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第15試合

 
 
『第15試合を開始いたします。
 イーブンサイド、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)パイロット、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)サブパイロットによる、深き森に棲むもの
 オッドサイド、湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)パイロット、高嶋 梓(たかしま・あずさ)サブパイロットによる、ウィンドセイバー
 深き森に棲むものは、ベーシックなアルマインマギウスである。カボチャ爆弾にとんがり帽子というちょっとお茶目な外観であるが、射撃武装の充実した意外と容赦のない仕様である。
 対するウィンドセイバーは、腕のハードポイントにギロチンアームとサンダークラップを装備し、バスターライフルとツインレーザーを構えたときにも即座に攻撃できるようになっている。
「このステージは……」
 格納庫上方に開いた穴から外に出た湊川亮一が、ちょっと眉を顰めた。ここのは、世界樹のようだ。
「敵はアルマインタイプのようです。これはちょっと……やっかいかも。データ記録開始します。センサー、全方向索敵開始……。いました。上方、距離80」
 高嶋梓が、赤外線探知センサーの反応を頼りに湊川亮一に告げた。
「ふふふふふ。旧型のイコンだって腕次第では充分戦えるってこと、見せてあげるよ」
 言うなり、カレン・クレスティアが深き森に棲むものを被っていたマントを脱ぎ捨てた。ふわりと蝶のような翅が広がり、深き森に棲むものが飛翔する。
『よろしくお願いしますね』
『あっ、ども』
 ちょっと律儀に高嶋梓が挨拶を入れ、カレン・クレスティアがそれに答えた。
「ターゲット移動……」
「むっ、枝が邪魔だな……」
 素早く動く深き森に棲むものの反応を高嶋梓が追って湊川亮一に報告するが、密集した巨大な枝で反応が途切れ途切れになる。足に爪を持つアルマインは、枝などを掴むことによってありえない角度で機体を固定できるためその機動がとても掴みづらい。
遅いよ
 深き森に棲むものがビームアイで攻撃をしかける。回避運動を取ったウィンドセイバーが、枝の一部に引っ掛かってバランスを崩しかけた。ツインレーザーライフルで牽制しつつ、なんとか身を隠す。だが、間断なくマジックキャノンの砲撃が周囲の枝を燃え上がらせていく。
「調子に乗りすぎるでない。もっと接近せねば、あたるものもあたらぬぞ」
 回避を優先して動き回るために今ひとつ定まらない狙いに、無駄弾が多すぎるとジュレール・リーヴェンディがカレン・クレスティアを諫めた。
「え〜、だって、深き森に棲むものが壊れたりしたら嫌だもん」
 ぶーっと、カレン・クレスティアがむくれた。愛着のある機体だけに、傷一つつけたくないらしい。
「戦いで、傷もつかずに勝てるなど甘いぞ。傷はイコンの勲章なのだ!」
はうう〜。わかったよ、ここから、本気モードだよ!
 ジュレール・リーヴェンディに叱られて、カレン・クレスティアが叫んだ。
「敵は、今ひとつ動きがぎこちないですね。あちらも、こちらをちゃんと捕捉できていないのかもしれません」
「試してみるか……」
 湊川亮一はウィンドセイバーを移動させると、枝の陰に回り込み、そこにあった大きめの枝をギロチンアームで叩き斬った。
 バサバサと音をたてて枝が落ちていく。
「そこっ!」
 それに反応したカレン・クレスティアが、深き森に棲むものを前進させてカボチャ爆弾を投げつけた。
「待て、あれは違うぞ!」
 ジュレール・リーヴェンディが指摘したが遅かった。直上に回り込んだウィンドセイバーが、真下に見える深き森に棲むものにむかって狙いを定め、バスターライフルのトリガーを引いた。
累積ダメージ、限界……
 ジュレール・リーヴェンディが報告するまでもなく、直撃を受けた深き森に棲むものが周囲の枝を薙ぎ払いながら落下して爆散した。
「ひー、粉々だよお!」
 シミュレータの中から、カレン・クレスティアの悲鳴が聞こえてきた。
 
    ★    ★    ★
 
『勝者、ウィンドセイバーです!』