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命の日、愛の歌

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命の日、愛の歌
命の日、愛の歌 命の日、愛の歌 命の日、愛の歌

リアクション

 デザートを楽しみながら、主役の2人を見ていたルカルカが、ふと目があった神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)にふわりと笑みを見せた。
「素敵な婚約式ね。優子さんは、前に恋人を『今は必要ない』って言ってたけど、今も?」
「そうだな、私は仲間やパートナーに恵まれてるから」
 優子はルカルカに微笑みながら、そう答えた。
「にしても、意外なところに先を越されたわね。しかも相手が神だなんて随分な玉の輿じゃない?」
 しかし、優子の隣に座っている崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)としては、悔しさもあって。
 素直に祝福しにくかった。
「……そういえば、結局晴海ちゃんってどういう子だったの?」
 さくらんぼパイを手に、亜璃珠は優子に尋ねてみる。
「私はそんなに付き合いが深かったわけじゃないから、今のままだとただの「裏切り者」っていう印象しかなくって。それで好き嫌いを判断する気はないんだけど……このままだとちょっとこう、気持ちが悪いのよね」
 そう言う亜璃珠の手から、優子はパイを取って、自分の口に運んだ。
「優子さんはないの? そういうの。一応命を狙われたりもしたんでしょう?」
「確かに……そうではあるんだけれど、後に、桐生や本人から聞いた話からすると」
 優子はレストと晴海を見ながら、考え込むような、難しい顔で話していく。
「逆なのかもしれない。私はあの場にいた者達と、彼女のお蔭で生きているのかも……」
 もし、優子の殺害を命じられたのが晴海ではなかったら。
 優子はもっと確実な方法で命を狙われて、殺されていたかもしれない、と。
 晴海であったから、優子を殺すことを躊躇し、殺さない方法を組織に願い出てくれて……彼女だったからこそ、自分は助かったとも言えるのではないかと。
 少なくても、晴海と彼女のパートナーのクリスの役割が反対だったら、優子はもっと追い詰められていただろう。
「それ以外にも、気がかりな事がある。……第七龍騎士団と激しくぶつかった時。ユリアナという女性を討った時。囮となった私達に、大きな被害がなかったこと。というか、何故私は討たれなかったのか」
 自分がもっと役割を果たせていたら、大荒野の戦況は変わっていた。ユリアナの未来もまた違ったものになっていたかもしれない。
 今、優子には龍騎士の護衛がついている。
 ロイヤルガード隊長である彼女にもしものことがあったら、外交問題は勿論のこと、戦争にすらなりかねない。
 当時は今より重要な立場ではなかったが、それでも優子は帝国にとって邪魔な存在、討つべき対象であったはずだ。
「なんか、私は色々な人に助けられ、護られてる。そんな気がする。いつか自分も、護るべき対象を、この身を賭して全身全霊で……」
「はいはい。今は戦争中じゃないのだから、そんなこと考えない」
 不安を感じて、亜璃珠は優子の言葉を遮った。
「そう、今は別に戦争をしてるわけでもないし、今更どう思ってもいいんでしょうけど……とりあえず今は2人に、『おめでとう』でいいわね」
 亜璃珠のその言葉に、軽く笑みを浮かべて優子は頷いた。
「……それにしても婚約、そして結婚、か」
 亜璃珠はブルーベリーケーキを手に、再び主役の2人に目を向ける。
「私達もするのかしらね? あんな風に綺麗な格好して、これでもかってぐらいにきらきらしちゃってさ」
「亜璃珠は、何度もしそうだよな」
「優子さん……」
 亜璃珠は優子を軽く睨む。
 冗談だよ、と優子は亜璃珠の手からブルーベリーケーキを取って笑った。
「とはいえ今のところ自分の人生の半分を預けたくなるような人とは出会って……は、まあ、いるんだけど」
 ちょっと目を逸らして、亜璃珠はフルーツタルトを引き寄せた。
「ああ、同性婚もアリなんだっけ。私がドレスで優子さんがタキシードでもいいのよ?」
 などと、茶化すように言うと。
「タキシードも着てもいいけど、自分の結婚式には十二単が着たい」
 そんな真面目な返事が返ってきた。
「とはいえ、今は全く結婚願望がないんだけど。政略結婚なら場合によってはやむを得ないとも思うが……。亜璃珠は結婚の利点ってなんだと思う?」
「利点はあるだろうけれど……。やっぱり結婚はまだ早いのかしらね」
 一緒に暮らして、苦楽を共にして支え合って生きる。
 1人の人を得る変わり、失う自由もある。
 少なくてもメインテーブルで微笑む御堂晴海には、龍騎士団の団長であるレスト・フレグアムの妻になる覚悟があるように見えた。
「ところで優子さん……」
 優子はフルーツタルトを食べながら「なんだ?」答える。
「さっきから、私、空気しか食べてないんですけれど?」
「大丈夫だ、空気は沢山飲んでも、殆ど重くはならない」
 亜璃珠が食べようとしてとったデザートは、悉く優子に奪われてしまっていた。

「そう、遠くない未来にお2人は結婚されるのでしょう〜」
 席に戻ったメイベルは、テーブルの上のブーケを眺める。
 これは村の人達や、訪れた人々に手伝ってもらいながら、晴海が用意した花々だ。
 このブーケは、会が終わった後は、幸せの御裾分けとして参加者に贈られる。
「結婚式のブーケトスは喜びのリレーのバトンの手渡しに似ていますねぇ。次の方に喜びをつなげるために〜」
 2人も、挙式では誰かに花のバトンを渡すのだろうか。
(1人から、2人へ。さらにまた、1人、2人と新たな生命のつながりが出来ていく)
 花と、花に囲まれた会場、そして、花の中の主役2人を見ながら、メイベルは微笑みを浮かべる。
(親から子へ、子から孫へ。 生命だけではなく、思いや記憶、様々な物が糸がより合わさるように重なり、次へと紡がれます。そんな新たな旅立ちの場面に立ち会うことに――感謝します)
 目を細めて、2人を、集まった人々を見ながら。共に、幸せを感じながら。
 自分も、いつかそういう機会に出会えればと感じる。
 花のバトンを受け取れる日が。そして、渡す日が――。

 披露宴の最後には、ハーフフェアリー達が、サプライズでフラワーシャワーを行った。
 上空から、主役の2人に愛の花を。
 参加者に、色とりどりの造花の花びらをかけていく。
 ふわりふわりと舞飛び、人々の身体に舞い落ちて。
「おめでとう」
「あなたの人生に幸あれ!」
 純白のドレスを纏った半妖精たちが、婚約した2人と、集まった全ての人々を祝福した。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

いつもありがとうございます、川岸満里亜です。

このシナリオを行うにあたり、6月ということもあり結婚式にするかどうか迷ったのですが、レストの心情的にもユリアナの件の結末を得てからと考え、婚約式に止めました。

レスト、晴海との会話に、ユリアナの件についてのお言葉が含まれていたアクションに関しましては、婚約式中ではなく、式前のシーンでじっくり描かせていただきました。

蒼空のフロンティアが始まって3年。
このシナリオは、皆様と共に自分が創ってきたお話しの、大きな区切りとなるシナリオです。

ご参加、ありがとうございました。
貴重なアクション欄を割いての私信も、本当にありがとうございます。お返事を書く余裕が持てず、申し訳ありません。

今後のシナリオでも、また皆様にお会い出来ましたら幸いです。