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リアクション
ハーフフェアリーの村の花畑に、テーブルと椅子がセットされた。
テーブルには、花柄のテーブルクロスがかけられて。
ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)と、パートナー達により、野菜と果物中心の料理とお菓子が、次々に並べられていく。
フルーツたっぷりのケーキや、果汁100%のジュースに、ミルク。
クッキーに、チョコレートやキャンディも置かれて。
テーブルは、食べ物で賑やかに明るく飾り付けられていく。
「温かい空気で、素敵なところですね……」
花を摘みながら、ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)が、アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)に微笑みかけた。
「はい。すごく安心する場所です」
アレナの手の中にも色とりどりの花がある。
2人は摘んだ花を籠に入れて、テーブルの方へと戻っていく。
これから、ここでパーティを開くのだ。
2人にとって兄のような存在である早川 呼雪(はやかわ・こゆき)と、彼のパートナーである、ハーフフェアリーのマユ・ティルエス(まゆ・てぃるえす)の誕生日を祝うための。
「主役にプレゼント見られてしまいましたね」
「はい」
くすくすっと笑い目を向けた先には、呼雪の姿がある。
準備は自分達で行うから、散歩でもしてきてと言ってあったのだが、結局呼雪は準備を手伝ってしまっている。
マユの方は、共に訪れたライナ・クラッキル(らいな・くらっきる)と共に、花畑で遊んでいたが。
ユニコルノとアレナは会話をしながら、花輪を作っていく。
アレナは呼雪とも花摘みをしたこと、ハーフフェアリー達に恋人と間違われたこと。
妹ですと説明をしたこと。
呼雪が寂しそうだったこと。そんなことをユニコルノに話した。
「今日はみんな一緒だから、寂しくない、でしょうか」
アレナが呼雪と、それから彼の恋人であるヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)を見た。
「はい、楽しいパーティになりますよ。それにしても、アレナさんが呼雪の妹なら、私のお姉さんでしょうか」
ユニコルノの言葉に、アレナは目を瞬かせて。
「家族、ですね」
少し切なげな顔で、微笑んだ。
「さて、そろそろ始めようか」
ヘルが遠くに見える、マユとライナを呼ぶ。
「それでは、皆さんも席についてくださいませ」
セツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)が、冷スープを皿に入れていく。
「アレナおねえちゃん、こっちですよ〜」
ヴァーナーがアレナの手を引っ張って、自分の隣に座らせた。
アレナはふとした表示に、暗い顔をすることがある。
悩みがあることはわかるけれど、だからこそ。一緒に楽しい時間を過ごして欲しくて。
「アレナおねえちゃんは何が好きですか? 村の人たちがおいしいものたくさん用意してくれたですよ!」
「はい。楽しい気持ちになるお料理がいっぱいです」
アレナはヴァーナーの隣に腰かけて笑みを浮かべる。
「お祝い、一緒にしてくれるそうです」
「プレゼントも、もってきてくれたの!」
マユとライナが、ハーフフェアリーの子供達を連れて戻ってくる。
花畑で歌を歌っていたら、同じ年頃の子供達が近づいてきたのだという。
「どうぞどうぞ〜。料理もお菓子も沢山あるからね」
ヘルが喜んで子供達を迎え入れて、にぎやかにパーティは始まった。
「歌うですよ〜」
全員揃ったところで、ヴァーナーは、ディヴァルディーニを取り出して演奏を始める。
まずは、皆が知っている誕生日の歌を奏でた。
「ヴァーナーに、合わせればいいかしら?」
セントバーナード『バフバフ』の背中の上で、クレシダ・ビトツェフ(くれしだ・びとつぇふ)が、タイコを叩いていく。
「おめでと〜おめでとう♪」
ハーフフェアリーの、サリス・ペラレア(さりす・ぺられあ)と、ライナ。そしてアレナとヘル、セツカも。それから集まった子供達も歌を歌っていく。
呼雪は穏やかな顔で皆の歌を聞いており、その隣でマユは照れていた。
「お誕生日おめでとう!」
「おめでとうございます」
歌が終わると皆が拍手をして、ユニコルノとアレナが、花の首飾りを2人にかけた。
「おめでとう〜」
クレシダも良く分からないまま、おすまし顔で拍手。
「ありがとう」
「ありがとう、です」
マユはまっかっかになってしまった。
そんな彼はとても可愛らしく、より周囲に笑顔の花が咲いていく。
「マユちゃん、おめでとう! これあたし達からのプレゼント♪」
サリスがマユにラッピングされた袋を渡した。
「あ、ありがとう、サリスちゃん」
お礼を言って受け取って、マユは中を見てみた。
……中に入っていたのは、大人しい雰囲気ながら、清楚で綺麗なコスチュームだった。
「パーティとかに着る服ですね。きれい、です。ありがとうございます」
マユは頬を赤く染めたまま、ヴァーナー、セツカ、クレシダにお礼を言った。
「おめでとう。これも食べるかしら。村のハチミツを使って焼いたそうよ」
クレシダは良く分かってないままだが、マユ達が主役らしいということは分かっていて。
クッキーの皿をとって、マユへと差し出した。
「はい、食べます」
マユは一枚だけ手に取って、微笑んだ。
「呼雪おにいちゃんには、こっちですよ。どうぞです〜」
ヴァーナーから呼雪に贈られたのは、アニバーサリーワイン。
「みんなで決めたんです。ボクは味見してないんですけど、美味しいそうですよ!」
そのワインには、呼雪や皆で撮った写真がラベルの部分に張られていた。
「みんなとの思い出を思い出しながら飲んでみて下さいです♪」
ヴァーナーはワインを渡すと呼雪にぎゅっと抱き着いた。
「呼雪おにいちゃん、おめでとうです〜」
「ありがとう。大切にいただくよ」
呼雪はワインを手に皆に礼を言い。それから視線を落として、ヴァーナーの頭を撫でた。
「おめでとう!」
「おめでとね」
ハーフフェアリーの子供達も、家から持ってきたと思われる小さなお菓子や、摘んだばかりの花を、呼雪とマユの前に置いていく。
「ありがとう」
「あ、ありがと……っ」
呼雪とマユは一人一人に礼を言い、笑みを向けた。
「ケーキは等分にしますわよ。人数は……」
セツカは人数を数えて、ケーキを切り分けていく。
「まずは主役から。どうぞ〜」
セツカが切り分けたケーキを、ヘルが皿に乗せて呼雪、マユへと渡し。
それから、皆へも配っていく。
「おめでとー」
最後にヘルは自分の分を持って、呼雪の隣に腰かけた。
そして小さな声で彼に言う。
「ねね、後で前に言ってた洞窟行こうよ」
「そうだな、後で行こう」
呼雪の答えに満足げに頷いて、ヘルはご機嫌でパクリとケーキを一切れ、口に入れた。
「お茶をどうぞ」
ユニコルノは皆のグラスや、カップにお茶を注いで回っていた。
それが終わった後に、集まった女の子達に、作っておいた花飾りをつけてあげる。
アレナやヴァーナー、クレシダ、サリス。給仕をしているセツカにも。
「わーい、おめでとー、ありがとー」
花をつけてもらったハーフフェアリーの子供達は、喜びを表すかのように、ふわふわ空を飛び回る。
「僕にもつけてー」
全員に着け終えたと思ったユニコルノに寄ってきたのはヘルだった。
ちょっとため息をつきながらも「仕方ないですね」と、ユニコルノはヘルにも花をつけてあげた。
「わーい」
子供達の真似をして声を上げた後。
「みんな可愛いー」
と、ぎゅっと、ヘルは皆を抱きしめていった。
「…………」
ヴァーナーが呼雪に抱き着いたり、ヘルが女の子や呼雪に抱き着いたりしている様子を、アレナはお菓子をつまみながら、少し不思議そうに見ている。
歌って、笑って。
美味しい料理と、お菓子を食べて。
賑やかに楽しい時間を過ごした。
村の子供達に混ざって、マユ、サリス、ライナはとても楽しそうに笑っていた。
そんな子供達の様子に、呼雪はそっと微笑を浮かべた。
(不思議な気分だ。でも、悪くはない。マユも喜んでいるし、皆楽しそうだし……)
こんな風に、気の置けない人達と穏やかに楽しく過ごせる時間を、呼雪はとても大切に思った。
夕方になり、そろそろ子供達を帰した方がいいだろうという話になった時。
呼雪が企画をしてくれたヴァーナーにまず感謝の言葉を述べて。
それから、集まってくれた皆にも、例を言う。
「マユ、あの歌を」
「は、はいっ」
緊張しながら、マユはリュートを取り出して弾き始めた。
呼雪に教えてもらった曲――『愛の歌』を。
感謝を込めて、呼雪はマユの演奏に合わせて、歌い始める。
ハーフフェアリーの子供達と、ライナ、サリスも一緒になって歌いだす。
おすまし顔のクレシダも、身体を揺らして、自然にリズムをとっている。
ヴァーナーはディヴァルディーニを控え目に弾いて、マユの演奏と皆の歌声を引き立てていく。
アレナは微笑みながら聞いていた。
「皆楽しいって、いいことです。おめでとうと、ありがとうの気持ちがたくさん、です」
オレンジ色に染まる村に、曇りのない明るい歌が響き渡った。
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