸みを帯びたシルエットとなっていた。その左肩には、エンブレムが刻まれている。
『オッドサイドは、AI制御の量産型饕餮です』
 こちらは、不知火・弐型よりも二回りは大きなイコンとなっている。三人乗りで、メインパイロット外部からリモコンで操作するという仕様だ。操作は、リモコンが全てであり、中に乗っているパイロットたちは、ただ乗っているだけというステキ仕様である。
『私より強い奴に会いに行く!!』
 コーナーポストの上に腕を組んで仁王立ちになった不知火・弐型から、綺雲菜織の声が響いた。ステージは、海上に浮かぶメガフロートのリングのようだ。ちゃんとコーナーポストとロープまで張られている。
『――ちょっと、恥ずかしいから座ってください』
 パイロットシートの上に不知火・弐型と同じポーズで格好つけて立っている綺雲菜織にむかって、スクリーンに映し出されてはたまらないと有栖川美幸が言った。実際、海上のサブスクリーンには、一部始終がしっかりと流れてしまっている。
「分かったのだよ。ひっぱるな。さあ、いくぞお!」
 コーナーポストから飛翔すると、不知火・弐型が量産型饕餮に突っ込んでいった。すかさず、饕餮パンチがくる。
 スラスターで避けつつ、不知火・弐型がイコンホースを射出した。イコンホースに取りつけたアンチビームファンで、リフレクター攻撃をするつもりだ。
 アンチビームコーティングされたシェルフフローターを鳥の羽のように広げたイコンホースと連動しつつ、不知火・弐型がビームサーベルで斬りつけようとした。だが、量産型饕餮は不知火・弐型ではなく、メガフロートそのものに饕餮パンチを叩き込んだ。それによって、足許のリングが大きくゆれる。
「しまった……」
「大丈夫です」
 思わず転倒しそうになるのを、有栖川美幸が上昇して立てなおす。
 それにしても、量産型饕餮の動きがちょっと変だ。
 
    ★    ★    ★
 
「何持ってるの? あたしもやりたい!」
 シミュレータ近くで何やらノートパソコンをごそごそやっている久我浩一を見つけて、綺雲菜織たちを見送ったばかりの彩音・サテライト(あやね・さてらいと)が駆け寄ってきた。
「こ、こら。遊びじゃないんですよ」
 コントローラーを取られないようにと久我浩一が彩音・サテライトを避けた。
 今までゲストイコンは全てAI制御と言うことになっていたが、そのAIの元となっているのは、久我浩一とリカイン・フェルマータのデータだ。もの凄くやっつけの思考ルーチンである。そのため、今のところ、はっきり言って全敗している。ゲストイコンであるからそれで問題はないはずなのだが、ちょっとシャレード・ムーンの視線が冷たかった。
 そのため、今回は四人乗りと言うこともあって、リカイン・フェルマータが実際にシミュレータに乗り込んで、久我浩一が疑似リモコンのパソコンを操作することにしていたのだが……。
「遊びたーい」
 彩音・サテライトに飛びつかれて、久我浩一の手元が狂った。
「ああ、敵ではなくてリングを……」
『ちょっと、何やってるのよ!』
 久我浩一の操作ミスに、シミュレータの中からリカイン・フェルマータが怒鳴り返した。中で振り回されているリカイン・フェルマータとしては、変な動きはたまったものではない。それでなくても、量産型饕餮はお世辞にも乗り心地がいいとは言えないのだ。
「やりたーい!」
 彩音・サテライトが、久我浩一にだきついた。その拍子に、久我浩一の手からノートパソコンが落ちる。
「あっ!」
 あわててメインスクリーンを見ると、量産型饕餮が転けて派手な水飛沫を上げて海中に落ちるところだった。当然、量産型饕餮に水中活動機能はない。つまり、泳げないのだった。
『だから、何を……ぶくぶくぶく』
 リカイン・フェルマータの悲鳴が途中で途切れた。
 
    ★    ★    ★
 
「えっーと。とりあえず、私の方が強かった!」
 相手が自滅したけれども、勝ちは勝ちだ。綺雲菜織が、雄叫びをあげた。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、不知火・弐型です』
 もう、何をやっているのよと、彩音・サテライトをつまんでいる久我浩一を軽く睨んでシャレード・ムーンが言った。