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地球に帰らせていただきますっ! ~5~

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地球に帰らせていただきますっ! ~5~

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 ■ 遠藤寿子の里帰り ■



 遠藤 寿子(えんどう・ひさこ)が1人で帰省すると聞いて、崎島 奈月(さきしま・なつき)は同行を申し出た。
 山形にある寿子の実家までは上野から随分距離がある。パートナーのアイリが一緒に行けないのなら代わりに自分が、と考えたのだ。
「うちはかなり遠いけど、いいのかなぁ」
「遠いからこそだよ。それに、友達と一緒に帰ったらご家族も、ああ向こうでうまくやってるんだな〜、って安心できるところもあるんじゃないかな」
「それはそうだけど……せっかくのお休みなのに、ほんとに私なんかの帰省に付き合ってもらっていいのかな……」
「いいのかなじゃなくて、むしろ是非お願いします」
 寿子はまだ心配そうだったけれど、奈月がそう強く頼むと、じゃあよろしくお願いしますと頭を下げた。


 里帰り当日。
 空京駅で待ち合わせた奈月と寿子は新幹線で上野に、そこから更に乗り換えて山形県を目指す。
「あ、荷物持ちますよ」
 荷物を持とうと手を出すと、寿子はいいですよぉ、と首を振る。
「だって私よりずっと荷物多そうだし……」
 寿子が持っているのは小さめの旅行カバン1つだけだけれど、奈月の荷物は一体何が入っているのだろうと思うくらい、かなり多い。
 ぱんぱんに膨らんだカバンを見ている寿子の視線に気付き、奈月は荷物を開いて見せた。
「こっちはアイドルコスチューム、それからスクール水着。こっちの大きいカバンには十二単が入ってるんだよ。それからこっちは……」
 1人でのんびりしている時にでも着てみようかと思って、と奈月は持参したコスプレ衣装を寿子に見せた。
「わぁ……」
「コスプレは好き?」
 身を乗り出した寿子の様子に、奈月は聞いてみた。
「したことないですけど、嫌いじゃないし、いつか着てみたいなぁ」
「良かったら、これ着てみます?」
「うーん、でも帰省中はそんなことしてられないかな」
 残念だけどと言う寿子に、そうですよねと奈月は荷物を閉じる。
「ではまたいつか。その時までに寿子さんに似合いそうなコスプレを見繕っておきますよ。まあ、寿子さんなら何でも似合いそうだけどね」
「そんな……私なんて……」
 寿子はとんでもないと首を振った。
 いかにも自信なさげな態度だ。
「寿子さんってこんなにかわいいのに、自信無さそうにしてることがあるけど、なんでなの?」
 前から不思議だったことを奈月が尋ねてみると、途端に寿子は萎縮した。
「わ……私なんかかわいくないよぉ」
 気弱に呟くと、行こ、と寿子は歩き出した。


「うちはここだよぉ」
 やがて寿子が指したのは、1棟のマンションだった。
「ただいまぁ」
 インターフォンに呼びかけると、お帰りなさいという声と共にエントランスへの扉が開いた。部屋でロックを解除してくれたのだろう。
 大理石の床と壁のエントランスは、洒落た内装に柔らかな間接照明が灯り、まるでホテルのロビーのようだ。
 遠藤家はマンションのエレベータを降りた左の突きあたりにあった。
「お帰りー、ひーちゃん。あれ、友達も一緒?」
 ドアを開けてくれた姉が、奈月を見て首を傾げる。
「うん。一緒に来てくれたの」
「崎島奈月です。パラミタでは寿子さんにお世話になってます」
 奈月が挨拶すると、姉は寿子の髪をくしゃっとかき回した。
「向こうでいい友達が出来たみたいだね。良かった良かった。さ、2人とも上がって」
 姉はさっさとスリッパを用意しだした。寿子と違い、明るくくだけた性格のようだ。
「あ、いえ僕はここで失礼します。女の子の実家にお邪魔する訳にはいきませんから」
 寿子が帰省で羽を伸ばせないと、パートナーのアイリが遠慮した意味もなくなってしまう。だから近くにあらかじめ、奈月は宿を取ってあった。
「えー、上がっていけばいいのに」
 姉は更に勧めてきたけれど、奈月は笑ってメールアドレスを書いたメモを寿子に渡した。
「これ僕のメアドです。男手が必要な時は気軽に呼んで下さい。荷物持ちでも草むしりでも、家事でも、BL同人モデルでもなんでもやりますよ」
「あっはっはー、面白い子ね。ほんとに寄ってかないの?」
「はい。でももし良かったら、花火大会は寿子さんと一緒に行ってみたいな」
「あ……」
 誘ってみると、寿子は口ごもりながら姉の顔を見た。恐らく家族で行くことになっているのだろう。
「ご家族と行く予定なんだったら、僕は遠慮しますけど……」
 寿子を困らせてはいけないと奈月が言いかけると、姉の方が寿子に代わって答える。
「いいよ。人数多いほうが楽しいから。さじき席にもちょうど1人分余裕あるからね」
 姉の返事に寿子はほっとしたような顔になり、じゃあまたその時に、と奈月からもらったメールアドレスのメモをちょっとあげて見せる。
「待ち合わせの場所とか時間とかは、決まったらメールするね」
「はい。ビデオカメラ持っていきますから、皆さんの様子を撮らせて下さいね。帰ったらアイリさんに見せてあげたいんです」
 寿子が実家で楽しんできたと知れば、きっとアイリも喜ぶだろう。
「では、また花火大会で会いましょう」
 寿子の久しぶりの家族団らんを邪魔しないようにと、奈月はさっと身を翻して遠藤家を辞したのだった。



担当マスターより

▼担当マスター

桜月うさぎ

▼マスターコメント

ご参加ありがとうございました。

里帰りのシナリオを出すのもこれで5回目。
もう地球の関係者もすっかり顔なじみ、という方もいれば、あ、この人初めての参加だ〜どんな実家なんだろう、と楽しみな方もいて、他のシナリオの時とはまた違った気分で執筆しています。
新入生お披露目里帰りも、普段はなかなか見られない所を書くことが出来るので、この新入生ってこんな子なんだ〜と興味深いです。

目次からいつものようにジャンプ出来るようになっている(……はず)なので、自分の所、お知り合いの所、新入生の所、興味の赴くままにご覧頂下さいませ〜。

お楽しみ頂けたら幸いに存じます〜。